第247話 胸糞悪い

 ヒューマン種の奴隷以外で、不当に奴隷にされた者たちを隠していた街の半分七つ目に到着した。今までは大体テンプレ通りだったと思う。


 街に行って不当な奴隷がいるか確認に来たことを告げると「お前らの事など聞いていない」「そんな命令はしらない」「この街に不当な奴隷はいない」と言い切って俺たちを街の中へ入れようとしなかったり、反対に俺たちの事をとらえようとして来るものもいた。


 こっちには教皇に描かせた命令書があるので、さくっと物理的に首を飛ばして中に入っている。教皇との契約が発動していないので、絶対に命令書が届いていないという事はあり得ないため、遠慮する必要が無かった。


 領主館や大商人、奴隷商などに押し入って奴隷の有無を確認するが、口をそろえていない事を主張するのだ。そもそもそういった奴隷がいる場所を選んで入っているのだから、いない方がおかしいんだけどな。


 まぁいることなど分からないと思い、油断している者もいたが俺が見逃すわけがない! 見つけると「知らなかった」「あいつは犯罪奴隷だ」「お前は死ね」等々バカな奴らが多い。


 誰がどこまでかかわっていたかわからないので、処罰対象は不当な奴隷の主人、俺たちに襲い掛かってきたもの、奴隷の主人と一緒に経営に関わってたもの、主人の家族で十五歳以上の者はとりあえず処罰対象。


 十五歳未満でも発言や思想が危ないものは処刑して、そうでない者は奴隷落ちにしている。過剰なように思われるが、この国の人間がしたことを考えればこれでもぬるい対応だろう。解放命令が出ているのに解放しないのだからしかたがない。


 その他にも馬鹿共は多かった。隠し部屋に入れて、いない事を装った者たちは奴隷にアンケートをとって、それに沿った殺し方をした。その場合は年の若い順から処刑していったが、親を奴隷にしてその手で処刑させたのだ。


 様々な恨み言を言われた、慈悲はないのか、悪魔など、それ以外にも様々な罵声も浴びせられた。さすがに赤子まで処刑するのは心が痛かったが、今までこの国で不当に扱われてきた者たちの事を考えれば、この程度でひどいとは言っていられない。


 胸糞悪い話だが、この国のやつら、特に神官や騎士、地位的に高い者達の称号を見ればわかるが、殺人とその上位の殺人鬼、拷問とその上位の拷問王、中には強姦とその上位の強姦魔のやつもいた。しかも強姦にはカッコで年齢が表示されるのだ。


 最初に十代前半見た時はボコボコに殴り殺したが、一桁を見た時はさすがに目の前が白くなった。俺が固まっているのを見て気になったピーチが、俺と同じものを見ると表情が消え、後ろにいたシュリに声をかけるとシュリの表情もきえた。別室に引きずって行かれた。その後どうなったかは俺は知らない。


 称号もいやになる物がおおかった。強姦の一桁もあれだったが、ネクロフィリア(種族)やボーンコレクター(種族)といったものまであったのだ。


 その称号を持っている人間の家にはもちろんその対象もいた。もう人間の欲の深さにあきれるしかなかった。コレクターの気持ちはわかるが、その対象が非人道的な物であると話は別だよな。


 心が荒んでくよな。娘たちは何も思わないわけでは無いだろうけど、この世界で生まれたためかやっぱり考え方が違うのだろう。特にピーチには気にすることはありませんよ、と何度も言われてしまった。多少この世界に染まり、人の死にあまり感じないとはいえこの辺は日本人なのだろうか?


 まぁ大切なものを守るために殺すことには何も思わなくなったが、こういった処刑はちがうのだろう。しかも赤子まで処刑させてるからな。罪はないけど、そんなことをいえば、あのクソバンパイアのせいで死んでいった、ヒューマン種以外の人間が報われない。


 といっても、俺も快楽的に殺すためにこう言ったことをしているわけでは無い。一種の見せしめだ。もしもこの先不当な奴隷を取得すれば、今回と同じ目にあう事を暗に教えているのだ。


 半分過ぎた頃には他の街にも伝わったらしく、俺たちが到着する前に何とか送り出そうとして、物資もなく街の外に放り出した街もあった。


 さすがに物資不足や護衛無しで武器防具もなく送り出した街の領主は、もちろん見せしめに晒し首の上領主一家は奴隷落ち、商家の場合も同じく主はさらし首で一家は奴隷落ちにした。


 物資や護衛をあわててつけて送り出したところは、全員奴隷落ちにしている。送り出したじゃないかとか言っていたが、そもそも俺が暴れだして慌てて送り出したのは認めるわけがない。教皇が約束を守っている以上、すでに出発していないといけないのだ。


 ただ一つの都市だけ最悪の選択をしたところがあった。殺してしまえば問題ないのでは? といった思いで二五〇人程いたヒューマン種以外の奴隷を皆殺しにした所があったのだ。さすがにこの選択をする都市があると思っていなかったのでどう対応するか悩んだ。


 同じ数だけ処刑するにしても無作為に選んで二五〇人殺すわけには行かなかったので、一ヶ月以内に奴隷を手放していなかった者たちの家族で足りなかった分は街の文官や武官、さらに足りなかった分を騎士団の上から選んで処刑した。


 本当なら倍の数は処刑しておきたかったが、二万人程の街であったためそうすると騎士団を全員処刑しても足りない上に、衛兵の半分近くを処刑することになってしまうためやめたのだ。


 十三都市を回って救い出せた獣人の数は三〇〇〇人程だった。一つの都市に二三〇人近くもいたのか。全員ミューズに送って、そこからヴローツマインから援軍に来ている人たちに新しい街へ連れて行ってもらった。新しい街に来れた人間は全部で八〇〇〇人程になったらしい。


 あれ……ディストピアより多くなってね? あの街は移住が難しいから仕方がないだろうが、あっさりと人口が抜かれたか。ディストピアに比べればライフラインが天地ほどの差があるのだ、住みやすさで言えば圧倒的に俺の街が上だ。


 って何に張り合ってるんだか。あの街は今からが大変なんだから頑張ってほしいものだ。せっかくそれなりに苦労して作って、ヴローツマインにも協力を取り付けたんだからな。


 さて、胸糞悪いのを忘れるために自分達の街へ帰ろう。帰ったら一週間は遊び倒してやる! それにミリーやリンドに甘えさせてもらおうかな。一人っ子だったせいかお姉さん的なミリーやリンドは年長組とは違った温もりがあるんだよな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る