第235話 チビ神の恐ろしさ

 今日も監視以外することが無いので、俺は三幼女を連れて厨房に立った。


「さて今日は何作ろうかな?」


「は~い、おいしい物を作ってほしいの!」


「昨日一昨日食べたのは美味しくなかった?」


「ううん、とっても美味しかった。だからあのくらい美味しい物を作ってほしいのだ!」


「何にしようか……連続でこったものもあれだから、ワッフルを焼いてトッピングを色々と手を加えようか。チョコ、アイス、生クリーム、他には果物とジャムなんかもいいかな? ハチミツやメープルシロップもあると悪くないかもね。ワッフルは焼き立てがいいから、それ以外の準備をしよっか」


 三幼女にそう伝えると、食材を入れているスライムを呼んであさりだした。何というかこのスライムかなり便利で、体内に入れているものを表示できる様だ。ちなみに表示する能力は、ツィード君が面白半分で取り込ませたタブレットPCの効果で体の表面にマジで表示することができるようになったのだ。


 ユニークモンスターのニコから生まれた、このスライムたちの生態はよくわからんな。召喚したスライムたちはニコとは違って粘液系のグロいやつで、取り込んだものの特性を吸収することはできない。まぁ残飯処理などでは便利で使い勝手のいいやつって感じでいいだろう。


 楽しく話しながらトッピングを準備していると、甘い香りにつられて他の娘たちがわらわらと湧いてきた。これはワッフルを焼いてあげないと収拾がつかないな。


「三人には悪いけどワッフル焼かないと収拾がつかなそうだから手伝って。焼く道具は今さっき出しといたからよろしく。トッピングのアイスは前に使ったマイナス三十度の鉄板に置いて準備しておく。果物もシャリシャリだったら面白いかな? 一部の果物も鉄板で冷やしてみよっか」


 娘たちが増えてきて騒がしくなってきたが、ワッフルが焼けるにおいがしてくると静かになり目の前のワッフルを焼いている鉄板にくぎ付けになっている。一遍に四枚焼ける鉄板を十セット使っているから、一人一枚は配れる。


 続けて焼いていかないと暴動が起きるかもしれないので、一枚目を焼いたら三幼女たちも食べる方に回ってもらおう。トッピングは自分でしてもらっているわけなので、ワッフルを焼くだけなら一人で何とかなるだろう。


 三回焼けば一人枚は食べれるだろう、俺は余ったアイスとか生クリームでパフェでも作って食べよう。


 みんなでおやつを楽しんだ後に、監視に戻ることになった。結局、あの部隊以外の横暴は無かったので作戦を次の段階に移行する。といっても暫くは襲撃して物資をいただいて、足を潰すという今までと変わらない事を繰り返すだけなんだけどな。


 前回と変わらず今回も襲撃と物資への被害だが、前回襲撃した部隊は物資をもらうだけで物資だけをもらった部隊には襲撃をする予定だ。


 さすがに何度も物資を盗まれたら資金が枯渇するだろう。そうした時にどう対応するかが人としての本質を表してくれるんだよな。まぁ神たちの希望に添えるものじゃないけど、ある程度は楽しませてやれるだろう。


 特に何もなく一週間が過ぎた全部隊とりあえず二回物資を頂戴したが、初めのバカ部隊以外愚かなことをする様子はなかった。二回も余計な出費をさせられれば少しはイラ立つだろうが、もともと途中の街で補給をしながら進軍していくため、そこまで多くの物資を買い込んでいたわけでは無かった。


 思った以上には打撃を与えられていないようだ。だけど物資以上に足である馬車を壊された方が痛手の様だった。街に必ず余っている馬車があるわけでは無いし、直すのにも時間がかかる、地味だけど強力な時間稼ぎになる。時間がかかれば金もかかる、俺の目的にあってるな。


 という事で、物資の強奪は二回でやめとした。今度はこすい作戦で馬車をことごとく故障させる作戦だ。可能なら街から離れた位置で壊れるのがベストだ。荷物が大量にある状態で馬車を失う。滑稽な姿が思い浮かぶよ。荷物を苦労して運ぶのも、馬車を懸命になおす様子もどっちも悪くないな。


 作戦を変更してから三日目、部隊の半分が次の街への道の半分ほどに差し掛かっている。という事で、隠密に優れたスライムたちが、馬車を壊れやすくするために腐食したり、金目の物を食べたりしてくれていた。次の日進みだしてから数十分後に次々と馬車が行動不能になった。それを見ていたチビ神が


『あんた、面白いことするわね! 今まで神の名を好き勝手使ってきた連中が泣きべそかいてるわよ。いやー戦争と違うけどこういうのも面白いわね! あなたのことちょっと好きになれそうだわ。他の神たちからも、こんな滑稽な姿は見てて面白いみたいよ! 呼んだ私も鼻が高いわよ!』


 俺は、はじめっからお前の事評価してるだろ? 無理やり連れてきた事は許せないけどな。


『なによ! いつもツルペタとかチビとかいじめるくせに!』


 だからツルペタやチビっていうのは事実を述べているだけで、俺は大きいよりスレンダーな方が好みだって言ってるだろ。でもだからと言ってロリコンじゃないからな! お前の歳を考えると……幼女タイプのドワーフと同じで、合法ロリになるのか? もう少し身長が伸びたら考えなくもないな!


『ムキーッ! ロリじゃないわよ! 素敵なレディーじゃない! 身長が低いのは認めざるを得ないけど、私は立派なレディーなんだからね! あと、あんたの性癖はもうわかってるからいいわよ!


 娘たちの好意に気付いてたくせに、ヘタレ童貞のあんたが無理やりに欲情を押し込めて、意識にフィルターをして気のせいだと言ってたの知ってるんだからね。そしてムラムラした時は部屋でどんな痴態が行われてたかも知ってるわ! 娘たちも気付いてるだろうけど、その映像を直接頭に送り込んでもいいのよ?」


 ……マジか。さすがにあの映像を娘たちに見られるのは、俺の精神が死ぬ。立ち直れないくらいにダメージを負ってしまうからやめてくれ! 十分にお前を楽しませてやるからそれだけは勘弁してくれ……


『お前?』


 いえ、素敵なレディーのアリス様です。今回はあなたの望むような結末にしますので、どうか、どうかあの映像をみんなに見せるのはやめていただきたいです。


『ムフッ、あんたにそういわれるのも悪くないわね。少しはお返しができたみたいですっきりしたわ! でも、今回というかこれから先もだけど、私が望む事はほとんどないわよ! 初めに言ったけど、これは私たちにとっての娯楽なの、だから存分にその世界で楽しんでくれればいいわ。


 今まで観察してきて分かったけど、あんたが自由に振る舞えば振る舞うほど私たちが楽しめそうだからね。じゃぁ引き続き頑張ってね。あ、その国のトップにはきついお仕置きをしてくれると、神たちが喜ぶと思うわ』


 よかった、あの痴態を見られることが無くて助かった。それにしてもチビ神にあの痴態がみられていたとは、恥ずかしすぎるな。今は年長組やカエデ、ミリーが相手をしてくれるからそんな痴態をする必要もなくなったけどな。


 この国のトップにきついお仕置きか、殺すより苦しむ方法を考えないとな。後でみんなに意見を求めてみようか。チビ神の話はしてあるんだ、そいつからのオーダーと聞けば色々考えてくれるだろう。娘たちは本当にチビ神に感謝してるみたいだからな、俺と出会わせてくれたことに。


 そういえば神って祈りをささげられると嬉しいもんなんかね? チビ神はなんか喜んでたみたいだけど。


『嬉しいというか、力があふれる? みたいな感じね。だから私の権能で、あなたとその仲間のレベル制限解除したじゃない! あれ本来なら、神の試練っていうのを受けないといけないのよ。ある一定条件を満たすと夢の中で、神たちが思い思いに試練を課して突破できると、はれて制限解除になるのよね。


 それと純粋な祈りであればあるほど使える力が大きくなるのよ。ちなみに貴方の仲間の二十六人の女の子の祈りは、この前物資を届けた街の私に祈りをささげてくれた、約八五〇〇人の祈りと同等の価値があったわ。それはそうと、私がいなくなった瞬間にチビ神って言ってなかった?』


 ソンナコトナイデスヨー。アリスサマハ、ステキナれでぃーデス。


『めっちゃ片言になってるじゃないの!』


 すんませんでした!


 それにしてもレベル制限解除って、一定の条件があったんだな。それは教えてくれなさそうだけど、もう解除されたからどうでもいいか。

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