第231話 砲撃訓練(夜襲)

「みんな、お疲れ様。もう少ししたら砲撃訓練するから準備を始めよっか。前は砲台を水平に保つのも色々適当にやってたから、今回は土魔法で平らにしてから打ち込んでみようか。


 止まっている敵を狙うから少しずつ調整して感覚をつかんでいこう。距離と高さ、着弾点はマップ先生でわかるので、データをしっかりとるようにね。


 発射角度による飛距離とか弾道とかもできる限り情報があれば、それに越したことはないからな。一応、スプリガンのみなさんにも観測を頼んでるから、気張る必要はないけどね。じゃぁさっきと同じ三人一組で装填役、調整役、観測役にわかれて準備を始めるよ」


 砲撃場所へ向かおうとすると、アリスに呼び止められた。


「あのご主人様。先ほど、神と名乗る方から声が届いて、私に祝福を授けたって言ってきました。細かい説明を求めたらご主人様に聞けばわかると言われたので、説明してもらえますか?」


 あの駄女神め、俺に説明丸投げしやがったな!


 少し悩んでから、部屋から出て行こうとする娘たちを呼び戻して、俺がこの世界に来るきっかけとなった駄女神の話をした。


 一応他の世界から来たことを話していたとはいえ、神と名乗るやつに連れてこられたことまでは話していなかったのでかなり驚かれたが、娘たちは駄女神ことアリスに俺と出会わせてくれたことに対して感謝の祈りをささげてしまった。


『むっほー! この感情くるしゅうない! 私の事を敬おうとすらしない、どこかの誰かさんとは違うわね! この娘たち気に入ったわ! 私の力でちょちょいのちょい! これであなたたちはもっと強くなれるわよ。レベル制限の解除しておいたから、がんばってね! ついでにあなたのも解除してあげておいたから』


 むっほーってなんだよ! しかも、いきなり爆弾発言して帰っていきやがった。そういえば元シングルの三人獣娘たちに聞こうと思ってたレベルの秘密について、何かわからないうちに解決をしてしまった。


 そもそもレベル制限ってなんだよ? 何かのゲームであったような限界突破的ななにかなのか? 強くなれるのはいいのだが、その仕組みを知りたかったのにな。今度チビ神を問い詰めてみるか。


 地上に出てから砲撃位置についてもらう。今回はデータを集める予定なので距離を変えて砲撃する。具体的にはターゲットから直線距離で一〇〇メートルずつ離れて配置している。全部で一組十発で合計八十発の砲弾を撃ち込む予定だ。


 観測しながらとはいえ、十分もあれば終わる予定でいる。それを二つの部隊に向けて行うので、合計一六〇発のデータがとれる予定だ。どう逃げるかにもよるが、二部隊目は四時間後に同じ様に砲撃する予定である。


 準備が終わりいつでも発射可能だと報告が入った。


「じゃぁ、一組ずつ順々に一発打ち込んでいこう。観測班は角度と距離は正確に測るように、砲弾は榴弾と焼夷弾を渡してあるので交互に撃つようにしてくれ。じゃぁ、砲撃開始!」


 半分が撃ち終わったところで感心する事となった。四十発の内十発は確実に野営地に着弾していたのだ。


 それがすごい事なのか軍事に詳しくない俺には判らないが、それでも今日まで見た事も聞いた事も触った事もない物を使って正確に着弾させるのだから俺はすごいと思っている。風がほとんどないので、あまり影響を受けないとは言えかなりのものだろう。


 マップ先生で確認していると負傷者の数はわからないが、大体の死者の数は把握ができている。光点が消えるのでそれは把握しやすい。約五〇〇人いる部隊の内十四人が命を落とし、野営地では光点がすごい勢いで動き回っている。混乱をさせるという目標は達成できたので今はこれでいいだろう。


 場所を移動して二部隊目にも砲撃をする。八十発の予定だったが、野営地にかなりの数が入ったので四十八発にとどめている。


 二部隊目の死者は二十一人、野営地内への着弾は二十六発で半分以上が着弾していた。俺的には十分満足できる結果だ。正確に距離と高さを測ることができるので、夜間でも問題なくあてることができるのだ。


 地下通路に作った部屋に戻り休憩をとることにした。娘たちには食事の後にお風呂へ入ってもらい、睡眠をとるように促した。


 砲撃を受けた部隊はとりあえず移動はしていないようだ。夜間では移動する方法が限られるのだろう。混乱している時に移動は困難を伴うだろうし、何よりケガ人が多くて移動できないだろう。明日以降の行動が気になるところだ。


 これ以上、深夜の砲撃はしない事にした。もっと被害が少ない予定だったのでこれ以上被害を出すと、混乱を広めるよりそのまま殲滅になってしまうのでやめたのだ。


 娘たちの心境は俺には判らないが、こういう世界に住んでいると元いた地球と考え方が違うのだろう。俺だけでやるといっても、婚約したので夫を守るのは妻の務め! とまで言われてしまっているのだ。


 ちなみに十六歳になってない娘には手を出してないからな! さすがに称号にロリコンがついてるから、これで手を出したら名実共にただの変態になる。でも添い寝をする事くらいはしているぞ、俺だって毎晩いたしてるわけじゃないし、三幼女に涙目でお願いされたら普通は断れないだろ?


 本人たちの話では、一度奴隷になった際の扱いで自分たちの価値が無い物だと知ったとの事だ。そこで考えが変わり人が死ぬことに対して何も思わないわけではないが、自分が生きるためなら切り捨てる事に何も思わなくなったらしい。


 今の俺も娘たちとたいして変わりのない思考になっているんだけどな。


 俺も大切なものを守るためには、すべてを切り捨てる覚悟をしている。そのためにこの国の喧嘩もかってるんだしな。聖国の住人に罪はなくても巻き込まれても気にするつもりはない。でなければ住人が巻き込まれるであろう、こんな作戦を選択することはなかっただろう。


 今日はもう休んで明日の行軍に備えて休むことにした。昼間に発散したこともあり、近くに娘たちがいてもムラムラすることはなく、みんなと添い寝をした。


 ただ誰が腕枕をするかでじゃんけん大会になり、見事勝ち取ったのはアリスだった。俺の腕枕じゃなくて俺を腕枕したいっていうのだから不思議だ。腕枕というよりは、抱き枕にされているような感じだけどな。嫌いじゃないので別にいいのだけどね。

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