第125話 途中経過

 開拓作業が始まって四日目。


 街を建設する予定の土地の伐採率は、約四割弱だろうか? この様子だと後七日はかかるだろう。さすがに一週間で全部は無理のようだった。


 移動に時間がかかりだしてから、伐採スピードがじわじわ遅くなっているので、そのくらいになる予定だ。遅くなっても何の問題もないから、多少のずれはどうでもいいのだが。


 地下と壁の進行状況も同じようなものだ。地下を掘って塀を作ってって形になるため、慣れた作業とはいえ、移動に時間がかかってしまっているのでしょうがないだろう。特に今回は城壁なので若干作り方を変えている。そのため仕方がないだろう。


 厚みも高さも幅もかなり大きく作っている。高さは約十メートル幅は約四メートルで城壁みたいな凹凸をつけている。どこからでも登れるようにするのは危険なので、東西南北の門に併設予定の兵士の詰め所に階段の設置を考えている。兵士の詰め所は一応設計だけはしておこう。


 新しい街になる予定の俺たちの家は、色々考えた末に山側である南側に配置している。ちょうど中心地と門の中間くらいだ、山側から飛行系の何かが来た時のためにここにしている。南門には魔法系や弓使いをそのうち多めに配置する予定だが、そんなにすぐに集まるわけではないのでこういった配置にしている。


 他にも設置が決まっている施設の位置を紹介しておこう。


 街の中心に役所を建てる予定だ。そこを中心に東西南北に一直線にメイン道路になる道をひく。役所の周りには中央広場、公園や屋台などの住人が交流できるスペースを作り、公園に面したあたりに各種ギルド、この街では寄合所みたいな感じになるだろうか?


 そういったものを建てる。街の西側には、農家を多めに住めるようにする予定だ。反対の東側には、職人たちが多めに住めるようにする予定だ。工房なども作れるように広めの敷地も検討している。


 正確に位置を決めているわけではないが、街の外周部には宿を多めに内周に住人を多めに住める予定にしてたりもする。


 冒険者ギルドだけは、街の南側メイン道路を挟んで俺の家の向かいに建てる予定だ。何かトラブルがあった際には、誰かが駆けつけれるようにするためと、南門の外の山を少し進んだ(距離的には五〇〇メートル程)の所に鉱山型ダンジョンを設置する予定なのだ。


 東の門の外、湖の畔を二キロメートル程進んだところに肉系のダンジョン、南西の門の外で盛り上げる予定の畑の下に植物系のダンジョンを作る予定なのだ。


 この世界ではダンジョンができる方法は、大きく分けて二つあると言われている。ダンジョンマスターがダンジョンを作る事と、自然発生するダンジョンの二通りが知られている。


 できる場所については特に規則性は無くランダムにできていると周知されているが、ダンジョンマスターがダンジョンを作る際には、近くにダンジョンが存在しないところに作るのだ。


 理由は簡単だ、商売敵であり倒すべき敵なので離れている方が安全だからと、何種類も作るより一つのダンジョンに詰め込んだ方が安上がりだからだ。


 なので今回のこの三つのダンジョンは自然発生したダンジョンと周りには認識され、たまたま住みやすい場所を探して樹海に入った優秀なパーティーが、住める場所として街を作ったという流れになる。


 ただ、三大国のトップに近い人間は、俺たちの誰かがダンジョンマスターと気付くだろう。なにせ同じ方法でレベルを上げているのは、どの国も同じなのだからな。だからと言って簡単に手出しのできる場所ではないし、人が増えなくても簡単に要塞となるだろう。


 兵士や冒険者の訓練所も地下にダンジョンとして設置する予定なので、メキメキと強くなってくれる事だろう。ただ、冒険者は荒くれものが多くなる傾向が強いので、規則をしっかり決めて厳重に処罰することを明確にしておかないとな。後々厄介になるのでそこら辺の対策もしておかないとな。


 そういえば、新人組とミリーはカエデと四大精霊+光と闇精霊にしごかれている。さすがに一気に先輩たちに追いつけるわけもなく、最低限度の訓練をしてリーファスに送り出しただけなので、ここに来てみっちりと行う事にしたのだ。


 ミリーに関しては新人たちより戦闘技術はあるので、ツィード君とシルクちゃんにレベル上げを手伝ってもらっている。一人だとあれなので、テイマーとしての才能があったという事にして、従魔を持ってもらう事にした。とりえず四匹くらい選んでもらう・・・


 ギンやクロと同じウルフ系を二匹と、魔法を使える狐系を二匹を従魔にすることにしたようだ。見事にモフモフ系でせめたな。


 俺は知っているぞ、ここまでの移動中にギンやクロに寄りかかって昼寝をしていた、シェリルとイリアの事をずっと羨ましそうな顔で見ていたのを! だから、ミリーの部屋には従魔たちと一緒に寝れるように、特大のベッドを準備してあげたのだ。


 ミリーのパーティーはいたってわかりやすい、前衛二中衛一後衛二の一人と四匹からなる。後衛の二匹の狐は、片方が攻撃性の魔法で、片方が支援系の魔法を使えるようにしてある。


 まぁ訓練すればどんどん使える魔法は増えていくんだけどな。全員に能力向上のスキルを覚えさせている。Lvとしては二にして慣れていってもらい、段階を上げていく予定だ。


 奴隷一家の三家族は、この三日間で全員簡単な組手ができるようになっていた。娘たちを鍛える時にも思ったが、ダンジョンの中で訓練をすると成長率が半端ではない。娘たちより伸びは悪いが、そこらへんは気の持ちようというのも大きいのだろう。


 娘たちは全員、一旦は戦闘をする前提で購入してきており意思確認もしているから、学ぼうとする姿勢も違うのだ。そういう点では、ネルちゃんだけは頭一つ飛びぬけて強くなっている。


 シェリルやイリアと一緒にいたい、何かあったら治してあげられるようになりたい、という意思が強いから、それが成長率につながっているのだろう。


 そういう意味では奴隷兵っていうのは効率いいだろうな。強くならなきゃ死ぬしかないから、必然的に追い込まれて強くなっていくのだろう。自由意思を奪われて戦闘兵器になるだけなのだが。


 訓練を始めたばかりの奴隷一家たちには、まだ能力向上スキルは覚えさせていない。この一家たちをつかってある種の実験をしている。最終的には全員に覚えさせるが、能力向上のスキルが存在していることを知ったうえで、意識して訓練するのとそうでないのだとスキルを覚えられるのかという事だ。


 今まで遭遇した中で唯一習得していたのが、シングル冒険者のリーダーだけだったのだ。おそらく知らないスキルを覚えるのは恐ろしく大変なのではないか。みんなのスキルの覚え方の傾向を見ても意識しているのとしていないのでは習得率が違ったからだ。


 何でこんな事をしているかと言えば、チビ神の書いた【これでYOUもスキルマスター】の本に召喚できないスキルが多数あるのと、チビ神も知らないスキルがありさらには、現在進行形でスキルが増えているという事が原因だ。


 能力向上というスキルを覚えるには、宝珠しかないのかそうでないのかを検証して、後者であれば召喚できない宝珠のスキルを、自力で覚えることができる可能性が高くなるのだ。本にはどういったスキルであるか説明があるのでより確実になるだろう。いい結果が出ることを祈ろう。

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