第122話 新天地までの道のり
奴隷兵を退けて、しばらく経ち夜が明けた。
新人組に起こされて朝食をとり始める。そういえばアクアからの報告があったのに、キャスリングするのを忘れてたな。無線で謝ってから新天地に一足先に行っておいてもらおう。無線で謝ってから、ダンマスのステータスを呼び出しキャスリングを起動させる。
地下を通って行く事を考えると、奴隷一家にはダンマスの力を教えた方がいいかもしれないな。今から行くところは、シングル以上でもなければ逃げ出しても生きて他の街にはたどり着けないわけだし、ばらしても問題ないか。
人の通りが少ない場所へ雪をどけながら移動する。しばらく進んだところに馬車の入れる地下を作り、馬車を入れみんなに集まってもらう。
「時間がないのに集まってもらってごめんね。三家族には言っていなかった秘密がある。俺、ダンジョンマスターって呼ばれている者なんだ。種族的には一応人間だと思う。ダンジョンって聞くと怖いイメージがあるけど、実はそうじゃない事だけは理解してほしいかな」
一応聞いてくれているが、理解できていない様子だが言葉を続ける。
「で、その能力を使って今から向かう予定の樹海の地下を通って、中心部まで行くつもりだ。すでに向こうにフレデリクの街以上の広さを確保しているんだ。そこに街でも作ろうと思ってるんだ。
街がある程度形になったら、移住してきたい人や見込みのある奴隷を買って連れてこようかと思ってるんだ。いきなり話したけど、一緒に付いてきてもらっていいかな?」
三家族九人は、まさに「ぽかーん」といいた表情をしてこっちを見ていた。五分ほどしてようやく回復したようで、全員が「もちろんついていきます」と声を荒げて答えてくれた。
同意もえられたことなので、一直線に目的地までの地下道を設置する。設置された通路を見て、新人組も一緒に驚いていた。実際にダンマスの力で物をいじる所を見るのは初めてだったもんな。
「「本当にこんな力があるんですね・・・見ても信じられませんね」」
グリエルとガリアがシンクロして言葉を発していた。
一直線なので、御者に着く必要はなかった。馬車を二列に並べてくっ付けロープで固定し、後ろにもクリエイトゴーレムで作った器具を使い馬車をくっ付ける。七台の幌馬車と一台の箱馬車は、ほぼ同一のサイズで作ってあるのでこういった無理ができたのだ。
ウォーホース達には引っ張れるような器具を装着し、みんな並んで引っ張って欲しい事を伝えると、喜んで動き出した。通路の中は温度が保たれており快適であったので、全部をくっつけてみんなで話せる空間を作ったのだ。
もちろんシルキーたちの箱馬車があるので、飲み物と簡単な焼き菓子を出してもらった。
街を作ろうと話したところ、グリエルから貿易とかはどうするのか尋ねられ、この地下も利用するのか尋ねられた。
この通路は、到着した段階で潰す予定であること、貿易は基本的にしない予定でいる事を伝えると、食材はともかく塩はどうする予定なのか聞かれた。
そういえば生きるために必要な塩も、どこかから取ってこれるようにしないと街としては不自然だよな。街の近くに大きな湖を作って、そこと海をダンジョンで繋げてしまうか? 大分不自然ではあるが、ファンタジー世界なら何でもありだよね!
食料に関しては、街のまわりに広大な塀付きの畑何かと、肉のドロップがあるダンジョン、繊維のドロップするダンジョン、鉱山ダンジョンの三つを作ってみようと思っていることを話す。
うんうんと頷き、基本的にはその街ですべてが回るようにできるシステムにしているんですね、と感心していた。ただ街としてある程度の発展をさせていくつもりなので、みんなの協力がほしい事を伝えるとみんないい笑顔で協力を申し出てくれた。
ある程度の区画整理をして、土地は区画や場所によって建てられる大きさを決めたり、規格をいくつか用意しそれに合わせて家を建ててもらうのはどうだろうか? とか、人が増えたらギルドもあった方がいいと思うので、そういった拠点になる物の場所は先に決めておくと予定を話してみた。
これにも同意を得られたが、価格や利権の話はどうする予定か聞かれてしまい、そこまで考えていなかったことを話すと、時間はあるのでみんなで考えていこうと言われた。みんな優しいな、俺一人で街は作れるだろうがまとめ切る自信は全くない! みんな助けてくれよな! と心の中で絶叫する。
水源に関して話をふられたので、俺の屋敷を一番高い位置に配置しそこでアクアを中心とした水精霊と魔導具を使って、町全体にいきわたる様にするつもりだけど、それで賄いきれるとは考えていないので、街の主要機関にも同じ様に魔導具や水精霊を配置して全体にいきわたる様にすると伝える。
もちろん街の外の畑も水路をひいて、水を使えるようにするつもりだ。水が過剰供給できるのであれば、いろんな水路を作ってもいいのじゃないだろうか? とかも考えてたり。ダンジョンから水を吐き出させる方法もあるんだけどね。
そこまで話すと、そこまでするつもりなのかと若干ひき気味に聞かれてしまった。やりすぎなのだろうか? この世界ではそうかもしれないよな。でも自重するつもりはない! もちろん風呂も入れるようにDPで調整するつもりだ。
それを聞くと、娘たちは揃ってそれは必要だと言わんばかりに、うんうんと首を縦に振っている。
三家族九人はその話を聞くと絶句していた。『一番不便で危険な地にある一番幸せな街』と農家の娘のネルが名言をぽつりとつぶやいた。後に、この名言の一部がこの街の売り文句になるとは思ってもいなかった。
新天地の街のまわりは、魔物だらけなのだ。予定では東側に海水をひいた湖を作り、西側には街と同じ高さに大地を盛り上げたところで畑を作る予定だ。ちなみに、湖の海水をくみ上げて街のまわりを囲むように水路を作る予定である。
魔物も流石にそこまですれば、飛行系以外は寄ってこないだろう。他にももしここまで冒険者達がこれたとしても障害になるだろう。水分補給もできずに苦労するだろう。あーそうするとあれだな。海のまわりと水路のまわりは植物体系を少しいじった方がいいか?
話をもどして飛行系の魔物を相手にするには、魔法か弓を使うしかないのでそこらへんは育てていかないとな。特殊兵としてうちの娘たちに対飛行魔物用に、スナイパーライフルを使えるようになってもらってもいいかな?
いろんな話をしている途中にウォーホースに疲れていないか聞くと、まったく疲れていないしお腹もすいていないのでまだまだ余裕っす! みたいな感じでテレパシーの様なものが帰ってきた。
その話を聞いたので、馬車が走っているうえで食事をとった。移動速度が五十キロメートルを超えており、目的地には後二日で到着するだろう。樹海はかなり広く山を中心に半径五〇〇キロメートル程ある。
樹海を掌握した時に知ったが、小さな村みたいなものも存在し、樹海に隣接してそこそこ大きい街も存在していた。どういう街か聞いたところ、樹海の素材を取ってきて一攫千金を狙っている冒険者が多いところのようだ。荒くれものも多いが治安は悪くないらしい。
レベルも一〇〇に届きそうな冒険者が結構いる。ここの街は、中立地帯に属しており国からの干渉などは一切受けないとの事。共同体に近いようなものだと、何かマフィア的な感じなのかな? 自分たちを守るために力をつけたみたいな? なんか違うか。
難しい話も多かったが、どうでもいい内容の雑談も多く和やかな雰囲気だった。難しい話をしてる時は、年少組とネルちゃんが馬車の後ろで伸びていた、ギンとクロに接近しモフモフして遊んでいたな。シェリルとイリアは一番いい位置を陣取ってお昼寝していた……そこ代わってくれ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます