第50話 指名依頼

 モフモフ達を召喚してから数日後。


 朝目が覚めると、お腹の上にいつも通りニコとハク。ベッドの左右にギンとクロ。ちなみにギンはシルバーウルフ、クロはシャドーウルフである。安易な名前という抗議は一切受け付けない! そして、猫たちは布団の中に入って添い寝をしている。


 モフモフに囲まれて幸せだ。よし、二度寝しようニコとハクを抱え込んで抱き枕にして再び眠りに入る。


「ニャー」「ミャーミャー」「ニャウ」『カジカジ』『ふみふみ』


 寝ていると猫たちから総攻撃を受けていた。


 何事かと思って起きると、お腹が空いているようで俺を呼んでいたのだ。この屋敷の主の俺が食卓に行かないとご飯が始まらないことを覚えた猫たちは、お腹が空いたようでみんなで起こしにかかっていたようだ。猫たちの催促を受けて食堂へ向かう。


 俺の頭には定位置になったニコ、腕の中にはこれまた定位置になってるハク。俺の後ろには、猫たちがニャーニャー合唱をして並んでついてきていた。最後尾にギンとクロがついてきている。


 朝食を食べているときに気付いたが、シェリルがギンとクロの世話をしており、大分懐いている様子だった。何か俺より懐くなんてことはないよな? ないよな?


 お腹がいっぱいになった猫たちは我先に、食堂から出してもらい屋敷の中を自由に散策して遊びだした。たまに窓から脱出して外で遊ぶこともあるが基本は家の中で走り回ったり日向ぼっこをしたりしている。がっつり寝るときは、俺の部屋に戻ってきて布団の中に潜り込んでいるようだ。


 最近は、娘たちも予想以上に強くなっていたので一緒にパーティーを組んで冒険に出ることもふえてきた。今日は、年中組のパーティーについて依頼をこなすために一緒にギルドへ来ている。


 ピークより遅い時間帯だがいつもと違い、いそいそ、そわそわしているような雰囲気だった。


 何かあったのだろうと思うが、発表もされていないし変に首を突っ込むのも面倒なので無視して依頼を物色する。


 俺がCランク、娘たちがDランクなので本来パーティーランク的にはDになるのだが、俺と娘たちの実力を考慮してもらいCランクパーティー扱いであるため、Cランクの依頼まで受けることが可能なのだ。


「これなんてどうかな?」


 手に取った、【獣道の森の定期調査】を娘たちに見せてみた。特に異論はなくこれに決定した。受付には一人しかおらず少し列ができている。娘たちと獣道の森の敵について色々話をしていた。基本的には、獣系の魔物しか出ないというのはやはり本当のようだ。


 半人半獣の様な魔物は獣道ではなく亜人の森にいるようなので、本当に獣だけだということを聞き、今までとは戦闘の仕方がだいぶ変わってくることを相談した。


 モフモフを倒すのは若干気が引けるが、味方でもないモフモフを愛でる必要もないと割り切り、初の獣道の森のクエストを受けようとしている。


「あら、シュウ君? クエストを受けに来たの?」


 十五分くらい経って、やっと順番が回ってくるころになって、奥からミリーが出てきて受付業務を開始した。次で待っていた俺たちに声がかかったようだった。


「どうも、ミリーさん。今日は獣道の森の定期調査の依頼を受けようと思ってきました」


「え? それまだ張られてたの? 今はあの森危ないしな。でも、シュウ君たちなら実力的にも問題ないかな? でもでも、パーティーランク的にはB以上にする予定だったはずだし……ゴニョゴニョ」


「あの~、ミリーさん?」


「へぁ? あ~ごめんなさい。今、獣道の森が変性期になったらしくて、魔物たちが少し強力になっているんです。そこに上位の魔物まで出たらしいと報告があったので、Bランクパーティーに調査に出向いてもらおうと検討してるとこなの」


「どうですか、じゃぁ受けられないですね。違うの探しますね。亜人の森にでも行くか? この前途中まで馬車で入れるようにしたから、その続きをするのもありかな」


「シュウ君、ちょっと待ってもらってもいいかな? 獣道の森の調査は早めにしたいので、指名依頼って形でお願いすることになるかもしれないから、ちょっと待っててほしいの」


 結構大変な状況らしい。実力的にもBランクパーティーに負けることはないので問題ないし。マップ先生を使えば安全地帯を確保することも容易いので休憩に関しても何の問題はない。


 どうせなら娘たちをみんな連れていくか? シルキーたちも連れて行けば寝る場所や食事についても気にする必要がなくなるし、それもありかな?


 シルキーたちは家精霊としての格が上がったようで、【ハウスメイドの嗜み】という一見してどういう効果があるかわからないスキルを手に入れていた。詳しく聞くと、家具や調理器具・食材を収納できる空間魔法みたいなものだ。


 全員同じくらいのサイズで大体、ISO規格の45ftコンテナ2個分程の量が収納できるようだった。ちなみに収納の腕輪は、DPで召喚して容量拡張した状態でコンテナ1個分のサイズである。収納の腕輪の上位になる収納のカバンは一気に容量が増えてコンテナ6個分のサイズだった。


 ただ収納のカバンは収納スペースを確保するだけのアイテムであるため、対になる収納の指輪を使わないとカバンの中から荷物を出し入れできないのだった。


 普段きているわけではないが、戦闘メイド服にカバンは似合わなかったのでみんなには、DPで出した収納の腕輪をプレゼントしてある。もちろん、使用者の登録はしてある。


 どうせなら全員で行くか。リリーに伝言を頼み、シルキーたちに食材と食器や調理器具の準備、年少組・年長組は馬車の準備とダンジョン農園に食材を取りに行ってもらい、カエデには装備の点検をしてもらうことにした。


 ちなみに馬車は、DPで出している。召喚する際にカスタマイズができるようになっており、幌馬車でサイズは4畳くらいでタイヤはゴム製、ダンパー装備済み、ベアリング装備済みの物を、各組に一個ずつプレゼントしている。


 各組の幌馬車は特徴的で、年少組は可愛い小物やクッションを置いてある。年中組は、長距離の移動でつかれない様に、座り心地のいい魔物の革を敷いておりシンプルにまとめていた。


 年長組は冒険者としての実用性を考え、自分たちでカスタマイズし馬車の屋根を外へ広げれるようにしてあり野営の時のベースキャンプ替わりにもなるようにしていて、すぐにたたむことも可能なようになっていた。


 馬車をひく馬はもちろん魔物で、ウォーホースLv五十だ。スキルも各種覚えさせたものが一匹で引いている。これももちろん各組に一匹ずつ召喚している。


 普通の馬の数十倍の力があり耐久力も持久力も高いため、かなり重宝している。野営のときは馬車から離して周りを警戒させることも可能である。Cランクの魔物位であれば簡単に蹴散らしてくれるのだ。


「お待たせしました。ギルドの方からシュウ君への指名依頼をさせていただきたいと思います。獣道の森の調査、可能なら原因の究明・排除をお願いしたいと思います。報酬は、まだ決まってはいませんが最低でも一〇〇〇万フランは出しますのでよろしくお願いします」


 一〇〇〇万フランか? どのくらいの期間拘束されるか分からないが、一人頭四十万フラン金貨四枚か。二十五人で行くから一人当たりの報酬が下がるだけで、一回のクエストとしては破格の報酬だろう。


「えっと、パーティーのメンバーは何人でも問題はないんですよね?」


「もちろんです。シュウ君が三パーティーを掛け持ちしているのは周知の事実ですので、あえてシュウ君個人へ指名依頼をして、ついていくパーティーは自由にできるような形をとりました」


「なるほど、じゃぁ三パーティー全部で行ってきます。人数は多くなりますが、ある程度の物量には対抗できるようになりますし、野営を考えるとある程度の人数がいた方がいいと思うので連れて行こうと思います」


「実質AからBランクパーティーが三チーム、今の状況でこれ以上の編成はありませんね。ここに獣道の森の情報が書いてある資料です。出てくる魔物が違ったり上位種高ランクの魔物が出てきたら情報収集。可能なら討伐をお願いします」


「了解しました。準備ができ次第、獣道の森を調査してきます」

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