第246話 新生魚人族長達

 魚人の若者たちをあしらった次の日の昼過ぎ。若者と言っているがシュウより年上の魚人もいたけどね。


「お~やっと見つけましたよ、シュウ様。昨日の一件を受けて提案したいことがありましたので探してました」


「やーグリエル、何の用だい?」


 のんびりとニコを枕にシュウの家の庭にある芝生の上で横になっていた俺は返事をする。


「魚人たちに関してなのですが、族長とその周囲の者たちを、ガルド様の戦闘訓練を受けさせてから、パワーレベリングをしてはどうでしょうか?」


 なんかMMORPGの用語が出てきた。何でグリエルはそんな用語を知っているのだろう? あるとすれば、一部の人間が利用できる漫画喫茶にある漫画や小説を読んだか、読んだ誰かからその概念を聞いたってところだろうか?


 それに似た接待的な狩りの概念はあったかもしれないが、さすがにパワーレベリングなんていう言葉は無かっただろう。世知辛く感じてしまうのは何故だろう?


「グリエルが何故その言葉を知っているか気になるところではあるが、魚人の族長たちをパワーレベリングしてどうするんだ?」


「いえ、シュウ様が作ってくれた漫画喫茶というところですか? あそこはいいですね。日本語の宝珠の使用を許された人しか利用できないとはいえ、読むことがここまで楽しいものとは知りませんでしたよ」


 満面の笑みでそう答えてきた。初期の段階で俺の奴隷になったメンバーやドワーフたち等ごく一部の人しか使えない施設があるのだ。俺の趣味部屋の劣化版ではあるが、この世界の人からすると宝の宝庫のようなところなのだろう。


「それは置いておいて、魚人の件ですが族長はこちら側なんですよね?でしたら、強制的に強くしてまとめてもらった方がトラブルが減るかと思いまして。それにガルド様の戦闘訓練に奥方も参加してもらえば上下関係も刷り込めるでしょう」


 深層心理に上下関係を刷り込むようだ。


「誰を参加させるのがいいかな?」


「そうですね~シュリさん、シェリルさん、ネルさんあたりでどうでしょうか? シュリさんの身体能力は言わないでもわかると思いますが、幼い二人の能力を見れば劣等感を持つのではないでしょうか?」


「それなら、イリアも一緒にしてあげないとすねちゃうから、その四人にお願いしてみよっか」


 グリエルの提案を聞いて四人にお願いしてみると、快く引き受けてくれた。そのまま魚人の族長に会いに行き昨日の若者たちの様子を聞いてみると、一応は反省したようだがグチグチと文句を言っていたようだ。


 グリエルの提案はちょうどよかったかもしれないな。自分たちでおさめてもらうように強くなってもらう事を提案する。もちろん四人の話は軽く濁してだが。


 最後にガルドにお願いしに行くと、どの位で使えるようになればいいのか聞かれたので、二週間でとお願いしたら、すごいいい笑顔で了解してくれた。


 どのレベルまで鍛えるかわからないが、二週間もしないうちに教皇と約束した一ヶ月が経つので聖国へ行って不当に奴隷に落とされたヒューマン種以外を解放しないとな。


 俺は魚人達が訓練している間、暇だったので新しいダンジョンの設計をしていた。特に深い意味が無かったのだが、設計図を作るだけならただなので色々試してみようと思い引きこもったのだ。


 一人でやるのも面白くないので、手が空いているメンバーを巻き込んでダンジョン設計大会を開催した。別に本当に作るわけでは無いので、作成した設計図をみんなで検証して点数をつけあう事になった。


 三幼女はそれを聞くと不満をブーブー言っていたけど、きちんと役目を果たしたらしばらく寝る時に三人で、独占できる権利を他の娘たちからもらえてニコニコになっていた。シュリは今度独り占めできる権利を勝ち取っていた。激しい夜になりそうだ。


 二週間後、魚人の族長たちは、予想以上の変貌を遂げていた。レベルが三〇〇になっておりスキルも充実していた。それ以外に特にこれといったものは無かったが、陸上でもかなりの戦闘ができるようになっていた。陸上が得意ではないとはいえ、それでも五人がかりで、誰一人倒すことはできなかったようだ。


 それにしても二週間でレベル三〇〇ってどうやったんだろうな? ただ魔物を倒すだけでここまでレベルがあげれるとは思わないので、魔物のLvをDPであげてそれを倒させたか、DPでレベルを上げたかだろうか?


 どっちにしてもスキルに振り回されている感じもないし、ステータスに振り回されている様子も見られない。ガルドおそるべし。


 これで魚人たちを抑えるの役目は族長が果たしてくれるだろう。それでもどうにもならなくなったら本当に死んでもらうしかなくなるかな?


 さて、教皇は約束を守っているようで、ペナルティーが発生している様子はないが、全員が指示に従っているわけでは無いようだ。特に商人の家らしき場所や地方の領主の家には、大量のヒューマン種以外の奴隷がいるようだ。教皇からの忠告を聞いていない輩だろうな。


 聖都と周辺の街でヒューマン種以外の犯罪奴隷では無い者は、全員ミューズに送られてきたようで、そのままミューズから新しい街に向かったようだ。既に五〇〇〇人近い者達が街に到着しているようで、ヴローツマインのメンバーは泣いていた。頑張れ!


「さて、教皇との約束は守られているようだが、教皇からの忠告は守られていないようなので、面倒だけど不当な奴隷たちを解放しに行こう。おそらく戦闘になるけど、俺たちの敵ではないだろう。


 ただ、俺たちだけで行っても面倒な事が多いと思うので、今回はディストピアの獣人にも協力してもらえるように話を通しているから、一緒に行動する事になります。人数的には一〇〇人程で馬車は二十台使う予定です。


 各街では俺たちが中心に戦闘していくけど、新しい街に連れてってもらうのは、獣人の方たちにお願いします。まぁ未だに不当に奴隷にされた者達を解放していない奴等はこの国の膿なので処理しに行こう」


 獣人たちは仲間を救うためならと、喜んで協力してくれるようなので助かった。とりあえず糞共の処理へ向かうとするか。

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