第207話 初めてのBOSS

 ダンジョン三日目。


 今日の目標は四十九階、休憩に向いた部屋があるので、そこまで一気に降りる予定だ。BOSSに疲弊した状態で挑むつもりはない。四十階にも常駐しているパーティーがいるので、五十階で初めてのBOSSと戦うことになるので備えあれば憂いなしで挑む。


 今日は武器の試しや素手での戦闘は一切なし、全力で四十九階を目指す。


 三十一階以降の魔物は前の階の魔物より確実に強くなっている。ウッドゴーレム⇒クレイゴーレム⇒ロックゴーレム⇒カッパーゴーレムとランクが順調に上がっている。まだ銅なので武器の性能で問題なく切り裂いたり打ち砕いたりできている。


 次の四十一階を超えるとアイアンゴーレムが出てくるらしい。銅と鉄がどっちが強いなんてわからんが何かあるんだろう。でもこのペースで強くなっていったら、情報のない階の魔物はオリハルコンとか出てくるのか?


 道がそこまで広くないので、横に並んで歩けるのは二人が限界だ。通路にいる魔物はそこまで数が多くないので力でごり押しできるが、部屋に入った際の敵の数によっては、力押しで行くと囲まれて被弾してしまう事が増えてきた。金属のくせに動きが早いんだよなこいつらって。


 部屋のサイズにもよるが最大数として階層の下一桁に十をかけた数字の魔物が出てくるようだ。そこまで大きい部屋はないが、面倒なのでそういう部屋は遠回りするパーティーが多いため、地図の経路にはできる限り楽と思われる通路が書かれていた。


 確かに、一〇〇匹近くまとめて相手にするより、四十匹を三回とかの方が楽だからな。特にロックゴーレムの階層から重量によるダメージが追加されているためか、被弾すると軽く体が浮くほどの威力なんだ。特に年少組の体の小さい娘たちは、下手したら二十倍以上も体重が違うだろう。


 タンクのリリーが盾で受けても力をそらさないと後退を余儀なくされてしまうのだ。レイリーですらまともに受ければ一・二歩下がらざるを得ないほどの破壊力になっている。真正面から当たって耐えれるのはシュリだけだろう。


 少し手間取ることが出てきたが、特に問題になるような事もなく四十階まで降りてこられた。約五時間で十階分降りれたか。さて、四十階にもいる常駐パーティーはどこかな? BOSS部屋の方から声がしてる。なんか騒いでるな。っておい! 時間的には真昼間だぞ? それなのにこの階で宴会やってるよ。


 まぁ差し入れはしていってあげるか。神の雫謹製の燻製肉とソーセージの盛り合わせと、ディストピアで作られた試作品の米酒を一樽贈呈してから四十一階に降りて、休憩によく使われるという部屋の敵を殲滅してから昼食をとることになった。昨日と同じ行楽弁当だがその味は美味く感じた。


 行楽弁当は正直娘たちにとっては、手軽に作れて楽なようだ。揚げ物があるのだが空調で室温がきつい温度になる事もないので楽みたいだ。


 それに、業務用の揚げ物機、フライヤーを元にした魔道具を導入しているので、大量の揚げ物がめんどくさくないみたいだ。できた端から収納にしまっていけば冷めないのだ。そりゃうまいわな。


 この階からゴーレムのお付きで出てくるドールがいやらしくなっている。四十階まではただの棒とかだったのに四十一階から武器を持って出て来たのだ。ただの武器では俺たちの防具に傷をつけることはできないが、金属の重さで確実にダメージが蓄積されるので厄介である。


 若干だがドールの動きがよくなってきている気がするんだよな。見た目は大して変わっていない気がするが、上位種だったりするのかな?


 アイアンゴーレムはカッパーとあまり変わった印象はなかったが、打撃系の武器を使っていたシュリから少し相手が重くなったような気がすると報告を受けた。


 俺が使っている大薙刀は銅が鉄になったところで、大した違いは感じ取れなかったが、今鈍器を使っているシュリには何か違いが感じられたらしい。が、どちらにしても大した差ではないので、どんどん進んでいく。


 目的地である四十九階には夜八時頃に到着した。出発したのが朝八、休憩含め十二時間でここまで降りてきたのか。明日はBOSS戦だな。リンドの話だと五十階のBOSSはビックアイアンゴーレムとの事だ。名前の通りデカいのだが、とにかくデカいらしい。


 普通のアイアンゴーレムが身長一.五メートル程なのだが四倍程でかく六メートル以上らしい。体積にしたら、64倍か? ってことはそれに応じた攻撃力になるんだろうな、危険だな。それと五十階のBOSSは六十階のBOSSより強いらしい。中間地点だから本当の意味で中BOSSか?


 リンドたちのパーティーはよく倒せたよな。フェンリルみたいに尋常じゃない速さはないだろうけど、Sランクの魔物に近いステータスになるはずだ。


 大きいそれだけで強いのは間違いないのだ。大きさにあったタフネスもかねそなえているのだろう。リンドたちが倒した時には、五十人程の人数で六時間以上かかったらしい。よくやるな。


 日が明けてBOSSの部屋前に到着する。そもそも何でBOSS部屋なんてあるんだろうな? わざわざBOSSがいるって知らせる必要なくないか? まぁテンプレなのかな? 誰が考えたか知らんけどな。


 うん……デカいな。目の前にすると確かに迫力あるね。普通のサイズと一緒な感じで動いているが、サイズが四倍もあるので実際はもっと早い……あぶねえな。


「さー頑張りますか。無理に突っ込まないようにね」


 斬撃はゴーレムの表面を切り裂くことができるが、すぐに再生してしまい元通りになってしまう。他にも打撃でへこんだ部分でもすぐに元通りになってしまう。リンドもよくこんな奴倒したな。


「みんな無理しない程度に攻撃を続けてくれ。攻撃の間に色々話をしていこうか。さてゴーレムを倒す方法がわかる人!」


 のんきに話をしているが、俺を含め絶え間なくみんなが攻撃を加えている。つま先を切り裂いてみたり、膝のあたりに切り込みをしてみたりしているが、一切きいている様子がない。そんな中みんなにした質問に答えたのが、ピーチだ。


「ゴーレムを倒すには、核を砕くか、胴体に相当する場所が切り離されるか砕けるか、五体の内3か所以上を切り離すか砕くかです」


「おしい、もう一つ倒す方法があるんだよねっと! 無機物じゃない魔物はダメージを蓄積するよね? それと同じで無機物な魔物でも同じで、耐久力を超えるダメージを蓄積すれば倒せるんだよ。ここまでくる間に倒したゴーレムの中にもダメージを蓄積して、倒したゴーレムもいたのに気付いてなかったかな。


 ほとんどさっくりと切り裂いたりしてたからね。ちなみに魔核を使ったクリエイトゴーレムで作ったゴーレムは核を壊されない限り動かなくならないけど、四肢の内1個でもなくなったらバランスが崩れて倒れるぞ」


 前に時間があった時に魔物の耐久性を調べるのに実験した際の情報を伝える。


「という事は、叩き続ければいずれ倒せるってことですね」


「そういうこと! というこで絶え間なく継続的に攻撃すれば倒せるぞ」


 動き自体は早く見えないが、通常のゴーレムより圧倒的にはやい攻撃をかわしながら攻撃するのは大変なので、途中からシュリが正面に立って攻撃を受け流しながらヘイトを稼ぎ、残りのメンバーが横や後ろから攻撃をする形になった。


 さすがのシュリも受け流しをきれいに成功させても三から四メートルほど吹き飛ばされてしまう。リンドたちが倒した時は、五十人で絶え間なく攻撃をし続けた形だったようだ。


 シュリがヘイトを稼いで攻撃を受けてくれていたため、攻撃側の負担が減り全力で攻撃できるので効率が上がり、一時間三十分ほどで倒すことができた。戦闘風景は特になにもなく終わってしまった。


 確かにこれなら毎回倒す気になれないよな。だから常駐する人がこの階にはいないのかな? ドロップしても、鉄のインゴットが中心じゃな……


 五十一階以降のゴーレムは、銅・鉄ときたら何かと思ったら銀だった。確かに金銭的には良くなっているが、素材的には明らかに弱くなってないか? でも、斬撃系のダメージが悪くなってきている気がするし、明らかにタフになってきているな。魔物にすると素材の硬度は関係ないのかな?


 戦闘の疲れがたまっていたが、今日は五十九階まで一気に駆け抜けた。

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