第209話 記録更新

 ダンジョン五日目。


 六十九階からの出発だ。七十階への階段が近くにあるので、少し探索したらBOSS戦だろう。次のBOSSが何かはリンドも覚えておらず全くの情報なしだ。何が出るんだろう。


「さて、七十階BOSSまでもうすぐだ。頑張ろう、情報が無いけど油断なくいこう」


 みんなに声をかけて六十九階を出発する。


 出てくる敵は変わっていないが、とにかく数が多くて面倒くさかった。ドールの数が増えるといやらしい攻撃が増えるからやなんだよね。


 七十階のBOSSに到着する。うん、ミスリルゴーレムの数が十匹になって、しかも同じ材質に見えるドールが五匹追加で出てきている。もちろん武器と盾を装備している。


 ミスリルは魔法がとにかく効きにくいから、間接的な魔法攻撃か単純に物理じゃないと倒せないのがだるい。簡単にいえば、大きな岩を生み出してぶつけるとかそういった感じだ。


 どうも六十階のミスリルゴーレムより動きがいい。Lvの違いという感じではなかったので、おそらくはドールのせいで、動きがよくなっていると考えるべきだろう。まさか天然でBOSSたちが連携をとるとは思ってなかったけど、今まで進んできたダンジョンの事を考えればおかしい事でもないか。


 タンク組に頑張ってもらうか。シュリにはミスリルゴーレムを五匹ひきつけてもらい、レイリーにも五匹匹ひきつけてもらって、残りのメンバーでミスリルドールを先にボコることになった。


 ピーチが命令を飛ばして配置につかせる。シュリはステータスでゴーレムをさばき、レイリーは技術でさばいている。といってもレイリーのステータスもかなりの物なのだが、それに近いステータスのリリーでもミスリルゴーレム五匹をレイリーと同じく無傷でさばききるのは無理だろう。


「レイリーさんとシュリでゴーレムを足止め、残りのタンクメンバーとご主人様でドールの分断を! 実力順でサーシャ、メルフィ、シャルロット、リリー、ご主人様の順で担当しているドールの処理。急ぐ必要はないけど、のんびりしていると誰か怪我するかもしれないからよろしく」


 ピーチの指示を聞いて、ドールを弾き飛ばし隅の方で一対一に持ち込む。俺の相手は盾と片手直剣のオーソドックスな剣士風なドールだ。まぁ鎧は装備してないけど扱い的にはタンクといってもいいだろう。全身がミスリルでできているなら鎧も必要ないな。


 後方で娘たちがドールたちを総攻撃している。全員で囲むことができないので、分かれて攻撃しているようだ。そりゃそうか、人間と同じ大きさの敵を十数人で攻撃するなんてできないもんな。


 誰かが援軍に来る前に俺一人で倒したいところだな。


 盾をうまく使われているせいでなかなか攻めきれない。力やスピードでごり押ししてもうまくサバかれるんだよ。ドールって素材によってここまで動きが違うんだな、そういえばリビングアーマーも鎧によって動きが違ったな。


 上手くかわすもんだな。角に追い込んでかわす動作もできないようにしてやる。能力向上スキルに魔力を注ぎ込みミスリルドールを角に弾き飛ばしていく。ドールが体勢を立て直す前にさらに弾き飛ばす。繰り返して角へ追い詰める。


 よっしよっし、追い詰めたぞ。大ぶりの横からの斬撃はしにくくなったが、自分の立ち位置を調整してやればそれなりに力を込めた攻撃ができるだろう。


 今まで弾き飛ばして場所を移動させていたが、場所移動ができなくなったドールは俺の攻撃をすべて受けるほかなくなっていた。ドールはゴーレムと一緒で無機物の魔物なので一定以上のダメージを蓄積すれば倒せるのだ。


 この位置では受け流すこともできずにダメージを蓄積せざるをえない。という事で、倒すための連撃を繰り出す。右に振り出すと同時に右へ体を動かし壁に当たらないようにドールへ攻撃を加える。


 左に振り出すと同時に左へ、上下からの攻撃は体重を乗せ遠心力も使い攻撃していく。一呼吸の間で四十連撃ほど加えると、ドールが動かなくなりドロップ品になる。


 後ろを振り返ると、不思議な攻撃を目にした。両側から大型の武器で挟みこむような攻撃やタンクのシールドバッシュなどに合わせて反対側から攻撃が加えられていた。


 これって俺の壁を使った攻撃をすでに応用してダメージを蓄積していたようだ。インパクトの瞬間がずれれば大したダメージにならないはずなのによくやるな。


 その奥ではレイリーとシュリが五匹ずつのゴーレムを相手にしているのに、蹴飛ばしたり鈍器に持ち替えてぶったたいて吹っ飛ばしたりして位置を調整しながら、二人で挟んでシールドバッシュをかましていたりしていた。


 十匹いると思ったら九匹になっていたところを見ると、二人はゴーレムのタゲをとりながら倒していたようだ。


 程なくしてドールたちは倒され、ミスリルゴーレムの処理に入る。五匹のミスリルゴーレムに十分だったのに対して、ミスリルゴーレム十匹とミスリルドール五匹を十五分ちょっとで撃破していた。敵を倒す技術っていうのはいろいろあるんだな。


 俺も思い付きで角に追い込んだけど、それのおかげで効率が上がったみたいだしな。


 七十一階に入った。初めて出てきた魔物は、ブロンズゴーレム。また青銅のゴーレムだったが、問題があった。ドールだけじゃなくゴーレムまで武器を持ち出していた。


 しかもドールがランクアップしているようで、ゴーレムまで動きがよくなっている気がする。指揮関係のスキルでもあるのかな? 宝珠の中に確かそういったスキルもあった気がするな。ピーチに今度取らせてみようかな?


 数が少ないのでまだまだ敵にはならないのでサクサク進んでいこう。リンド達の到達した七十三階についた。昼食にはまだ早いのでもう一階程進んでから食事にしよう。


 七十四階に到着する。この時点で更新されたこのダンジョンでの到達階層。思ったより簡単に到着できたけど、それは持ち物を運ぶのに荷車もポーターも必要ないためこんだけの速度で降りてこれたのだ。


 食事も睡眠も上質なものがとれている状況であるために、ここまでハイスピードで降りてこれたのだ。最悪食料がなくなってもDPで召喚できる状況だからな、ストレスなく進んでこれているのだ。


 順調に進んでいき、五日目の到達階層は七十八階だ。ちょうどいい休憩ポイントがあったのでそれ以上は進まずのんびりすることに決めたのだ。焦る必要もないしな。


 一応各階に中継アンテナを見つけにくいように工作しておいて来ていたので、地上との連絡も問題なく取れている。変わった点といえば、魚人の人たちに任せていた和紙の品質が、少し上がっているようだという事だ。ある程度量産できるようになれば、ヴローツマインやグレッグにも売り出せるな。


 他にも産業考えないといけないかな? ダンジョンからとれる素材だけでも商売にはなるんだけど。それだと住民の人たちの仕事がなくなっちゃうから、何か考えんとな。

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