第174話 新たな住人たち
鬼人の青年が一族を連れて北門にたどり着いたのは、五日後のお昼過ぎだった。ここに来た人数は、三九五人全員が移住希望でディストピアに来たようだ。
ぱっと見て子供の数が五十人程だろうか? 森の中での生活でこれだけ子供が産めたのはすごい事なのだろうか? 逞しい人たちだな。
「シュウ殿、全員を連れてきた。保護してもらいたいが……でも、人間が怖いのも事実なのだ。何かいい案はないだろうか?」
やっぱり怖いよな? って実体験をしていないのに怖いのか? そういう教育を受けた? という事なのだろうか?
「そうだな、いくつか案はあるが、それが君たちにとっていいものか俺には判断しかねるかな? それでもいいなら提案するけど?」
「聞くだけ聞いてみてもいいですか?」
「じゃぁあくまで提案という事で聞いてもらおう。一つ目は、隔離区画のような場所を作りそこで生活する。二つ目は、この街の外にもう一つ街を作る。三つ目は、ここにいる住人と交流をもって克服して普通に生活する。四つ目は、俺の所有するある施設にかくまうってとこかな?
といっても、食い扶持は自分達で得る必要があるからな。隔離してもこの街の外に街を作っても、ここの住人とは少なからず顔を合わせる必要があるけどな」
「そうですね……食料を得るためには、何かをしなければならないですよね。何もしないで食事と安全な寝床を恵んでもらえるなんて事は、あるわけないよな」
「あっと、参考までに言っておくけどこの街の人口はまだ一〇〇〇人はいないはずだ。で、その大半が最近購入してきた奴隷で、多くは獣人だね。君たちと同じように迫害を受けている人たちだね。
この街をある程度発展させてから他の者を呼び込もうとしているね。少なくとも、他の国の人間がこの街でデカい顔をできないようにするつもりだし、最悪実力行使をしてでも止めれるようにいろいろ考える予定だ」
「そうか、人間じゃなくて獣人が多いのか。確か私たちが住んでいた国では、奴隷のようにこき使われていた。俺たちと同じ迫害されていた者か。しばらく街の中で考えさせていただくわけにはいかないだろうか?
私たちは、魔物の血が流れているおかげか襲われにくい特徴があるが、長い時を神経のすり減る樹海で生活していたため休ませてほしいのだ」
こいつ、もしかして実験で生まれた混血か? 末裔かと思っていたが、昨日の話を思い出すと……生まれた一世代なのか? 寿命が人より長い? エルフやドワーフと同じような長命なんだろうか?
「そうだな、一つの契約をさせてもらえるなら、一時的に俺の保有する施設で面倒を見ることはできるぞ。ちなみに、ここにいる全員契約してもらわないといけないけどな」
「その契約とはいったい?」
「大したことじゃない、これから知りえる俺達の事で不利になりえる事を、一切話せなくなるっていうだけだ」
「本当にそれだけで、一時的にでもかくまってもらえるのか?」
「俺にとってはそれがすべてなんだがな。それでいいなら俺の秘密の場所へ招待しよう」
ツィードとシルクに伝言をしてもらい、四〇〇枚の契約の魔道具を作ってもらう。時間が足りないかと思ったが、ひな型になる契約の魔道具の用紙はDPで召喚できるようで、一時間もかからずに全員分の魔道具を用意してくれた。
約四〇〇人もいるので、さすがに建物の中で色々説明するには狭かったので、広場で説明を行った。契約内容の再確認と、契約を破った際の処罰を説明する。
さすがに処罰の部分でどよめきがあったが、それだけ秘密にしなければならない事だと念には念をおして契約をしてもらった。全員分の契約が終わったところで、ダンジョン農園へ案内しDPで召喚しておいた家に案内する。
ダンジョンを知らなかった鬼人の人たちは、目を見開いてここが地獄の入口では? といった表情をしている者もいた。ここにいるものは俺の配下の者たちだけで手を出さない限りは、何もされないことを伝えると安心してくれた。
食事に関しては、野菜が食べたければ管理しているドリアードにお願いすればもらえることを伝える。肉系がほしいのなら、ある程度はストックしてあるので誰かに伝えてくれれば持ってくることを伝えた。
なんにしても、勝手がわからないだろうからブラウニーを五人程つけておこう。多分、文明的な生活ができていたとは思えないので、ここの生活に近づけるように指導してもらうことにした。食事に関しては特に見た目から変わるだろうから、それを受け入れてもらうところから始めないとダメな気がする。
監視部屋にいって、スプリガンたちに鬼人たちが無茶しないように見守るようにお願いしておく。それにしてもこの部屋変わったな。常駐しているブラウニーがめちゃめちゃ生き生きしてるところを見ると、特に食事の項目についてかなり楽しんで仕事ができているのだろう。
入った瞬間に甘いにおいもしたので、一緒に食べてるのではないだろうか? まぁ、いい関係を築いてくれているようでよかった。今度は違う甘味を紹介してあげるかな。
そのまま会議室へ向かい、そこのメンバーに鬼人たちの事を説明した。ここのメンバーは全員、俺がダンマスであることを知っているので話がしやすくて楽なのだ。しばらく様子を見てからまた情報を教えることを伝えておいた。
二週間が過ぎた頃、鬼人の青年、リュウが俺の処へ訪ねてきた。
ダンジョンではなく、地上での生活を希望してきた。色々と問題はあるだろうが、無理をしないことを伝え、奴隷達と同じように俺の家の近くに住居を建てる。今まで一族全員が家族の様に生活してきたようなので、DPでみんなで生活できるように考慮した寮的な家を建てた。
魔物の混血という事もあり、人種とは違い元のステータスが高い。シュリ程ではないが普通の人たちよりは明らかにステータスは高かった。樹海で生活していたせいか、全員が隠密系のスキルを持っているのだ、忍者集団でも作れるのではないだろうか。
鬼人の人たちには、まず教育をしなければならないだろう。大変だがこの街で生活するにはある一定の教養は養ってもらいたいのだ。大変かもしれないが頑張ってくれ!
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