第311話 4日目終了

 無事採取を終えて進行を開始してしばらくした時に、植物系の魔物のエントの亜種であろう魔物が何匹かあらわれたのだ。この森の木がかなり大きいため、周りの木に擬態しきれない残念な感じなのだけど……


 見た目は背丈が樹海にいるエントより三割ほど大きいものなので、始めは歳を取ったりLvの高い魔物だったりと思っていたのだが、実をつけており実を投げて攻撃したり、木に登って有利な位置を確保しようとしたりする、珍しいタイプのエントだったのだ。


 一匹目を倒した際に違和感を覚えた。二匹目を倒した際にその違和感の正体が判明した。エントがとばしてきた実が消えないのだ。


 魔物から発生した物質は基本的にその魔物を倒すと消えるのだが、エントの投げてきた実は消えないという事だ。味は分からないがエントが投げてきた実はいいにおいがするのだ。おそらく食べても問題はないだろう、味はわからないけどな!


 という事は不味くても品種改良することが可能なら、美味しい食べ物を生産することが可能になるだろう。魔物由来の食べ物は基本的に美味いのだ。なら配下に置いてみるのも悪くないよね!


 妻たちに事情を説明して、ユニークスキルの隷属魔法を発動する。レベル差があるので問題なく魔法が成功する。この周辺にいたエント亜種は全部隷属化している。


 合計すると九匹だった。でもこのままここに放置しておくと、他の魔物に倒される可能性があるので、DPでこいつらの入れるダンジョンを作成する。


 次にドリアードに連絡を取って、今からキャスリングでエント亜種をダンジョン農園の横に、送り出すので帰るまで様子を見てほしい事を伝えておく。もし意思疎通とかが可能なのであれば、先輩風を吹かせて指導してもOKという事を伝えておいた。


 送り出した後に残っていた実を回収して食してみた。極上の美味さとは言えないがそれでもかなりうまい、と思えるほどに上質な物ばかりだった。ただ一つだけくそ外れな苦くて渋いだけの実もあった。


 調理したら味が変わったりするのかな? そこらへんはシルキーたちに任せて研究してもらうか。


 盛大な寄り道もしたためか今日進めた距離は、およそ一日目と二日目の平均値の六割ほどだった。本当はもう少し進む予定だったけど、美味い食べ物も採取できたので気にする必要もないな。


 日が落ちて来てからおよそ一時間。なんか設営する動きに無駄がなくなって、ただでさえ早いと思っていた柵の設置等がさらに早くなっていたのだ。


 今日はエント亜種産の美味しい巨大な果物とカカオなどが手に入ったので、俺が厨房に立って手作りのパフェを作る事にした。


 美味しいと思うものをドンドン積み重ねてくだけの単純なものなので、パフェマニアからしたら冒涜かもしれないが、美味しければ正義なのでとりあえず作ってみる。


 使う容器は……円錐状で上の口がウェーブ上になっている物をチョイスした。


 一番下の層にコーンフレーク、二層目にダンジョン産の濃厚なミルクとクインハニービーから献上されたハチミツ……毎回こういう風に言うのはめんどいので、ハチミツに名前を付けてしまおう。女王蜂の献上するハチミツだから、王蜜でいっか。それらを使かったバニラアイス。


 三層目にはエント亜種からとれた、ベリー系の実を小さめに切ったものを入れて、四層目にコーンフレークを乗せ、その上の五層目にバニラアイスを乗せる。


 六層目はこれまたエント亜種からとれた栗っぽい物で、モンブランに使う栗の餡を作って絞り機で絞って綺麗に配置する。


 七層目はほとんど甘くない生クリームをソフトクリームみたいに配置して、その周りに森でとれたカカオを使って作ったチョコレートを、お菓子のピ〇ラをイメージしたクレープクッキーを焼いてそこに数本さして、その間にバナナに似た味と食感の実を切って配置していく。


 見た目は結構ゴージャスでかなりのボリュームだけど試食してみる事にしたが、一人で食べてしまうとみんなと一緒に食べれなくなるので、ハクを呼んで一緒に食べさせることにした。といっても俺は味見程度なので、層になってる部分を崩して食べてみたりバランスがおかしくないか確認するだけだ。


 残りは全部ハクのお腹の中に納まった。こいつが普通に食べるってことは不味くないってことだから、みんなに出しても問題ないな。なんか毒見させているみたいでごめんよ、ハク。今度なんかうまい肉食べさせてやるからな!


 食事も終わると妻たちがそわそわし始めた。俺がパフェを作っているのを知っていたので、食事をいつもより少し押さえて食べていたようだ。そしてまだかまだかと俺を急かす空気が伝わってくる。女の子って甘い物には目が無いよね!


「じゃぁみんなお待ちかねの、今日とれた果物っぽい実や巨大カカオを使ったパフェを出すよ。慌てないでもみんなの分はあるからね! ってそこ! メルフィとサーシャ、フライングして食べようとしないの! すぐ食べれるんだから。みんなにいきわたったね、じゃあ食べよっか。いただきまーす」


 俺の挨拶に続いてみんなが『いただきまーす』と同じ口調で言ってから、無言になってパフェを楽しんでいる。みんなが美味しそうに食べてくれてよかった。


 食事の後はみんなでお話ししながら食休みをして、時間を見計らってお風呂に入る事になった。


 冒険者の特に女の子にとっては羨ましい環境だろう、中には気にならない女の子もいるがそれはマイノリティーだ。水浴びもろくにできない旅先で毎日お風呂に入る事ができるのだ、その人たちが見たら信じられない状況だろう。


 そんなことを知ってか知らずか、俺はのんびりと湯船につかっている。個人的にはサウナもあると嬉しいんだけどなと思いながらも、旅の途中で普通はそんな贅沢できないよな? 等とやはりずれた感想を漏らしていた。

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