第130話 変化がほしい

 開拓開始から二十四日目(休日含み二十七日目)、街の中の整地は一通り終了した。湖の方はまだ四割ちょっとといったところだろう。人海戦術(三〇〇体のゴーレム)で行っているが、まだまだ時間がかかりそうだ。


 木材のストックもすごいことになっている、これ本当に使いきれるのだろうか? そんなこと考えても意味は無いか、次は畑のエリアを整地しないといけないだろう。畑の面積は、街の面積の四倍程は確保している。


 ここも全部整地する予定だが、娘たちにはやらせなくてもいいだろう。ゴーレムをさらに量産して行うか、湖の前に行うか、後に行うか、分けて行うかの四択だろう。畑は今のところ急いでいないので、湖⇒畑の順でゴーレムを使っていこう。


 戦闘訓練をしていた奴隷の三家族は、ほぼ最低限の戦闘訓練が終わったようだ。やはり意欲の高いネルの成長が著しかった。


 グリエルの息子の十五歳モーリスとガリアの息子の十四歳テオは、親の後を継ぐために勉強をよくしていたから、運動はあまり得意ではなかった。でも、まだ育ち盛りの年齢であるためか、親たちよりは戦闘できるようになっていた。


 六人の親たちは、戦闘とは無縁な生活をしてきていたためか、体力もなかった。だけど、ダンジョンの効果もあってかある程度自衛できる力を手に入れていた。


 三家族の戦闘訓練はこの辺で終了でいいだろう。ネルは、まだ強くなりたいとのことで引き続き訓練をするようだった。ガルドたちもそれを了承しており、本格的な戦闘訓練に入っていくだろう。



 新人の娘たちは、順調に成長しているようだ。お互いの力も拮抗しているようで、パーティーに分かれて対人戦闘の経験を積んだり、先輩たちが行ったダンジョンINダンジョンでの対魔物の実戦を濃密な時間で行っている。


 戦闘技術の高かったミリーは、従魔達の四匹と連携訓練が終わったら、そのままダンジョンINダンジョンに放り込まれていた。従魔たちに指示を出しながら、自分も中衛の位置から攻撃をしている様子は、さすがの一言だった。


 ダンジョンを使わずに得た戦闘訓練が濃密だったのだろう。でも魔物を倒す機会があまりなくレベルが低かったのではないか? どちらにしても、娘たちとステータスと比べて器用さと俊敏さがかなり高いようだ。種族特性だろうか?


 そろそろ人をもう少し増やしておきたいところだ。職業奴隷ってとこかな? うちの娘たちは、戦闘とメイドに特化しているから、奴隷一家の様な職業別の人材が欲しいところである。そろそろ奴隷もかんがえないといけないか。


 奴隷一家の様に家族単位がいいかな。他にも男の人材があるといいが、高望みだろうか? 後は、鍛冶屋や商人系の人材もほしいところだ。


 鍛冶屋に関しては能力があっても奴隷にされてしまった人材はいるだろうが、商人の奴隷は同業者に陥れられたとかじゃない限りは、才能のない人間だから探すのは大変な気がする。まぁ最悪どっかの街から引き抜いてきてもいいか。


「という体で、俺は開拓作業に飽きてきたので、他の街に遊びに行きたいのだが、外出許可はもらえる?」


 夕食時に打ち明けてみる。


「ご主人様が行きたいのであればかまいませんが、護衛は連れて行きますよね? 誰にいたしますか?」


 ダメもとで聞いてみたら、ピーチから許可がでちゃった。


「本当に行っていいの?」


「護衛さえ連れて行くならばなにも問題ありませんよ? 私たちがフレデリクでご主人様に怒っていたのは、誰もつけないでコッソリとどこかへ行ってしまうのが困るから、怒っていたと前にも言いましたよね」


 若干、怒の感情が叩きつけられている気がする……ブルり。


「じゃぁ、同行者はシュリ・キリエ・リリー・マリー・クシュリナ・シェリル・メアリー・イリアの八人とミドリを連れて行こうかと思うけどどうかな?」


「そうですね……バランスはいいと思いますので、問題ないかと思います」


 名前を呼ばれた娘達はかなり喜んだ様子で、選ばれなかった娘たちはかなりしょんぼりとした様子になっていた。


「ピーチには、俺がいない間リーダーとしてみんなを引っ張って行ってほしいと思ってるんだ。よろしく頼む。スカーレット、そろそろブラウニーを増やそうと思うけどどうかな? ミドリが抜けてブラウニーが増えるのは大変か?」


「設備にも慣れましたし、新しくなったおかげで効率が良くなったので問題はないですね」


「じゃぁ、明日の朝にでも召喚しよう。予定は四人程だからよろしくね。グリエルたちは街の構想に入ってもらっていいかな? ミリーは冒険者ギルド系を任せたいと思っているから、グリエルたちと一緒に考えてもらっていいかな?」


 グリエル、ガリア、ミリーは肯定の声をあげた。他の街へ行くと言っても、無線機があるのですぐに連絡がつけれるわけで、相談があればすぐに聞けるのだ。


「じゃぁ、明日出発するから馬車三台とキッチン馬車一台の準備をしてもらっていいかな? 馬車二台はミドリに収納してもらって、収納してない馬車には二匹ずつウォーホースをつなげるようにしておいてほしい」


「「「「馬車三台ですか?」」」」


「奴隷を購入した場合、つれて帰るための移動手段がないと困るでしょ?」


 娘たちはハッとした表情で、少し顔を赤くしてうつむいていた。


 夕食も終わり、食堂を片付ける組と明日の出発の準備をする組に分かれて行動しだす。ピーチとミリー、レイリー、カエデを呼んで俺がいない間もよろしくお願いしておいた。何かあれば無線を使うように言い、俺たちにも何かあったら無線を使うから、誰か一人は絶対に持っておくように伝える。


 とりあえず、最初の目的地はライチェル王国側の樹海に面した街にしようと考えている。理由は特にないが、しっかり場所が把握できているのがここなだけなのだ。


 ここで三大国の位置関係を説明しておこう。樹海の山を中心に正三角形を描き、北側にライチェル王国、南西にダグリス帝国、南東にバリス聖国が存在する。三大国の国の間には複数の国があり、お互いを侵攻しないクッション材にもなっている。


 樹海から南に位置する場所には大きな鉱山があり、ダンジョン化しているため結構大きな街となっている。三大国の首都と比べると大きくは無いが、人口比率による質の良さは一番らしいとの事。


 特に長寿の戦闘鉱員のドワーフや鍛冶師のドワーフ達が多く住んでいるので、戦力的にもかなりの物だという事だ。一度は行ってみたいな、ドワーフって一般的なイメージ通りの種族なのだろうか? 楽しみである。


 予定では、三大国と鉱山の街ヴローツマインと樹海に面している三つの街に家を用意して、ダンジョン地下道でつなげる予定だ。


 中立都市なので国の干渉は受けないし、地下に作る予定のダンジョンの入り口に細工をしておけば、踏み込まれた時でも問題ないだろう。他にもバレる前にダンジョンの入り口を潰しておけば、何の問題もなくなるしな。


 地下道でつないでおけば、人員を送るのもウォーホースに任せられるし便利だ。


 久々の違う街という事もあり、わくわくした気分だ。ケープマインは実質見れていないから、フレデリクとリーファスしか知らないのだ。楽しみになるのもしょうがないだろう。遠足前に寝れない子供の様な気分であったため、眠るのが遅くなってしまった。

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