第242話 戦争が終わった
俺に核心をつかれた兵士たちは黙ってしまい、教皇も何も言わずに沈黙を保っていた。
「まぁ隠したいことがあるから、真実の瞳を使わないんだろう。それに神殿騎士とか神官たちにも真実の瞳を使わせないんだろ? それは世界の法則にのっとれば、バリス教は犯罪の称号の温床なんだから使わせられるわけないよな。
まぁ俺に神託をした神アリスは、バリスなんていう神はいないとの事だしな。神を騙るからきついお仕置きをするように神託をもらって、天罰をくだす力だって授かったんだしな。ちなみに俺らには犯罪の称号はないぞ」
「ふざけるな! 我らが神を侮辱するな!」
「侮辱じゃない。事実を述べているだけだ。実際に俺の街にちょっかいをかけてきた神官や騎士たちは、犯罪の称号持ちが九割以上だったぞ。お前らは聖国から出て他の国に行けば、犯罪者の集団だからな。真実を受け入れられないなら、お前らはそこで死んでおけ」
綻びができても頑ななまでにバリス教の教えを信じている者も多い。ここまで追い詰められても、綻びが出ても信仰を捨てられないのか。
俺は宗教などは一切信じていないが信仰する心までは否定するつもりはない。信じる事によって救われたという事も中にはあるだろう。だけど善意でも人に押し売りするのはいただけない。自分だけで完結していろと言いたい。
ただこんな状況でも信仰を続けられるってのは本当に俺には理解できないな。ここまで事実を突きつけても信仰を捨てられないんだ、もう少しかと思っていたけどこれ以上はどうにもならないだろう。そのまま死んでもらおう。だけど万が一にも教皇が死んでしまうのは困るので、連れ出すか。
「みんな、教皇が万が一にも死んだら困るから、今からもっかい拉致しにいくよ。可能だったら直属兵も拉致してね」
飛び降りるところに地面を作り穴の中に飛び降りる。って普通に五十メートル近く飛び降りたけど、元の世界では五メートルの高さでも足がいかれる可能性があるのに、今普通に飛び降りたな。俺もこの世界に染まってきたな。どんなに力が上がってもさすがに五十メートルを跳んで超える事はできないんだけどな。
飛び降りてきた俺たちを警戒して、負傷していない兵士たちと直属兵が武器を構えていた。先制をとろうとしていたバリス側は弓や魔法で攻撃を仕掛けようとしていた。が、既にうちの魔法組が魔法を構築し終えていた。
水魔法を使って広範囲にある海水を散弾のごとく次々と打ち出していた。殺傷力は低いが、衝撃が異様に高く相手を押し返す力が強いので相手を瞬間的にだが無力化することができる。
相手がひるんだ瞬間をついて、タンク組が距離を詰めて教皇と直属兵三人を引きずり出した。たたらを踏んでいる四人を追撃のシールドバッシュで、俺たちの方へ飛ばしてくる。
教皇はバンパイアなので魔法の拘束系がききにくく、アンデッドなので火や光の魔法以外の効果が著しくききが悪い。おまけにアンデッドはとにかくタフなので、物理的な拘束をサクッとして、直属兵は囲まれて娘たちにボコボコに殴られて意識喪失する。
俺たちがここから出るのは簡単だ。土魔法で自分たちの足元の地面を盛り上げて、五十メートルを上っていく。簡単に行っているように見えるが、娘たちの魔力とスキルLvがあってはじめてできる、力技なんだけどね。直属兵の誰かが魔法使いであれば、教皇を連れ出すことができたかもしれないけどな。
起きた教皇と直属兵に尋問したが、口を割ることはなかった。なのでチャームをかけて情報を収集しようとしたが、どういうわけか直属兵には、記憶と呼べるものも情報と呼べるものも無かった。
あったのは、バリス教の教えに反する行為の処罰と特定人物の護衛という情報だけだった。どうやって調整された兵士かわからないが、使い勝手のいい兵士だろう。襲撃をかけた直属兵とは根本的に何かが違うな。
教皇にはチャームがきかないので情報収集は無理だった。なので情報収集はやめて、お仕置きを開始した。
「アンデッドだから痛覚自体がないんだよな。だから拷問は意味をなさないし、食料が無くても死にはしないんだよな。それに始祖バンパイアのせいか、アンデッドの弱点の太陽も意味をなさないみたいなんだよな」
俺がブツブツ言っていると教皇はニヤニヤしてこっちを見ていた。おそらく自分の特性をフルに生かして今まで生きてきたのだろう。忌々しい事だけど残念ながら俺には通じないんだよね。
俺もニヤニヤして笑い返してやる。
「といっても手がないわけじゃないんだよな。確かにアンデッドは痛覚が無いが、痛みを感じないわけじゃないって知っているか? 純粋なアンデッドとして生み出された魔物であればそんなことはないんだけどな。実は人からアンデッドになった魔物に痛みを与える方法があるんだぜ。教えてくれたのは神アリスだけどな」
これは真っ赤な嘘である。あのチビ神がそんなことを教えてくれるわけがない。なぜこんなことを知っているかといえば、実はアンデッドとして生み出された魔物でも、痛覚らしいものはあり回復薬のポーションを使うと非常に苦しむのだ。
もともと動きが遅くタフなアンデッドを倒すためには、装備さえ整えれば例外的な奴以外は問題なく倒せるのだ。そんなアンデッドに対して高価な回復薬を使うものなど、この世にはいなかったので知られていなかっただけなのだ。
俺はDPで生み出せるし、娘たちと生産系のスキルを上げるために回復薬もたくさん作っているのだ。元の世界のゲームの知識を使って、アンデッドに効果があるのか試した時に判明した事実なんだけどな。
という事でマッドな表情を作って回復薬を取り出す。今回使うのは普通のポーションとマナポーションだ。品質的に使う予定もなく、売りにも出せない品質の悪いものだ。マナポーションを出した理由は、これでもアンデッドが苦しんだ実績があるからだ。
「では、初めにこのポーションをかけてみようか」
見た目は人間と全く変わらないが、ポーションをふりかけるとその顔が苦痛にゆがんだ。
「うがぁぁっ!」
相当痛いのだろう、最低ランクのポーションでこの痛がりようだ。A級のポーションを使えばどれだけ苦しむのだろうか?
ただあまり効果の高い物を使うと死ぬ可能性があるので実験はできないんだけどな。なのでしばらくポーションでいじめた後は、魔力……精神にダメージを与えるマナポーションで苦しんでもらおう。
二時間ほどポーション類でいじめていると、悲鳴すらあげなくなりアンデッドなのに廃人みたいな状態になっていた。この苦しみの中アンデッドなのに、体液という体液をまき散らしていたので非常に臭かった。なのでたびたび水につけてにおいを薄めていた。
アンデッドなのに排泄とかしてるみたいなんだよな。洗っている最中に便が浮いてきたりすることがあったから驚きだよ! アンデッドだから体液が腐ってて臭いのかと思ったのに、排泄物のニオイだったんだから嫌になっちまう。
その様子を見てたチビ神は、やはり爆笑して声を届けて来ていた。他の神たちもいいざまだ! もっとやれ! 等と後ろで騒いでいたのだ。他にもお酒に酔った親父が悪ノリするようなヤジも聞こえてきたので、かなり楽しんでいたのだろう。
「最後にいっておく、これ以上俺たちに迷惑かけるなよ! 後、お前らが亜人と呼んでいる者たちへの不当な対応はやめるように。魔石を持っていない人型の者は、精霊などの例外を除くと人なんだからな! もしこれが守られないようなら、神官・騎士たちを皆殺しに行くからな。
末端の人間がはいそうですかって受け入れられるわけがないだろう。だから俺が妥協点を示してやるから受け入れろ。これから獣人たちはミューズに連れて来い、犯罪の称号のない獣人は全員だ。
もし不当に奴隷のままにしているのを見つけたら、その都市にいる兵士や騎士を皆殺しにするからな、きちんと通達しておけよ。暇つぶしにお前らの街に遊びに行くから、手を出さないようにも徹底しておけよ! 一ヵ月で周知徹底するように」
教皇はガクガクと首を縦に振り、ツィード君に作らせた特製の契約書にサインをさせた。教皇に命令違反があれば連絡がとどく特殊な魔道具だ。さすがに他の人間にまで対応させることはできないから自分たちで街を回らないとな。
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