第49話 モフモフ強化

 メルビン男爵の屋敷に襲撃をかけて数日後、メルビン男爵の屋敷に賊が入った話は噂のかけらも流れなかった。外に漏れない様に工作でもしたのだろう。


 何せ騎士団長はぼろ雑巾の様になっており、騎士団の面々も子供にちぎられては投げられていたので表沙汰にもできないだろう。何せ最年少のシェリルにボコボコにされてたもんな。プライドがへし折れた奴もいるんじゃねえかな?


 俺の家族に手を出したんだ、その位の報いを受けるのは当然だろう。次はないけどな!


 目覚めてボーっとそんなことを考えていると、今日はコバルトが朝食の準備ができたと呼びに来た。返事をしてすぐ向かうことを伝えると、準備して待ってます、と食堂の方へ向かっていった。


 最近、寝て起きると胸やお腹のあたりが重いのだ。理由は簡単、胸の位置にエレメンタルスライムのニコが居座り、フェアリードラゴンのハクは、お腹のあたりを陣取ってニコを枕にするように頭をのせているからだ。


 スライムは寝るのだろうかと思って何となく問いかけてみると、体を使って○を作っていた。話を聞いていくと寝なくても問題ないが趣味や娯楽として睡眠をとるらしい。意外に贅沢な趣味だ。


 ニコとハクの頭を撫でながら、体の上からどかすと体をつかって抗議をしてくるが、飯が食べられなくなると脅すと、大人しくなるのだった。


 着替えて食堂へ向かう。ニコは頭の上に乗せて、ハクは抱いている。食堂に入ると、抱いているハクを見て、俺の見えない位置で羨ましそうな顔をする娘たちがいたようだ。


 フェアリードラゴンの朝食は肉や魚が中心である。ドラゴンというだけあってやはり肉食が中心になるようだ。それに代わってエレメンタルスライムは、本当の意味で雑食なのだが、俺と同じ食事をとりたがるので、ビュッフェ形式の朝食を取り分けてもらってそれを食べている。


 体が透けているので食事風景を見たらグロテスクかと思いきや、体にふれた位置で消化しているようで体の中に取り込んで消化するわけではないようだ。正確には、取り込んでもできるだろうが動かないご飯を相手にそこまでする意味がないと俺は考えている。


 可愛らしい、ニコとハクを俺やカエデ、娘たちがホクホクした顔で見ている。ペット部屋という名の癒され部屋みたいなのも悪くないかな~。地球の猫とか召喚できたし、何匹か召喚してみようかな?


 あまり大きくない猫みたいな魔物もいないかな? やっぱり少し大きめの狼もモフモフ枠としては外せないよな、夢が広がるな。


 娘たちに、モフモフ系のペットのアンケートをとった結果、二十二人中二十人が是非飼ってみたいとのことで賛成してくれた。残りの二人は、猫の話を聞いてこの世の終わりの様な顔をして、「私たちじゃダメなんですか?」と言ってきた。


 これでわかると思うが、そういってきたのは、キャットピープルの二人、ライラとソフィーだ。


 お前たちは、ペットじゃなくて家族だから意味合いが違うことを告げると安心したような顔をするが、二人揃って『ご主人様のペットなら喜んでなります!』というものだから、デコピンをくらわせておいた。


 とりあえず、好きな猫を召喚してみよう。あいうえお順なのか。えっと、アメリカンショートヘア・スコティッシュフォールド・ヒマラヤン・メインクーン・ラグドールってとこだな。予定で5匹くらいと思ってたけど、召喚欄をみて思い出した好きな猫を呼び出すことができた。


 猫部屋を作るにしても屋敷の中にスペースがないな。俺の部屋(素敵部屋じゃないほう)を猫部屋にしよう! 娘たちにもこのエリア解放するか、面倒を看てもらわなきゃいけないしな。


 さて次だ! ペット枠の猫は召喚したので、従魔としてのモフモフを召喚しよう。候補は、狼か狐ってところだな。


 どっこにいるのかな~


 召喚のリストを動かしていくと、ウルフの文字が目に入った。この召喚リストは不便で召喚できるようになった順で並んでいるのだ。まぁ、ランクの低い魔物から並んでるということだ。種族毎とかに分けてもらいたいな、大雑把でもいいからさ。今度ツルペタ女神に文句言ってみるか。


『ツルペタで何が悪いのさ!』


 おっと? 今チビ神が覗いてるのか? おい、チビ神! 召喚リストのカスタマイズとかできねえのか? 種族とまではいわないからある程度の分類にわけれないのか?


『え~そんなめんどくさい事するわけないじゃん! でも、自分でカスタマイズできるようにしてあげるわ。ありがたく思いなさいよ! それと、ツルペタでもいいじゃない!」


 お~カスタマイズできるようになるのは助かるな。チビ神のくせにたまには使えるじゃねえか! 後ツルペタがダメと言ってるわけじゃない、慎ましい胸も悪くないと思っているぞ! 前も言ったけど、俺は大きすぎるより小さい方が好きだ。


『そんなカミングアウトいらないって言ってるでしょ! それにたまにじゃないわよ! あなたと話してると調子が狂うわ。それより早く私を楽しませなさいよね、周りの神たちに馬鹿にされるんだからね!』


 気の長いゲームをしてるはずなのに、ネチネチ嫌味を言われてるんだろうか? 娯楽が少ないからこそ、いじれるところがあればいじるんだろうな。


 よっし、カスタマイズしゅうりょ~


 魔物のウルフと言っても色んな種類がいるんだな。色んなカラーのウルフが……って何でウルフレッド・ウルフブルーなんだ!? 戦隊モノのカラーじゃないんだからさ、後ろに色つけるのはやめようぜ。


 他には、シルバーウルフやシャドーウルフってとこか、フェアリードラゴンやエレメンタルスライムみたいなレアっぽいオオカミはいないな。


 シルバーウルフとシャドーウルフにするか、白と黒の狼を両脇に歩かせる。うむ、悪くないな。問題は、毛の柔らかさだ! モフモフするのに毛が硬いとかだったら、萎えてしまうので柔らかいことを祈って召喚!


 YES! 柔らかい綺麗な毛並みだった。サイズは一メートル位で凛々しいのに、甘えん坊の様に顔をこすりつけてくる、たまらんな。


 猫たちのために食堂と部屋には猫用の扉もつけてあげよう。俺の部屋と娘たちの部屋にはキャットタワーも置いて、爪とぎ出来るように丸太も部屋に置いてあげてっと。他には、猫用の草も育ててあげないとな。


 ドリアードたちに育ててもらおう。餌は、シルキーたちがダンジョン海の魚や野菜を手間暇かけて猫用に調理してくれた特別製のものを準備してもらった。シルキーたちは仕事をふられて、艶々した顔をしていたので無茶は言ってないと思いたい。


 仕事ジャンキーが多いな。娘たちも休日は無くてもいいとか言ってたし、シルキーたちは料理や掃除を俺がすると言えば絶望した表情になるし、ドリアードたちはもっと育てる物はないのかと聞いてくるし、過労死しないでくれよ。


 ベッドに横になりながら、手元に来ていたニコを手でかまいながら考えにふけっていると、いつの間にか召喚したモフモフ+ニコがベッドの上で俺を取り囲んでいた。素敵部屋に負けない位の癒しの空間になっていた。

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