第172話 街の将来設計

 ディストピアの初めての種付け、田植えが終わり数日が過ぎた。何の影響かまだわからないが、フレデリクの作物に比べてやはり成長が早い。およそ二倍くらいだろうか? ダンジョンほどではないが異常といってもいいレベルだろう。成長が早くて大味になったりしないか心配だがしばらく様子をみるしかないな。


 街の建物も奴隷の大量購入で一気に増えはしたが、急造であったため若干俺の家と合わない感じだ。まぁいずれ改装すればいいだろう。


 街の主要部をどんどん作る計画をするか。そういえば街の建設計画はどうなっているのだろう? 知識奴隷として、仕事を押し付けられた人たちはどうしているかな?


 街の方針を決める会議室として今は、俺の家の一角を貸し出している。フレデリクの街にいた時には応対室として使っていた部屋だな。


 俺の部屋から三十秒もあればたどり着ける場所だ。今日の護衛という名のお目付け役は、エレノアとソフィーだ。最近はディストピアの街にいる時でもこうやって、護衛が付いている。


 俺がふらふらダンジョンに行ったり、独りで釣りをしたりしているため気が気でない娘たちに強制され年少組から二・三人のお目付け役が毎日つけられるのだ。なぜ年少組かといえば、年中・年長組は他にもしなければならないことを抱えているからだ。


 分かりやすい例えなら、アリスとライムの魔道具作成コンビだろう。俺が明確にお願いしたのはこの二人だけだが、他の娘たちも自分達で決めた仕事を持っているらしい。俺の知らないことがどんどん増えていくけど、自主性に任せよう。


 会議室に入るとこの街の方針を考えさせている四人の男が老ドワーフと新しい知識奴隷たちと話をしていた。グリエルとガリアで、押し付けられた知識奴隷の二人の父親は、マッシュとカシムというようだ。老ドワーフは、名前がわかっても見分けが一人以外全くわからん! 見分けのつく一人とは、ショタジジだからだ。


「色々検討してもらっているが、最優先で行ってほしいことがある。街の中心に総合ギルドを建てるように言っていた件だけど、隣接、併設どんな形でもいいから学校を一緒に作ってほしい。地下には、冒険者用の訓練施設と学校用の訓練施設を広めに準備してあるのでよろしく頼む。


 で、総合ギルドの周りは三十メートル程は何もない道路にしておいてほしい。道路を挟んだ向かいには日用品、食料をかえる場所を、道路では露店もできるように計画してほしい。他の街から審査を通ってこの街に来れた人たちの販売スペースという意味合いもあるので、うまくやってもらえたらと思う」


 自分の言いたいことをざっくりというと、老ドワーフ六人+四人の男たちが納得したようにうなづいていた。ん? 何か全部受け入れられているのか? ショタジジがこっちをみて、


「どうした? 何か釈然としない顔をしているな? あ~そういう事か。お前さん、自分の言ったことが全部受け入れられたことが不思議なのかね? というか君は自分の事をきちんと認識する必要があると愚考する。


 リンドを正面からたたき伏せた実力、この街を作った技術、そして世界の理からずれたスキル、これらを併せ持つ君の発言を無視できるものがいるわけがないだろうに。


 それとだ、この街を作ったのが君なのだから君の希望に沿った街づくりをするのは当たり前だろう。という建前はいらなそうだな、本音を言うのであれば、君の出してくれた案は、大変な部分も多いが理にかなっていると私は判断しているのだ。


 他の者もそうだろう。特にこの街はいままでの常識をはるかに超す物になるだろう。それを担う若者のための学校も大切だ、君の発言を否定する要素が今のところ見当たらないから受け入れてるのだよ」


 何か言いくるめられた気がするが、今のところいう必要が何もない様だ。


 街として機能させるためには、権力の一点集中は避けるべきだよな。無能を上に立たせるつもりはないが、欲に勝てないのもまた人間。日本のシステムを一部流用してもいいか?


 えっと、確か三権分立、司法・行政・立法の分権化だったな。


 司法と行政を分けて、立法に関しては司法と行政の2つで検討する形にでもしておこう。この世界では領主や貴族がすべての権力を握っているせいで、リブロフの街のようなことが起きて、ヒキガエルのような存在が我が物顔をするのだ。この街では断固としてそれは許さん!


 俺は領主にも貴族にも代官にもなるつもりはないが、俺の作った街を誰かに奪われる可能性は減らしたいところだ。この街に兵士を持たせないで、俺たちがPMC(民間軍事会社)として街と契約をして安全を担えばいいか? 法律として独自の兵力を持たない様にさせればいいか?


 冒険者も増えるだろうが、今の戦奴達は全部俺の配下になるわけでこの人数がいれば問題ないだろう。とはいえ戦力があるに越したことはないし、獣耳は保護していきたいのでまだまだ増やす予定だ。


 ダンジョンに潜らせて物資の回収もできるし一石三鳥だな。街の安全を守ること以外は基本的に、他の人に頑張ってもらえばいいだろう。


 近いうちに話しに行くとしよう。もう会議室もでちゃったし引き返していう必要もないだろう。


 エレノアとソフィーとは久しぶりにデート? お出かけ? をするからしっかりと遊んでおくか。従魔の六匹、ニコ・ハク・クロ・ギンのいつものメンバーに加え、コウとソウもノーマン達の修行を終えたので俺に合流している……モフモフが増えた!


 驚くべき報告として、コウとソウの尻尾が四本になっていた!


 合流したコウは肩車の要領で俺の頭の後ろにへばりつくのが定位置になっている。頭の上のニコとはなぜか気が合うようでお互いにストレスの無いように譲り合っている。ソウは自分で歩くより、クロやギンの背中に乗って移動することが多い。狐は二匹とも自分で歩くのは嫌いなようだ。


 メンバー的にも問題がないので、植物ダンジョンの三十一層に遊びに来た。今日のターゲットは小豆だ! 嗜好品になるためか、ドロップする魔物は大豆や麦に比べてはるかに強いのだ。


 他にも肉も高級なものになればなるほど強くなる傾向がある。木材も鉱石も高級品になればなるほどランクが高くなるのだ。でもビールを作る大麦は主食でも安価なものという位置づけらしく、低ランクの魔物だった。


 今の俺たちからすればCランク中位の魔物など取るに足らないので、乱獲してしまおう。戦奴たちもまだここまでは降りてきていない。


 上位の子たちなら実力的にはここに来れるレベルではあるが、俺たちが無茶をしないように言い含めていたので、一つ一つしっかりと段階を踏んでダンジョンを攻略しているようだ。感心感心!


 状況が分かるのも、四大精霊たちに相談して堅実な仕事をするスプリガンを薦められたのだ。守り神という意味でも悪くないと思ったので召喚したのだ。


 体のサイズを変えられるようで、基本はドワーフをさらに小さくした、ずんぐりむっくりな体系だが、仕事は的確に行ってくれる頼もしい奴らだった。ちなみに十人ほど召喚して、ダンジョンの監視部屋を改装する自由を与えて使いやすいようにカスタマイズさせている。


 二時間ほどで、五〇〇キログラム程の小豆が取れたのでシルキーたちにお土産として持って帰ろう。明日のおやつは、餡子を使った各種お菓子をお願いしておこう。明日も楽しみだ!

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