第182話 モフモフ後に農業体験

 さて魚人と鬼人の会談が始まった。


 …………


 といっても俺は干渉も監視もしないから、会談が終わるまで何もできないんだけどな。終わったからと言って会談の内容を教えてもらえるとは限らないんだけどな。といってもすることがないわけではない!


 俺は娘たちからもらったアイディアの内、いくつかを実行して魚人の方たちを歓迎する予定なのだ。


 第一の歓迎は海の生活ではまずできない畑仕事の体験だ! というのも、住んでるといわれている島ではまずできない経験だろう。島に住んでいるという話だが、チビ神から聞いた小さな島というのは恐らく本当に小さいのだろう。


 もしそれなりに大きい島であるなら、厳しい環境にある海に頻繁に出てないだろう。食料自給率を考えた際に、魚人の人口と島の大きさが釣り合っていないのだろう。どうしても海で食材を集めないと生活できないと、俺は判断してこの体験計画を立てたのだ。


 第二の歓迎は野菜や穀物を使った食事の提供だ。畑仕事で収穫したものを使っての食事を考えている。自分でとったものを自分で調理して食べる、その過程を楽しんでもらう予定だ。


 第三の歓迎としてもし移住してくるなら、彼らの活動舞台になる湖の紹介をするつもりだ。


 とりあえず今回の予定はこんな感じだ。結構詰め込んだ感じにはなるけど、流れとして行えるから今日一日で問題なくこなせるだろう。


 朝食を食べて直ぐに会談が始まったので、おそらく二時間もあれば終わるだろう……という事は恐らく十時前ほどには、会談が終わって畑に移動できるだろう。おっと、馬車の準備をさせておかないとな。


 合わせてシルキーたちには別の指示を出していた。畑仕事の後にそのままそこで食事を開始するつもりだ。バーベキューというわけではないが、焼いたりゆでたり、生で食べてもらう予定である。


 会談が終わるまで暇だな。ゲームするには微妙な時間だしな、久々にうちの猫たちでもモフるか。という事は、まずは探し当てなきゃいけないわけだ。


 召喚した猫は確か、九匹だったっけな? まぁ三匹はいる場所が確定してるんだけどな。てくてくと屋敷のキッチンに向かって歩く、なんでキッチンかなんて聞かなくてもわかるだろ? 食い意地のはった猫がおるからだ。


 といっても無制限に食べさせるわけにはいかないので、食べさせてはいないのだが、なのになぜここにいるかといえば、キッチンを取り仕切っているシルキーたちやブラウニーたちがよくかまってくれて、たまに俺に隠れておやつをくれるため、ここに居座っているってだけなんだがな。


 よし、三匹発見! 確保!


 ここにいる三匹はなぜか、長毛種だ! モフモフするのには悪くない、モフモフ部屋というなの俺の部屋に連れて行く。ベッドの上に置いて次のニャンコを探しに行く。


 他のはどこにおるのかのぅ。日向ぼっこでもしている奴がおらんかな? 屋敷を探索している間にすれ違ったアリスに猫たちを見なかったか聞くと、娘たちの部屋に入り込んで寝ているのが何匹かいるとの事だった。


 いつの日か忘れたか俺のベッドに来なくなったと思ったら、娘たちと一緒に寝てるだと……うらやまけしからん! ということで、さらに三匹確保!


 残りはどこじゃろな? 屋上にでも行ってみるか。猫用に草や爪とぎを準備してるからな、そこに何匹かいるかもな、って本当にいた! 二匹も捕獲できた! 残り一匹、どこにいるかにゃ?


 …………


 いねえ、一時間は探し回ったのにみつからねえ。今日のところはまた今度にしようか、部屋に戻って今いる八匹をモフろう。


 部屋に戻った瞬間、会談が終わったとブラウニーから報告が入った。そこに八匹もいるニャンコの中に埋もれる計画が、また今後になってしまった。


 会談の終わった鬼人たちと魚人たちを迎えに行く。準備してあった馬車に乗ってもらい畑へ向かう事を伝える。特に嫌な雰囲気もなく、


 むしろ仲良くなっているような印象を受ける。この二種族をあわせたことはいい影響を及ぼせたのだろう。畑仕事に食事、海の仕事場と立て続けにここの良さをアピールしていこう。


 畑のエリアに入った。魚人の皆様があごを外さないか心配になるほど口を開けている。閉めて閉めて!


 畑について農奴が簡単な説明を行ってくれた。そのまま野菜の収穫に入る。何種類もある野菜をどんなものか説明しながら、どうやって食べることが多いかなどを話しながら収穫方法を教え、生でも食べやすい野菜を選んでとれたての野菜をそのまま食べてもらう。


 今までに経験の無かったことをしているためか、初めのうちはおっかなびっくり行っていたが慣れてくると次第に率先してどうしたらいいのか聞くようになり、意欲をもって野菜の収穫をするようになった。


 色々収穫が終わる頃には、昼食の時間になっていた。野菜の植えられていない畑の上にバーベキューセットやかまどを作っていつでも食事が開始できるようになっていた。


 魚人たちの顔は終始笑顔だった。初めてあった頃は怒りや悲しみといった、表情をしていたのを思い出す。まだ十日ほどしかたっていないんだよな、これだけ近くなれたことは大いに感謝すべきことだろう。


 野菜の味などを聞くと、これほどたくさんの野菜があることも知らず調理の仕方によって、ここまで味が変わることも知らなかったようだ。調理方法が少なかったんだろうな。下手したら一部の奴隷より大変な生活をしていたかもしれないな。


 昼食も終わりしばらく休憩した後に、湖の方へ向かう事を伝え出発した。


「魚人のみなさん、もしこの街に移住してこられるならおそらく仕事の一つとしてこの湖で仕事をしてもらうことになります。俺たちには海の物、特に海藻なんかをとるのにはかなりの苦労を強いられます。


 そこでその部分を魚人の方たちに手伝っていただければと考えています。他にも希望があればその仕事をやってみてもいいと思いますし、頭の隅に置いておいてほしいです。


 気になってると思いますが、そこら中に見える建物は塩を作っている製塩所になります。他にもあっちには、干物を作ったり乾物を作ったりする施設もありますね。帰る際に一部を贈呈しますので村の皆さんに持って帰ってあげてください」


 色々説明していき、少し海に潜ってもらう、この湖には魔物を配置していない。以前は配置しようと考えていたが、あまりにも危険であることから却下されている。


 ダンジョンを通ってきて湖に入ってきた魔物に関しては、しょうがないと考えている。通路はあまり広くないので、進行できる海の魔物はそう多くなく、強さも大したことがない物だろう。


 湖の印象を聞いた後は、海の戦闘について気になったので聞いてみることにした。武器は、木の棒に固い岩石などを取り付けた槍に木と石の合わせ盾を持って戦闘しているとの事だった。


 現物を見て少しばかり大丈夫なのか心配になるほどだった。盾はともかく武器の槍はいいものを準備して持って帰ってもらおう。もしここに移住してこなくても、聖国に迫害された……国の犯した罪の償いの一部として受け取ってもらおう。


 俺たちが償いをする理由は全くないが、鬼人たちからの訴えもあり武器を渡すことを決めたのだ。長く使えるようにアダマンコーティングは行うつもりだ。


 そうこうしていると、空も暗くなってきたので滞在場所に戻っていただく。明日は街の説明をする予定だ。初遭遇の時にもある程度話したが、もう少し詳しく話していくことになっている。


 後は、自由に見て回ってもらう、好きなところに行ってもらいそこにいる人に色々聞けるようにしておく、どんなことに興味を示すんだろうな?

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