第224話 いらない物をまた得てしまった

 領主の命令で領主館から武装した兵士がわらわらを湧いてきた……何人いるんだよ! 五十人程出てきたところで打ち止めになった様だ。


 俺たちは迎撃態勢を整えていた。捕まえた奴らが暴れだすとめんどくさいので、スタンボルトで気絶させておく。


「さて、面倒くさい事になったけど迎撃をしようか。兵士たちは無理に生かす必要はない、全力で相手してやってくれ。兵士諸君、俺はディストピア兼グレッグの領主シュウだ。今ひくなら君たちを罪には問わない」


「お前ら! この偽物のいう事など聞くな! この男を殺して娘共を捕まえれば、何してもいいぞ!」


 兵士たちは全員声をあげて欲望にたぎった目をこちらに向けてくる。中立都市ってみんなこんななのか?ジャルジャン・ヴローツマイン・グレッグ・ミューズの四つの中立都市の内二つがクソ領主とかありえんだろ! 五十パーセントの確率でゲスとはな。


 この世界の貴族、領主ってそれが普通なのか? フレデリクの領主もリーファスの領主もアホだったしな。まともなのはジャルジャンのフェピーだけか? ヴローツマインは特殊だと思うから除外するとそうなるよな。あーやんなっちまう。


 俺が色々考えている間に全部が終わっていた。あれ? 早くない?


「ご主人様、終わりました。これからどうしましょうか?」


「お疲れさん、どうしよっか? やっぱりダリアに連絡して処理してもらうのがいいかな? 誰かダリアに連絡してくれ、今回もグレッグみたいに処理してもらおう。当事者同士で解決することができないから仲介に入ってもらうしかないよな。


 この領主館を抑えておこう、中にいるものには暴れないように言って一ヵ所に集めておいてくれ。もしかしたら街の兵士が来るかもしれないか、ら門は固く締めて土壁で蓋しといてくれ。後俺が思いつかなかったことは自分の判断で対処してくれ。あ、事後報告でいいからよろしくね」


 俺の指示に従って全員が動き出す。


 う~む、俺の指示がなくても問題なさそうだったな~でも一応統率者としての体もあるしな。俺が指示出しておけば全部俺のせいにできるし、みんなを守れると思えばいいかな。


 今回もダリアには外れクジ……にはならないか? ワイバーンの卵を餌に今回も頑張ってもらうかな。よくわからんが竜騎士の愛機として使われているワイバーンは、卵を産むことが少ないそうだ。って少し考えればわかるジャン!


 卵による出産行為が行われるが、ほ乳類の様な生殖行為を行ったうえで卵を産むので、その行為が行えない、性欲? 子孫の繁栄? ができない竜騎士の愛機たちは卵を基本的に産まないのだ。この情報はミリーの捕まえたワイバーンによってもたらされた情報だけどね。


 ただこの情報を得たので伝えてワイバーンの宿舎の改造を行ったのだが、一度竜騎士の愛機になってしまった者たちは何故か生殖行為を行わなくなってしまっていたのだ。なので心配したミリーがディストピアの砦に巣くったワイバーンにその事を伝えてみると、問題ないような意思表示があったそうだ。


 そのうえミリーが主人になるので、許可が無ければ生殖行為によって卵が産まれることはないとの事だ。って話を聞いていて思ったが、何故かミリーは自分の従魔たちと意思疎通ができるらしい。思念? のようなものが直接流れ込んでくると言っていた。


 それを聞いたら俺も試したくなったので、ニコとハクに色々してみたが……全く持って意思疎通ができなかった。俺がわかる事といえば『腹減った飯を食わせろ』『とりあえず撫でろ』『眠いから邪魔するな』くらいだろうか?


 それはさておき、ダリアに連絡を取ったら飛んでくるとの事だったので、後始末は任せることが出来るだろう。今回もグレッグと同じようにこの街の領主が俺になるのだろうか?


 ただでさえグレッグを持て余し気味なのにさらに増えるのか。さらに領主を代行してくれる奴を探すしかないか? ディストピアに少しずつ住人が増えてきたばかりだってのに、他の街のことも考えないといけないなんて、非常に不本意だ!


 ちなみにディストピアの住人になっているのは、希望者の中から厳しい審査を潜り抜けた一つまみの人間しかいないんだけどな。特に審査は厳しくしている。もちろん犯罪の称号持ちは一切受け入れない、些細な犯罪称号持ちでもはじいているので、この時点で八割以上は落ちてしまうのだけどな。


 他にも四大精霊+光闇二精霊の監督の下での面接をしてもらって、はじかれたものはブラックリストに入れたうえでマップ先生でも、要注意人物として紫の光点でマーキングをしておいた。後はちょこちょこ買っている奴隷たちが自分を買うために日々頑張っている。


 数日後には竜騎士に連れられてダリアたちが到着して、どうせ必要だろうという事で、領主の代行をしてくれる人材まで連れてきてくれたのだ。ダリア! お前なかなかやるな!


 後は、この街の治安維持を担うための人材も引っ張ってこないとな。この街の七割以上の兵士騎士が犯罪の称号、特に強盗と強姦が多く、中には殺人もいたのだ。


 領主一家と一緒に全員物理的に首を飛ばした。自分たちの地位と権力を行使して悪さをしていたようで、リンドの意見を参考にして住民の前での公開処刑をしたのだ。


 この世界では他の街や国に移住するのに難しい手続きなどは無いが、新しく家を持つのは大変であるため、商人や上位の冒険者みたいな金を持っている人間以外はあまり行われていないらしい。


 でもディストピアに移住できる方には格安で住む場所を提供しているので、お金をためてから購入するか新築する事で自分の家を手に入れられるのだ。


 兵士がいっぺんに減ってしまったので、今まで誠実に働いていた兵士たちをそのまま上官へ繰り上げて、新規に募集した。とはいえ新人が多かったので、訓練の指揮のためヴローツマインから現役を退いて暇を持て余していた人材をダリアが強引に連れてきていたのだ。


 こいつ本当に有能だよな。リンドはグリエルとガリア、老ドワーフに交じっていつもいい助言をしてくれるのだ。そのリンドに育てられたダリアも本当に有能だ! ヴローツマインから引き抜きたいところだが、さすがに総合ギルドの職員たちに泣きつかれたのであきらめている。


 グレッグで慣れたのか一週間でほぼ後始末が終わっていた。後はダリアが連れてきた人達が全部処理してくれるとの事でもう大丈夫だろうとの事だ。


 ここの領主館にも通信用の魔道具を置くことで随時報告ができるようにしてある。つい最近、アリスたちが無線をもとにした通信用魔道具を作ったので、俺たちが使うもの以外は全部こっちに設置しなおしている。


 ディストピアの領主代行はグリエルとガリアが務め、二人が育てた人材がグレッグ・ミューズをまとめる役として派遣されるようだ。老ドワーフやリンドたちはグリエルとガリアの補佐のような感じかな。俺はいわゆる国王みたいな立ち位置だ。いや~部下が優秀だと俺が楽できていいね!


 ちなみに娘たちは特務隊という形で悪さをした、兵士や騎士、暗部等の取り締まりをする立場という事になっている。一応仲間内で取り締まってもらう形になっているが、情で取り締まれなかったり、集団で悪さをして隠すなどした相手を取り締まる立場だ。


 ミューズの領主になってから一ヶ月も過ぎると街の混乱もなくなり日常が戻ってきた。だが、俺が領主になって一つだけ俺がきめた事がある『宗教の活動は禁止しないが、教義を押し付けたら奴隷落ち』という法を施行している。


 バリス教は獣人やドワーフ、エルフを亜人扱いして奴隷や討伐対象にしているので、それを街で行わせないためだ。


 中立都市なのでそこまで愚かな奴はいないが、ミューズでは黙認されていたらしいので法として定めて強制することにした。あの領主は綺麗どころの獣人を差し出せば、犯罪を見逃していたらしいしな。

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