第293話 兇刃の矢
ガヤガヤと言い合う会議の声をBGMに聞いていたら、眠くなってきたのでウトウトしてると意識が飛んでいた。
どのくらいの時間が経ったか分からないが、体を揺さぶられる感覚で目が覚めた。
「ご主人様、目が覚めましたか? 話し合いの結果を簡単に報告しようと思います。王都に向ける戦力は、ご主人様を含めた私たちと従魔たち全員です。王国内での行動ですが、初めのうちは地下通路を通っていくつかの街の貴族を襲撃して情報を奪います。
いくつか情報を奪って持っている情報との差異を埋めてから、今度は姿を現して一気に馬車で王都まで駆け抜けて国王を捕らえてお灸をすえてから、邪魔になりそうな貴族を排除する予定です」
なるほどそういう事になったのか。どういう理由で王都に行く際に姿を現して進んでいくかはよくわからないが、ここにいるメンバーで決めたのだ何か理由があるのだろう。
話し合いが終わってからすぐに起こされたようで、俺を起こしに来たピーチ以外は準備に走っているようだ。明日の朝には出発できるようにとの事だ。
準備に走っている妻たちのために俺はシルキーの所に行って、今日はみんなの好きなものを全部用意してもらう事にした。こっそりと俺の好きな鳥料理も依頼しておいたのは愛嬌という事で見逃してもらった。ちなみにスカーレットがチョイスしてくれた鳥料理は、チキン南蛮野菜マシマシのタルタルソース添えだ。
食事の時間になると全員が集まってきた。席について食事が運ばれてくると、一人ひとりのメニューが違うことに気付き、それぞれが自分の好きな食べ物であることに気付くとみんなが喜びだした。
うむ、みんなが喜んでくれて何よりだ。俺もチキン南蛮が出てきているので嬉しい。好物の一品以外はきちんと栄養バランスの取れた物が準備されている。さすがシルキーである。こんなところにまで無駄のない完璧な仕事だ。
食事が終わってお茶を楽しんでいると、ピーチが決まった事を再度みんなに伝えている。明日に備えて早めにお風呂に入ってみんなで一緒に寝る事になった。あれ? 俺何も聞いてないけど一緒に寝る事になったのかな? 別に嫌じゃない、むしろ嬉しいんだけど!
一つのベッドに三十人近く寝るから寝返りすると誰かにぶつかっちゃうし、みんなで寝ると基本的に誰かが腕枕で寝るから寝返りがうてなくなることになるだよね。特に年少組に抱き着かれて寝られると寝汗がすごくなるんだよな。
みんな体温が高いってわけじゃないんだけど、人が布団みたいに保温するから仕方がないんだけどね。
のんびりお風呂やサウナに入って部屋に戻ったら、妻たちは全員もう寝ていた。そこまで長い時間入ってたわけじゃないのになんでだろ? 疲れてたのかな?
ベッドの脇では俺とミリーの従魔たちがおしくらまんじゅうをして寝ていた。四匹の狼と四匹の狐にニコがお互いを枕にしながら寝ていた。なんか猫みたいな寝方だな。その近くでスライムたちがくっついて寝ていると思う。
次の日の朝早くに俺は起こされて眠気眼のまま馬車に運ばれていた。ベッドの中にエアーマットを引いてあり俺が寝れるようになっていて、そこに寝かされてまた眠りに落ちていた。
目が覚めて馬車の外に出ると知らない人物がそこピクピクして白目をむいて横になっていた。お前誰だ?
「ご主人様、おはようございます。捕らえた貴族たちから情報を聞き出していました。四大精霊様とツィード君、シルクちゃんが協力してくれたのでほぼ情報を聞き出しました。
それにしてもシルクちゃんの拷問はえげつなかったです。光精霊って拷問みたいなことは苦手かと思ってましたが、おそらく人間に対しては闇精霊以上の適性がありますね」
今回、精霊たちも参加してたんだな。知らなかったよ。それより貴族たちっていう事はこいつ以外にも情報を聞き出して奴がいるんだよな?
「なんとなく状況は分かった。他に情報を引き出した奴らはどこにいるんだ?」
「えっ? それは、他の街に放置してきましたが、ダメでしたか?」
「ん? どういうことだ?」
「えっと、この街が三つ目の襲撃場所なので、他に情報を聞き出した貴族はその街に捨てて来ていました。もし必要であれば今から戻りますが」
「三つ目なのか、何時間寝てたんだ?」
「ちなみに今日は出発してからニ十七時間程経っています。何かの御病気かと思ったのですが、私やキリエ、ネルの診察では特に体に異常はなく本当に眠っているだけでした。
メイ様やアクア様、シルクちゃんにも見てもらいましたがやっぱり体に異常がなく寝ているだけど言う事だったので、寝ている間に街を三つほど攻めています」
お、そういう事か。それにしてもなんでそんなに寝てたのやら? まぁよくわからない事は考えてもしょうがないな。とりあえず情報を聞き出したのであれば新しい情報があるかもな。
「聞き出した情報で新しい物はあったか?」
「大体は元々知っていた情報でしたが、新しい物としては勇者が無理やり協力されていたわけでは無くて、嬉々として協力していたようです。ご主人様にわかりやすい言葉ですとマッドサイエンティスト? みたいな感じのご主人様と同年代と思われる黒目黒髪の勇者との事です」
あ~あ、嫌な奴の事思い出しちまったな。同年代のマッドサイエンティストっていうと
あいつわけわかんねえけど、なんか対抗意識燃やされてめんどくさい事に巻き込まれたんだよな。でも、あいつなら科学の知識と魔法の力で何か毒作っても不思議じゃねえよな。もしかして本当にあいつが来てんのか?
「とりあえず国王に協力したと思われる貴族もあらかた聞き出しているので、最後に国王を魅了して聞けば問題ないと思います。なので今日はこのまま王都へ走って行こうと思いますがよろしいですか?」
「そだね、問題ないと思うよ。それでどれくらいかかる予定かな?」
「四日後の昼前に王都に到着して攻めようかと考えています」
「昼間ね。、明るい時間に攻め込むんだね。そういえば王都の戦力の把握はできてるのか?」
「そこは何の問題もありません。ただいま王都にいるSランク以上の冒険者は三人でフェンリル討伐の際のあの人たちですね。レベルも上がっていないのでシュリ以外でも一対一で五分の戦闘ができると思われます。三人で行動させれば十中八九負ける事はありません。
そして一番問題となるのが、王都の騎士団長と副団長ニ人の三人でしょう。一番強い騎士団長はシュリに任せて、Sランク相当の副団長には三人ずつで当たらせるつもりです。
遊撃にご主人様の従魔のニコとハク以外を使わせてもらう予定です。ご主人様の守護は、ニコとハク、カエデさんにレイリーさん、ミリーさんと従魔たち、リンドさんがおこないます」
そういう風に決まっているのか。特に問題もないしいいよな。
何事もなく四日後に王都に到着した。街に入る際はジャルジャンで作った商人ギルドのカードを使って中に入ったため、指名手配されていた人間だとはすぐには分からなかっただろう。
ただ三十分もしないうちに誰かが気付くだろうと考えている。男が俺とレイリーだけで他は女と従魔だからどこかでバレるよな。
さっさと貴族街の門を突っ切ってしまおう。門で止められるのは分かっているので、門を突破するためにシュリが準備している。
貴族街の門にいる門番をスルーして一気に突っ込んでいく。門の中に入って全員が馬車を降りて収納する。俺は馬車を引いていたウォーホースに案内されるように進んでいく。嫁たちは三人一
組になって戦闘態勢に入っていた。
トスッ
ん? 首に何かが……あれ? 息ができない……何かが首に刺さってる? 苦しい……
息ができない苦しさを味わいながらそんなことを考えていると意識が薄れていった。
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