第134話 街の見学

 この街に到着してから一週間が経った。その間に色々な所を見学してきた。中立地帯というだけあって、獣人や精霊種に近い人たちも多くいた為、フレデリクでは見られなかった面白い物も多く娘たちと見て回ったのだ。


 樹海に近く獣人の割合が多いためか、冒険者風の人を多く見かける。普通の人間よりは獣人の方が森の中では、有利になるスキルを多く使えるようになるため集まってくるのだろうか? 猫や狼の獣人なら気配察知に優れ、気配を消して獲物に近付くこともできるのだろう。


 隠密部隊……ダンマスである俺なら、特に種族を気にすることなく部隊を作る事はできるけど、もともとの特性をいかして人材を集めるのもいいよね! 今度検討してみよ。


 娘たちを連れて露店巡りした時に気付いたが、珍しい調味料も多いようだった。嗅いだことのないにおいも多く娘たちが気にしていたので、調味料を扱っている店に行くと……何かすごかった。


 フレデリクではほとんど見なかった調味料や香辛料だったが、樹海が近いためか色んな物が揃っていた。興味の向くままに大量に購入し俺も娘達もホクホク顔だった。


 この世界って調味料、ほとんどなかったんじゃねえのか? チビ神様は嘘ついたのかね?


 まぁ一番喜んだのは言うまでもなくミドリだったけどね。色んな香辛料の組み合わせを試して味の研究をするのであります! とかなり意気込んでいた。


 シュリが一番興味を示したのは、闘技場だった。毎日開かれているわけではなく、三日に一度のペースで開かれているとの事。基本的には、戦闘奴隷たちが戦ったり、魔物を連れてきて戦わせたり、半年に一度街最強の剣闘士を決める大会を開いたりといろんな事をしているらしい。


 初日はすぐに違うことに興味を持ってスルーしたが、ここに参加している連中は強くてもBランクの半ば位だという事を伝えると興味をなくしていた。この街の強い冒険者たちは、闘技場への参加をしていなかったのだ。


 マップ先生で出場経験のある人を調べてみたらわかったことだ。強いやつらは、樹海で稼いだ方が金になるため闘技場で戦闘しないようだ。


 それもそうか、たかが一都市で最強になってもしょうがねえしな。国が一番を決める大会とかなら名誉みたいなものもつくしそっちの方がいいか。


 シュリとイリアが興味を持ったのは、魔物牧場? とでも言えばいいのだろうか。調教済みの樹海産の魔物達が放されている場所だ。獣系の魔物が多く中には植物系の魔物もいてすごいカオスな状況だが、色んな種類の魔物がいて面白くはあった。


 ニコとハクを見つけたそこの職員が是非譲ってくれとお願いしてきたが、殺気を放ちだした娘たちにビビッて逃げてったけどな。魔物牧場で知ったが、植物系の魔物の中には実をつけてそれが食べれるものが結構いるらしい。樹海探索する時の楽しみが増えたな。


 それにしても、この程度でとよくテイムできているな……何か、面白い条件でもあるのかね? クロたちみたいに美味い飯とか? あいつらは、テイムしてるわけじゃなかったな。


 他にも武器屋が多く質のいい武器防具を扱っている店が多かった。俺的には武器防具に興味があるのではなく、それを作っている人間に興味があるんだけどな。ここで勧誘するよりは、樹海の南にあるヴローツマインでする方がいい気がしているので、ここではいったん保留にしておこう。


 来るだけなら一日もあれば来れるしな。ただここら辺の武器防具には、昆虫系の魔物のドロップ品が使われているものが多かったため、ちょっと気になっていたのだ。


 娘たちに着させるのはともかく、街が完成した際にそこで活動する冒険者の為に、こういった加工のできる職人もいると便利だな……メモっておこう。


 そういえば、うちのパーティーはヒーラーがいるからあまり気にしていなかったが、回復アイテム等の道具も大切だよな。あれは調薬とか錬金の分類だけどそこらへんに強い人材もほしいよな。


 樹海に入れば色んな素材があるし、植物系のダンジョンにもそういう素材アイテムを配置してあるしな。


 作れる人がいなければ宝の持ち腐れになっちまう。そういう奴隷を買おっかな? 調薬や錬金の得意な精霊でも呼んで、そいつらに師事させれば何とかなるかな? その辺で考えて奴隷も探してみるか。


 そういえば男爵の嫡男青汁君は、以前にも同じようなことをしており、迷惑してたと言う事で縛り首になったようだ。貴族だと言えば何でもわがままを通せると思っていたようで、学習能力のないヒキガエルだったとの事だ。


 今回は、俺の家に乗り込んで恐喝まがいなことをして殺人未遂までして、何度目かの事なので情状酌量の余地は無しと判断されたと。そういえばここ中立地域だから貴族とか言っても、本当は意味ないはずなのにな。


 ライチェル王国だったとしても、流石に横暴が過ぎれば物理的に首は飛ぶよな? メルビン元男爵の件もあるから、何となく飛ばない気がしてきた。


 よく考えたら、国王からして根本的に間違ってる国だもんな。理由不明で殺されかけたしな。いつか絶対にボコボコにしてやる。


 この街は、全体的にみて樹海からの採取で成り立っているようだ。食料に関しては基本的には輸入に頼っており、樹海の食料や魔物の肉も主体になっているようだった。ヒキガエルを処断したことで輸入に影響しないのだろうか? まぁ俺には関係ないか。


 やはり香辛料や調味料が豊富であるためか、露店や食堂の食の質が高い。シルキーたちほどではないにしても、ここまでの食への追及はフレデリクやリーファスでは見られなかったものだ。冒険者にも街の外に出ていけるだけの実力をつけてもらい、香辛料や調味料を仕入れてもらいたいものだな。


 作っている街では、衣食住の内、住に関しては街のある場所が樹海の中心地という事を除けば最高の環境だろう、お風呂はあるし衛生面も問題なしトイレだって完備できるようになってるからな。


 食に関しては、畑も拡大しているし肉ダンジョンに植物ダンジョンもあるわけで質は高くなるはずだ。衣に関しては……あれ? 紡績とかどうするか? 針子がいればある程度の質の物は確保できるかな?


 一応高級品だってほしいところだから、きちんとした職人を引っ張ってきたいな。一つの街ですべてを完結させるって思ってた以上に大変な事なんだな。


 色々街を散策したけど今回の大きな収穫と言えば、奴隷商に獣人しかもキャットピープルの親子五人家族で両親と息子一人の娘二人と、ヴォーパルバニーの三人娘だろうか。


 親子の方は、簡単に言えば騙されて奴隷落ちしたと。新しく覚えた思念魔法という、条件が整えば思考誘導をできたりする魔法でその中の、真偽判定魔法を使ったから間違いない。


 相変わらず、俺に都合のいい魔法がいいタイミングで手に入るものだよ。


 三人娘の方は六人パーティーを組んでいたが、残りの三人に魔物の囮に使われて怪我して、治療費が払えず奴隷落ちになってしまったようだ。八人とも隠密に向いてるスキルを覚えやすいので、暗部として育ててみよう、いやだったら適当に冒険者や農家をやってもらえばいっか。


 とりあえず、見る場所がなくなったので、新しく買った奴隷を連れて一旦あの街に戻るか。いつまでもあの街っていうのも変だから今度みんなで名前を考えるかな。


 この家を空けておくのもまずいよな、新人たちは二パーティーあるから、交代でこの家に詰めておいてもらうか。定期的に奴隷商に行ってもらって、よさそうな人材がいれば俺が買いにくればいいもんな。各街に派遣する人員も考えておかないといけないな。


 この家の守りとして、リビングアーマー(ミスリル)の剣+盾、槍、斧、弓の四体を置物の様に設置しておこう。待機が苦にならない従魔って便利だよな。

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