第181話 魚人到着

 魚人たちは順調に海底トンネルダンジョンを進んでいるようだった。その移動距離は、およそ一日で一五〇〇キロメートルを進んだそうだ。休憩を考えると恐らく水中で時速一〇〇キロメートルを超えるスピードで移動していることになる。


 ウォーホースの最大スピードには遠く及ばないが、水中で時速一〇〇キロメートルを超える高機動って恐ろしいよな。魚人は二十人の集団でレベルを見ると、四十から五十の者が十八人、六十八が一人、リーダーとおぼしき青年が七十六のようだ。


 陸の上ならおそらくCランク上位からBランク下位の実力だろうか? シーワームくらいなら相手にならんのだろう。スモールシャークも一人の時なら危険だが三・四人もいれば傷は負っても問題なく倒せるだろう。


 さすがに時速一〇〇キロメートルで海中を進めば、抵抗や水の流れがひどい事になるはずだが、ウォーホースと同じように水の加護があるのだろうか?加護って魔物だけじゃないのか?魔法の一種ととらえればいいのかな?


 それなら魚人以外にも俺たちにも加護が付くかもしれないってことだよな? シュリとか実はついてるんじゃねえか?


 海が食糧確保の視野に入ると、かなり食生活が豊かになるよな。何とか魚人の人たちを住人にしたいな。最悪、物々交換でもいいんだが。頑張って交渉しよう!


 魚人たちは、宣言通り出発から二日で湖についた。出迎える場所は湖の畔、製塩所のある場所だ。ここからなら魔物に出会うことなく街まで案内することができる。はたして街まで来てもらえるのだろうか? 家まで作ってきてもらえないとなるとちょっとショックだな。


「街の方に滞在できる場所を準備してますが、どうしますか?」


「案内してもらっていいですか? 食事についてですが、こちらからは宝石や魔物からのドロップ品を持ってきています。それと交換でもよろしいですか?」


「ん? こっちが招いた側だから、そこまで気にする必要ないですよ? それと食事に関してですがこちらから、家精霊のブラウニーを派遣していますので、好みのものがありましたら事前に申し出てください。お肉や野菜も食べられますよね?」


「お肉や野菜は、私たちにとって貴重ですので嬉しいですね。でもよろしいのですか?」


 やっぱり海に住んでれば、肉や野菜は手に入れにくいよな。まぁ海藻があるから栄養面では何とかなってるのだろうか?


「気にしないでいいですよ。今は街の食料としての自給率は高いですからね。五〇〇パーセントは軽く超えているでしょう。余った部分は、嗜好品に回すだけの余裕がありますね。


 それにこの前も話した通り私はダンジョンマスターです。肉、植物、鉱石の三種類のダンジョンを近くに準備しています。あなたたちが移住してきてくれるなら、海底ダンジョン、海の物のダンジョンが作れますね。今作っても入れる人がいないので作ってませんがね」


「規格外といえばいいのでしょうか? これから数日間よろしくお願いいたします」


「今日はお疲れだと思うので、ゆっくりしてください。足りないものがあったら派遣したブラウニーに話を通せばすぐに手配できると思いますので遠慮しないでください、近場に海水ではないですが池を用意しています。ご自由にご利用ください」


 他に簡単に街の説明をしてから準備した家へ向かってもらう。今日はゆっくり羽を伸ばして、ブラウニーに胃袋をつかんでもらってくれ。


 リーダーの青年に時間の流れのない収納の腕輪を、今回の訪問のプレゼントにして。他の魚人の村にも食事を持って帰ってもらおう! そうすればご飯につられてきてくれる確率が高くなるさ。


 俺は魚人達を案内してブラウニーに任せてから、鬼人のリュウに会いに行った。


 リュウにあって魚人からの要望として、話を聞きたいと依頼があった事を伝える。もし話し合いをしてくれるのであれば、中立の立場として四大精霊を同席させる旨をつたえる。


 この両方の一族は、迫害されている過去を持っているので慎重にならざるを得ないだろう、と考えたうえでのこちらの提案だという事も合わせて伝えておいた。リュウは快く話し合いに参加してくれるようだ。


 あまり多い人数だと委縮してしまう可能性があるので、五人前後で向かうとのことだ。自分たちも怖いだろうに、最後にどんな内容も隠さずに話しても問題ない事を伝える。四大精霊にも話し合いの内容は、絶対に話さないように誓約の魔道具を用いることも伝える。


 これで明日の仕込みが終わったので、シルキーたちに海でとれた魚介類を渡して魚介類中心のバーベキューの準備を始めてもらう。この街で何かあるとバーベキューをするのが定番になってきたな。


 食材を切るだけでいいからな、大量に準備するのが簡単なんだよな。焼きそばを作ったりできるように、大きめの鉄板を置けるかまどを作ってあったりする。


 バーベキューの準備がおわり、後は楽しもう!


 どんどん人が集まってきて、いつものにぎやかさが戻ってきた。ダンジョン農園の海で手に入る魚介類ではなく、海から取ってきた魚介類はやっぱり味が違った。


 ダンジョン農園の魚介類は俺の知っている地球のものであり、今回のものはこちらの世界の物なのだろう。マグロなどを食べてるときに気付いたことだった。不味いわけではないので俺は十分に満足している。


 わいわい騒いでるのが聞こえたせいか、魚人の人たちが興味をもったらしく、全員が様子を見に来たようだった。興味を持ったのであれば一緒に参加してみればいかがですか? とお誘いし、一緒についてきたブラウニーにバーベキューの準備をさせる。


 今まで食べたことのない手法での食事だったためか、我先に食べている姿が印象的だった。海に住んでるという事は熱を通して食べるのは恐らく簡単ではないだろう。燃料になる木材が手に入りにくいのだそれはしょうがないのだろう。


 とりあえずバーベキューを通して、鬼人の人たちと親しくなったのはいいことだろう。明日の話し合いも思う存分に行ってくれ。お酒も色々準備して、ここでは仕事をすればこういった嗜好品を楽しめる事を印象付けてみた。


 さて明日のための仕込みを始めるか。みんなにアイディアをもらって色々準備していこう。

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