第257話 亜人たちの神秘

 ダンジョンを攻略して早二週間。あのダンジョンは、俺の手によって魔改造された。聖国の騎士や神官を排除するために、五層を一組としてその範囲を動き回るスイーパー部隊を設立した。編成はシャドーウルフ五匹を一チームとして動き回るようにした。


 万が一に備えて、Lvは二〇〇まであげている。他にも聖国の騎士や神官では無い者を襲わないために、真実の目と同じ効果のあるスキルの鑑定をチームリーダーに覚えさせている。怪我をしてしまった場合のために、全員に回復魔法のスキルまで覚えさせる徹底ぶりだ。


 俺は、はじめ使い捨てでもいいから、一〇〇位のシャドーウルフでいいかなと思っていたのだが、三幼女に猛烈に反対されたのだ。


 終いには泣き出されてしまったので、過保護ではあるがここまでのレベルとスキルを準備している。シャドーウルフという事はクロの兄弟になるので、召喚した時には三幼女が飛びついて可愛がっていた。


 そのまま全員のブラッシングまで始めてしまったのだ。その流れで、あのダンジョンでブラッシングしてくれる人がいないとか、お風呂に入れないとか言われてしまったので、元ダンジョンの外側にシャドーウルフ専用の住居ダンジョンを作成と、そこに常駐するブラウニーまでおねだりされてしまった。


 三幼女にうるうるされながらお願いされたら断れないよね。という事で専属のブラウニーを五人程召喚して、シャドーウルフの面倒を見てもらう事にした。特に回復魔法に秀でたアクアの眷属も派遣している。


 最下層にいたミノタウロスだが、驚いたことにこの種族はオスしかいないとの事だった。そして思わぬ性癖といっていいのだろうか? ゴブリンやオークと同じで人型の生物なら何でも交配する事が可能だが、ミノタウロスは動物型のメスとも交配できるらしい。


 しかも! 動物型のメスにしか発情しないそうで、人型の生物と交配する場合は、何かに強制されなければ絶対に行わないらしい。このファンタジーの世界に来て何度もイメージをぶち壊されてきたな。


 他にも驚いたことに、ゴブリンやオークと違い強引に孕ませるのではなく、メスと恋愛をしてそういった行為に及ぶそうだ。孕んで生まれてくる子供のほとんどがミノタウロスではなく、メスの種族の子供らしい。


 気付いていただけただろうか? 動物と話すことができる亜人の魔物がそこにいるわけで、牧畜に協力してもらわない手はないよな。生まれてきた子供は魔物との子供なのでその種族の中では、色々とトップクラスの子供が生まれるそうだ。肉質も牛乳も最高品質のものができるのだから恐ろしいものだ。


 ここでふと気になって生まれた子供には愛情がないのか聞いたところ、愛したメス以外興味がないと言い放ったのだ。ただ自分で生活できるようになるまでは面倒を見るけどな! みたいなことを言っていた。しかもミノタウロスは一夫多妻制だそうだ。男としての甲斐性はそこら辺の貴族より上だろう。


 それにしても俺に都合のよすぎる種族が出てきたもんだ。牧畜はいまいちうまくいってなかった感じがするからな。牛や馬、羊にヤギや鳥など基本的には全般を任せてみようと思っている。


 実験の意味合いもあるのでまずは、占拠したダンジョンの最下層を広大なサイズに改築して、そこに一〇〇頭ずつ召喚して自由に育ててもらう事にした。様子の報告はダンジョン監視員のスプリガンの皆さんにお願いしています。


 ここまで話していればわかると思うが、人型の魔物で発音器官を有している物であれば人間の言葉をしゃべることができるようだ。覚えさせたのはもちろん日本語だけどね。


 この世界で日本語を話せる人間は宝珠を使った人間か日本語を話せる異世界人くらいだろう。暗号にもなるし、何を話しているかばれないのも悪くない!


 ミノタウロス牧場はこれで問題がないとして、亜人の村をどうするか迷うところである。初めから他種族が混ざっているのは良くないとの事だったので、隔離領域を作って亜人の森や獣道の森を模して作った十キロメートル四方の範囲のダンジョンを二つ作成した。


 片方にはゴブリン、もう片方にはオークを配置してみた。キングはまだ召喚できなかったので、ジェネラルを三匹、一匹をリーダー、二匹をサブリーダーにしてノーマルを九十六匹、ノーマルの強化種を二十四匹、ジェネラルの強化種を六匹の集団を召喚する。


 ジェネラルとジェネラルの強化種であれば、強化種の方が強いのだが実は特化していない分、頭はジェネラルの方が上だったので、Lvを強制的にあげて強化種の上に立たせている。ただそんなことをしなくても、俺が召喚したから問題なく従うと言われた時は苦笑せざるおえなかった。


 自由にこの森で過ごしていいと言ったら、まず作物を育てたいので道具がほしいと言われた。お前ら雑食じゃなかったのか! って何でも食うから雑食か?


 どうも疑問に思っていたのがばれたようで、その疑問に答えてくれた。


 簡単に言えば、飢えないために狩りや採取して生活してるのがゴブリンやオークだそうだ。なので安定して生産できる農業は試してみたいとの事だ。俺が召喚する時に知識の一部が流れ込んだのが大きな原因らしい。ほかにも生産系のスキルに興味があるそうで、色々教えてもらいたいとお願いされてしまった、


 プロジェクターを準備して、オークやゴブリンに簡単に説明していく。この光景どう考えても異常としか言えないよな。真剣に聞いているオークやゴブリンに対して、一生懸命説明している俺、それを見て苦笑するみんな。ミリーに関しては正気を疑う光景のようで、理解が及ばずに気絶してしまったのだ。


説明が終わった後に、興味のある生産系スキルを三つほど覚えてもらった。あまり多いと器用貧乏っぽくなってしまうので一つにしようかとも思ったが、一つしか選べないのもかわいそうだったので、三つにしてみたのだ。めっちゃ喜んでた、ゴブリンとオークが。


 各スキルを上げれるように下級にあたる素材とモノづくりに必要となる機材を設置しておいた。足りなくなる前に無線で連絡するようにリーダーへ伝える。さすがにリーダーに名前がないのもあれだったので、ゴブリンはゴブ助、オークはオク蔵、ミノタウロスはミノタンにしておいた。


 名前といっていいのか微妙なネーミングだが、三人共神を崇めるかの如くお礼を言ってくるし、各種族がリーダーを羨ましがっていた。こんななまえでもうらやましいのか?


 俺にはそこまで名前を付ける才能がないので、リーダーに世界の名前図鑑を渡して勝手に選んでもらうか? この世界と向こうの世界の二つを渡すことにした。


 ってことで名前を付ける資格を与えたが、見た目の違いが分からないので名札を付けてもらう事にしたので安心して名付けてもらえるだろう。どういう風に成長するか見ものだな。

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