第230話 堕女神参上
不意に覚醒した。俺はカエデの腕枕で包まれて寝ていた。カエデと抱き合っている状態で後ろからはミリーが包んでくれている。美女によるサンドイッチか、贅沢だな。そういえば、年長組はどこに行ったんだろうか? マップ先生の情報によるとリビングで食事の準備をしているような感じだろうか?
「んっ……シュウ、大丈夫?」
「あぁ、カエデありがとな。もう夜になってるんだな……初めてしまったからには、やらないとな。王国にだってやり返さないといけないし、こんなところで止まるわけにはいかないさ。食事しに行こう」
「その前に、お風呂行くわよ」
ミリーも起きてカエデに引っ張られお風呂へ向かう。中には従魔たちが入っていた。
スライムがプカプカ浮いてるって結構シュールだな。大きく作ってあるから四匹の狼たちが、湯船のふちに顔を並べて気持ちよさそうな顔をしている。
狐たちは、狼たちの背中に乗って寝そべっている。うまくお風呂に入ってるな。ハクは器用に腹を上に向けて、首をあげスライムと一緒に浮いている。
従魔たちの体を洗って癒しを得てから食事を食べて移動を開始する。その間もみんなが何も変わらない普段通りの対応をしてくれていたので、色々な意味で助かったよ。
「さて、夜襲の準備をしようか。といっても食料をもらってからの迫撃砲を撃つだけだけどな。夜襲の迫撃砲は当てるのが目的じゃないから気楽に行こう。
地下通路の出口を食糧庫の中に作るから隠密行動をとる必要もないしね。今回砲撃するのは一番遠いのじゃなくて二と三番目の二部隊位を砲撃しよう。それ以外は食料だけかっぱらう形で。いったん別行動になるけど、寝静まった頃に無線で回収したら、ここに集合ね」
マップ先生を大きいテレビに映し出して、集合ポイントを指示していくつかのチームに分かれてもらう。狙う部隊数は七なので三人一組でチームを作ってもらい、余った娘たちと他のメンバーは集合地点で待機となった。
ただスライムたちが激しくプルプル震えて、猛抗議してきたのでニコ以外の七匹を各チームに一匹同行を許可すると、喜びの表現なのかオールレンジの体当たりをかけてきた。痛くないんだが気合を入れて踏ん張らないと、転倒してしまいそうだった。
少し落ち着けよ! ちょっと煩わしくなってきたので、飛んでくるスライムたちを軽く殴ってはじき返していたら、遊びだと思ったのかより一層体当たりが激しくなった。しばらくすると満足したのか各チームに散って行った。
バリス聖国侵略軍の北側の部隊は明日の朝に悲しみを覚えるだろう。どの部隊も近くの街までは二日程の距離がある。魔法使いがいれば水は何とかなるだろうが、近くには魔物もいないので食料調達できるのは次の街についてからだろう。
この世界には基本的に城壁に囲まれた街とその街を中心とした衛星村? と呼んでいいのか街の周りに農家が住む集落がある。親から財産を引き継げなかった者たちが街から少し離れた場所を開墾して、農業に励む者たちがいる場所があるのだ。なので都市の近く以外には村と呼ばれるものは少なかった。
フレデリクもリーファスもその集落が無かったので、その事実を知ったのはつい最近だったのだ。ダンマスのスキルで掌握する際も効率を考えて、街道から街へ街から街道へと掌握していたので、その集落に気付く事が無かったのだ。
そう考えると初めてフレデリクに行った際に出会った商人と冒険者たちは、たまたまそういう村に伝手があって不思議に思わなかったのだろう。
食料を盗まれた部隊が明日以降どういった行動をとるか楽しみだ。二部隊は食料を盗まれた上に、迫撃砲の練習台にされるんだからな、かわいそうな気がしなくもない。が、この国を放っておけばこの先さらに多くの獣人やエルフ、ドワーフなどが被害にあうのだ。
それに俺の大切なものを踏みにじろうとしたのだ、相応の罰を受けてもらう。今回略奪軍に参加させられた兵士たちに罪はなくとも、神を妄信的に崇めている奴らなど、百害あって一利なしだからな。これが俺の街への侵攻や殺害についてするべきではないと進言して、考えを改めているなら話は別なんだけどな。
というか本当の神と知り合いなんだから、チビ神の名前を使って天罰じゃ! なんてやっても面白いかも知れないな。
『そこの君! それなんだかおもしろそうじゃない! 私の名前が世界に広がるかもしれないんでしょ? 許すからやっておしまい!』
そっちが面白いのかよ! いもしない神を信仰している奴らに天罰がくだるより、自分の名前が広がる方が面白そうって、やっぱり駄女神なんだな。それと今までと何かキャラが違うぞお前。
『そりゃそうでしょ、人間たちの争う理由にいもしない神を祭り上げて、信託という言葉を使って戦争を起こしている奴らなんてどうなってもいいわよ。それより、その戦争を起こしている奴らを私の名前で成敗して私の名前が広まれば、他の神共にバカにされないで済むんですから!』
あ~そういえばこんな奴だったな、さぞ同僚の神たちもいじって楽しんでるに違いない。その一点だけは他の神たちと分かり合える気がしないでもないな。
とりあえず面白そうだから、もう一個の蹂躙戦にはアリスの名前を使ってみるか。って今更だけど年長組の一人とチビ神って同じ名前だったんだな。可哀そうにアリスよ……
『ちょっとちょっと、ちょっとおお! それって私と同じ名前だから。その獣娘が可哀そうって言ってるのよね! バカにしないでよね! これでも神なんだからすごくて偉いのよ! その証拠を見せてあげるんだから! 確かこんな感じでこうだったかしら? ん~、うまくいったみたいね。さすが私ね』
おいチビ神! 何したんだ! 俺に干渉しないんじゃなかったのか?
『何言ってんの? よく思い出しなさい! 「基本的に私から干渉することはあまりないわね」って言ったでしょ! あまりってことは干渉することもあるってことよ。
ちなみに獣娘のアリスちゃんに神の祝福を与えたわ。簡単に言えば、シュリって娘の劣化版とでもいえばいいのかな? あの娘は神たちの加護がかかってステータスが異様に高い反面エネルギーの燃費が悪いのに対して、獣娘に与えた祝福はステータスを二割ほどノーリスクで上げれるすごい物なのよ!』
マジか……アリスが強くなる分にはいいんだが、シュリの英雄症候群って神の加護がかかってるのか? あれって確か、シュリのステータスで見ると呪いってなってただろ……神は神でも邪神の類ってことか?
まてよ? 劣化版ってことは同質の物を与えることのできるチビ神って、邪神って事じゃないのか? ん? あ、こいつ元から悪魔みたいなやつだったな、俺さらって存在消しやがったもんな。
『ムキー! 貴方って本当に失礼ね! 今こうやって楽しく過ごせてるのは誰のおかげだと思ってるのよ!』
え? 俺が色々考えて努力した結果に決まってるじゃん。お前のしたことって、拉致って存在消して勝手にダンジョンマスターにしたあげく、ポイ捨てしただけじゃねえか! 寝言は寝てから言えよ堕女神!
『そのダンジョンマスターのスキルを与えたのは、私なんだからもっと感謝しなさいよね! それと最後の堕って私は堕ちてないわよ! 邪神とかけるんじゃないわよ!』
なん……だと……俺の皮肉を込めた言葉遊びに気付いたのか!? でもな、説明されると言葉の価値が下がるからやめてくれよチビ神。
『へっへーん、初めてあなたから一本とれた気分だわ! 今日は気持ちよく寝られそうね。それとしっかり私の名前を使ってこのくだらない戦を楽しくしてよね! 他の神たちもあなたが面白いことするんじゃないかと思って、楽しみにしているみたいだからね! 頼んだわよ』
くそう、何か負けた気分だな。さて気を取り直すか。
娘たちが全員集合場所に戻ってきたので、戦果を確認しようとしたが、今回は誰も収納の鞄を持っていってなかったのに今気付いた。
娘たちの腕輪の中には、容量八割ほどが服や装備、緊急用の食料や水が入っているので残り二割分で持ってこれる量では無かったはずだが、全部持ってきたというのだ。どういうことか確認したら、スライムレンジャーみたいなスライムたちは、ツィード君のいたずらの餌食にあって少し進化していたようだった。
スライムにはもともと取り込んだ物の力を引き出すことができるらしいのだ。それを知ったツィード君が面白半分に七色スライムたちに収納の鞄を取り込ませたら、ユニークスキルとして発現したそうだ。
ニコを含めた八匹が持っているユニークスキルとは……本当にユニークといっていいのだろうか?
それは置いておいて、収納の鞄とほぼ同じ量のものを体内にしまっておくことができるようで、敵の物資は全部収まっているようだ。
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