第133話 また厄介事

 街並みを見ながらのんびりと家に帰宅する。マップ先生って便利だよね、同じ道を歩いて帰れば迷子になることのない俺だけど、さすがに違う道を通って帰ろうとすると距離感の誤差で間違える事があるのに、マップ先生のおかげでドンピシャで帰れる。


 ちなみに最近、マップ先生の能力が上がったようでナビゲートまでしてくれるようになったのだ。使う事なんてほとんどないが。


 家に近付いてくるといい匂いがしてきた。流石ミドリだな、匂いだけでも美味いって分かる程良い匂いをしている。新しく見つけた食材喜んでくれるかな? 門を抜けて玄関に到着する。


「ただいま」


「「たっだいま~」」


「「「「おかえりなさいませご主人様!!」」」」


 うん、わかってた。何で俺が帰ってくることが分かるのか未だに理解できないけど、マップ先生で見ていたら家に着く五分前位には、みんな玄関に集まってきて待機していたのだ。距離にしても三〇〇mは離れてるはずなのに何故わかる?


「ミドリ、ちょっといいか~夕食の準備が一段落してたら用事があるんだけど」


「はぃは~~ぃ、どうなさいましたかご主人様?」


「露店見てたら面白そうな食材があったから、今度使ってみてほしいんだ。どこに置いておこうか?」


「了解であります。それらは、食糧庫に入れておいてもらってよろしいですか? 左奥の棚が空いているので、そこへお願いするであります」


 しばらくして、食事の準備ができたので美味しいご飯を食べた後はお風呂……しまった、お風呂とか準備してたけど、排水についてはノータッチだった。トイレは作ったけどスライムをいれてないし……DPで建てた家じゃないからその辺が整ってないんだった。


 地下室も作ってないな。排水管と処理システム(スライム)を配置してから、みんなに先にお風呂に入るように言って、少し部屋の配置を変えていく。


 馬小屋を家にくっ付けて中に入れるようにして、近くに地下へ降りるスロープ付けて、地下室は戦闘訓練もできるように、ある程度広く空間をとって、地下道にちゃっちゃとつなげて完成。


 何かあった時のために隠し扉にしておかないとな。DPで確か認証アイテム付きの隠し扉が……あった! 何に使うか分からなかったけど、役に立つ時が来てよかったな、隠し扉よ!


 お風呂が終わったようで、俺のことを呼びに来てくれた。ニコを頭の上に乗せハクを抱いてお風呂へ向かう。ハクを泡だらけにしてからわしゃわしゃと洗ってあげると、キューっと喜んだ声を上げる。ハクが洗い終わると、ススッとニコが俺の前に来て洗うようにせがんでくる。


 いつも思うがお前は体洗う必要あるのか? だが洗ってあげるとすごく喜び、ビニョーンと体を伸ばして嬉しさを表現するのだ。最初は何かと思ったけどな。


 ノンビリお風呂に入った後に自分の部屋に戻ると、連れてきたメンバーが全員で待機していた。ベッドの上に? 理由を聞くとシェリルやイリアばっかりずるい! と言われてしまった。別にみんなで寝るくらいかまわないので、でっかいベッドを準備して寝ることになった。


 ドンドン……ご主人様~


 部屋の外から俺を呼ぶ声が聞こえる、誰だ? 目を覚ましてベッドの上を確認すると、誰もいなかった。みんなもう起きてたのね。で、俺を起こしに来たのは誰だろ?


 扉を開けて確認すると、シェリルとイリアだった。朝から可愛いなお前ら、いい子だから頭を撫でてやろう! うりうり、撫でまわすといつもみたいに、嫌がりながら喜ぶという器用なことをしている。


「ご主人様! 頭撫でてる場合じゃないです! よくわからない人が家に尋ねてきたので起こしに来ました」


 朝早くからメンドクせえやつだな、誰だ? マップ先生で確認する、意味ねえじゃん! この街の人間ほとんど知らねえから、名前見てもわからねえよ! しょうがねえから付き合ってやるか。


「食堂の隣の部屋にお連れするように言って、すぐ着替えて向かうから」


 着替えて部屋に向かう。中に入ると、豪華そうな服を着たヒキガエルと渋いお爺ちゃん執事、三人の鎧を着た騎士っぽいのがいた。


「待たせてすまない、用があると聞きましたが何でしょうか?」


「貴様! この私が来ているのに、遅れて来るとは何事だ!」


 うわ、メンドクせえ貴族っぽいやつか?


「いきなり尋ねられてきて、寝てるところを起こされたわけですが……こんな朝早くから人の家に先ぶれも無く、訪ねて来るのも非常識だと思いますがね」


「それが私に対する態度か! お前少し躾けてやれ!」


 すっと俺の前に出たシェリルをみて、


「お嬢ちゃん、怪我しないうちに下がりな。こいつからもらったらたっぷり可愛がってやるから」


 おっと、変態紳士ロリコン様のお出ましだ! ん? そうするとロリコンに失礼だな。あの人たちは、「YESロリータ、NOタッチ」の精神だったから、こいつはタダの変態だな。


「人様の家で何勝手なこと言ってんだよ、あんたがどこの何様か知らんけどぶっ殺すぞ?」


「この私を知らんだと……ライチェル王国のビスマルク男爵の嫡男ケール様だぞ」


 苦そうな名前だな。栄養たっぷりで肥えてるけど、魔物も食わねえんじゃねえかあの体。えっと、ビスマルク男爵だったっけ? マップ先生お願いしますよっと。


 人口二万人のライチェル王国の片田舎の町みたいだな。


「ライチェル王国の片田舎の男爵の嫡男さんが、どうしてこんなところに来たんですかい?」


「田舎だと! ふん、まぁ私の街を知っているのだから許してやろう。ここに来たのはな、お前が美人のメイドたちを連れているのを見たから、俺がもらってやろうと思って声をかけてやったんだ。ありがたく思え」


 ピキーン


「誰がてめえなんかにうちのメイドを渡すかボケェ! くそヒキガエルが! 帰れ!」


 後ろにひかえていた騎士風の男たち三人が、剣を抜いて俺の方へ向かってきた。


「言う事聞いてれば痛い目に合わずに済んだのにな。お前が死んだ後、メイドは俺たちがかわいがってやるから安心しな」


 さすがにイラついたので、俺が切り殺してやろうと思ったが、それより先にシェリルとイリアが動いていた。イリアは闇精霊にお願いをして、禍々しい何かを唱えさせていた。


 前に出たシェリルは、騎士っぽい何かの鎧に軽く触れる仕草をするとバタバタと倒れる。そのままヒキガエルの方に向かうと、執事がヒキガエルの前に立ちシェリルの進行を止める。


 この爺さん執事、おそらくAランクの冒険者と同じくらい強い。そんな奴が何でこんなヒキガエルに従っているかは不明だが、立ちふさがるのであれば排除しよう。


「執事さん、そこをどかないのであれば手加減しませんよ」


「そうは言われましても、奴隷の身である私は主人であるこの方を守らなければなりません。こちらも手加減できませんのでご了承を」


 ふ~ん、奴隷なんだ。だったら奪っちまうか?


「シェリルちょっと下がってくれ、シュリ聞いてるだろ? すぐにここに来い」


 扉が吹っ飛び両手に非殺傷グローブを装備したシュリが現れた。扉壊す必要なくね? まぁ後で直すからいいけどさ。非殺傷グローブを装着してきたあたりよくわかってるな、殺すとめんどくさい事になりそうだからとりあえず生け捕りだ。


【ペインバースト】


 急に何かと思ったら、闇精霊に魔法を唱えさせていたイリアから魔法が、ヒキガエルにむかって放たれていた。当たった瞬間に体中から、変な汁が流れ出して部屋の中に異臭が漂ってきた。オウェッ、吐き気を感じるほど臭かった。


 崩れ落ちたヒキガエルの様子を感じた執事は、慌てて主人を振り返ろうとした瞬間、シュリに沈められていた。


 このめんどくさいやつらどうするべきかな? 衛兵に突き出しとくか? こいつ一応貴族っぽいしな、どうすっかな。昨日の商人ギルドに連れてって、事情を説明してから衛兵に突き出してもらうか? 面倒なことになったら、家潰して逃げればいいだけだしな。そうしよう!


 縛り上げてもらって、ヒキガエルは外に引きずり出して水をぶっかけてきれいにした。部屋の中は魔法で綺麗にしたがお前は水で十分だ!


 そのまま商人ギルドへ連れて行き、嫌な顔をされたが中立もしくはこっち側で見てくれる人を、味方につけて(無理やり)一安心することにした。

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