第171話 初めての農業

 今日からはディストピアの街をあげての農作業の日になった。


 農奴の人たちには今日からは、本業とでもいえばいいのだろうか? 農業に励んでもらいましょう。そして、アリスとライムの魔道具第二弾、水産器と呼ばれる水を作り出す魔道具だ。まぁもともとある魔道具の改良版だけどね。


 街の西側の酪農エリアの中央に大型の水産器を設置して広い酪農エリアへいきわたらす予定だ。ちょっと細工はするけどね! 水産器を設置した部分にダンマスのスキルで、水が湧き出るようにしている。ついでに水産器をダンジョンの一部と認識させ任意で魔力供給もできるようになっている。


 酪農エリアの端、城壁付近には水田も作っている。ここの特徴としてお米も推奨していきたいと思っているのだ。娘たちにも奴隷たちにも特に拒否感はないらしく、特に獣人たちには丼物が人気だった。簡単に食べれて美味くそしてボリュームがあり腹持ちがいいと。


 ダンジョンに潜っているグループは、おにぎりとお茶をもっていっているらしい。おにぎりの中身の一番人気は、肉味噌とシーチキンマヨが並んで人気の様だ。佃煮も意外に人気があるらしい。


 濃い味が好きなのだろうか? 一日毎に突入するとはいえ、堅パンや干し肉だけではやはり味気ないのでおにぎりを持たせると、かなりのやる気を出してくれるのでいい結果につながっている。


 ちなみに植物ダンジョンの一階は湿地系のエリアで、お米をドロップする稲系の魔物が出てくるのだ。特に強いわけでもなく擬態して近付くものに体を伸ばして、沼に引きずり込むのだ。


 でも強くないのでそこまで質の高い物ではないが、奴隷だった時の食事を考えれば天と地ほどの差であるためいつも喜んでくれている。


 大体一アール(十メートル×十メートル)で畑を区切っている。


 今回は、トマト・ナス・きゅうり・トウモロコシ・枝豆・オクラ・チンゲン菜・ニラ・ゴボウ・ダイコン・ニンジン・カブ・山芋・ショウガ……そのほかにも色々植えてみた。実験的なニュアンスも強いので種類を多くしている。


 手間がかかるがこの土地に何が合うかわからないので色々試すのだ。エリアの一割ほどの畑にドリアードを三人程追加召喚して畑の管理をしてもらっている。基本的に中心にある水の湧き出る場所で足を付けてくつろいでいるけどな。


 この種まきが終わったら、田植えをする予定だ。すでに苗は育てており、後一週間ほどで植えれるようになるはずだ。


 畑作業三日目、この世界には畑に畝を作ることがないようだったので、作るように指導する。管理しやすくするという事もあるのでぜひ覚えてもらいたい。


 ただ広い土地を鍬で全部やるには人が足りないので、ドワーフに急造でウォーホースにつける馬鍬を改良した、少し重めで引いたら棟ができるようなものを作ってもらった。


 間に合わせの物でもさすがドワーフ、想定していた以上の性能の物を作ってくれた。問題点を洗い出してさらにいい物を作ってもらおう。


 ドリアードに畑エリアの様子を聞きに行くと……なんか精霊が増えていた。水精霊だろうか? 召喚した覚えのない下級精霊だろうか? いろいろ聞いていくと、ドリアードが三人だと寂しいという事もあり、アクアが相性のいい水精霊の眷属を召喚してくれていたようだ。


 そっか、気にしてなかったけど精霊にも相性があるのか。今度から召喚する時は四大精霊や光と闇精霊に相談してからにしよう。


 種蒔きを初めて一週間。初めの畑には、もう芽が出ていた。ちょっと育ちすぎじゃないか? 俺が知る限り、フレデリクやリーファスの野菜の育ち方は地球と同じだった気がするんだが?


 精霊のせいか? ワームたちのせいか? そういえばワームって今何してるんだろ? 探してみると、遠いところで土を耕しているようだ。仲間内で暴れながら耕しているようだ。


 近くにいるとちょっとグロテスクだが、遠めだと何やら微笑ましいな。稲の苗がいい感じなので田植えをしていこう。昔ながらの腰が痛くなるあれだ。街の住人総出で主食を作るのだ。おにぎりの材料と知った獣人組は一つ一つの説明をしっかりと聞いていた。


 さすがに五〇〇人以上で行った田植えは、日没までに八割ほどまで終了した。明日の午前中には終わるだろう。ダンジョン組も戦闘ができるようになって、楽しそうにしているのだが畑仕事も喜んでしてくれるな。夕食後にしている一時間ほどの勉強にも積極的に参加しているし、将来は安泰だろうか?


「みんな、お疲れ様。この街初めての種蒔きだったのでみんなに参加してもらいました。皆さんの頑張りに対して、今日はささやかながらバーベキューを開催します。


 ドワーフの皆さんにもいろいろなソーセージを作ってもらっています。お肉も野菜もたくさんあります。無理のない程度に食べてください。もちろんお酒もあります。先日仕込んだビールも出来ていますので試飲という名の放出するぞ!」


 数百人単位の食事は相変わらずすごいな。でも楽しく食べてくれていて俺も満足だ。


「先の話になるけど、収穫祭も楽しみにしてて。その時はまた違う事をしようと思うからよろしくね。大きい子たちは小さい子の面倒も見るんだぞ! 自分たちだけ楽しむなんてことはダメだからな!」


 我先に肉を食べていた獣人の年上組に注意すると、はっとした顔で年下組の面倒を見始める。俺も同じ輪の中で食事をしたかったが、奴隷のみんなが恐縮してしまうのでさすがにやめてほしいといわれてしまった。俺がよくても相手がダメなこともあるのか。


 なので俺は誕生日席とでもいえばいいのだろうか、みんなの見えるところで、みんなよりランクの高い物を娘たちと一緒に食べている。


 この対応が一番奴隷に負担をかけないらしい。一緒の場所で食事するのも初めは大変だったのだからな。娘たちの時は命令でねじ伏せたけど、他の人はそこまでがちがちにしなかったからな。


 住人が増えたらこんなこともできなくなるかな? 初期のメンバーは優遇を図りたいところだからしっかりと誰かにメモしておいてもらおう。俺だと絶対忘れる。ドワーフ組が暴れだしたな、リンドに抑えに行ってもらおう。羽目を外してもいいけど周りに迷惑をかけないようにしてもらわないとな。


 みんなの笑顔が見れて何よりだ! 明日からも頑張ろう。

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