第43話 携帯食決定

 帰り道にカエデとギルドでの事を話していた。


「みんな強くなってたな、特に最年少のシェリルが攻撃スキルを使えるようになってたのには驚いたな」


「あれ知らなかったんだね。私は装備の調整や手甲の使い方を見極めるのに度々あの娘たちの所へ足を運んでたから知ってたけどね。体術だけでいえばシェリルちゃんが一番強いんじゃないかな? ただ地力の部分も考えるとシュリには勝てないと思うよ」


 それはそうだろう、シュリは英雄症候群と呼ばれている呪いによって、高い身体能力と引き換えに燃費の悪い体なのだ。


 参考までに今のシェリルとシュリのステータスを比べてみる。


名前   シェリル

種族   人間(シュウの奴隷)

レベル  10

STR  673(73+600)

AGI  721(121+600)

VIT  654(54+600)

INT  646(46+600)

MND  632(32+600)

DEX  746(146+600)

LUK  804(204+600)


名前   シュリ

種族   人間(シュウの奴隷)

レベル  14

STR  1321(721+600)

AGI  1282(682+600)

VIT  1515(915+600)

INT  654(54+600)

MND  682(82+600)

DEX  1324(724+600)

LUK  774(174+600)


 この差である。シュリとだと素の力比べで勝てる気がしない。能力向上スキルが無くても、レベル十四なのにCランク上位の力があるのだ。それに能力向上スキルが加わって、BランクからAランクのステータスになっている。


 娘たち全員が一ヶ月やそこらで、Cランクで通用するステータスになっていることが本来ならおかしいのだ。


 ただ言えるのは、Cランク上位に来るような人間は、そのほとんどが能力向上スキルを身につけているため、DランクとCランクには大きな壁があり能力向上スキルを身につけているかがカギになってくる。


 Sランク以上の人間は、シュリみたいな特殊な人間か、才能の塊いわゆる天才の部類の人間か、異様にレベルが高い人間のどれかだと思う。そこまでいくと、ステータスでは計り知れない何かがあるのを付け加えておく。


「確かにシュリは強いよな、肉体の性能が半端じゃないからな。ああいった人間がSランク冒険者になるんだろう。ステータスを見る限りじゃ、スキルなしで戦ったら勝てる気がしないよ。あの肉体性能を活かせるっていうのもすごいよな。英雄症候群って力以外にも戦闘系スキルに補正がついてるんじゃないかと思えてきたわ」


「私も、シュリとだと同じレベルの装備で戦ったら勝てる気はしないわね。本気の装備であれば装備の差で勝てると思うけどそれ以外に勝ち目がない気がするよ」


「少し食べる量が多いだけで俺からすればその食事だって問題にならないし、それが気にならないほどに強いから本当にいい出会いだったと思う。他の娘たちも俺の予想を裏切って、自力でなりたい役割のスキルまで覚えたしビックリだよ。


 その中でも、自力で攻撃スキルまで使えるようになってるしな。才能の塊なのでは? と思ってしまうよ」


「あの娘たちのやる気は全部、シュウの為っていう動機があるからね。目的があるとないでは修行とかの効果も大きく変わってくるもんだよ」


「いつも思うけど、娘たちにそこまで慕われるというか、よく思われている理由がいまいちわからんのだよな」


「シュウ、前に言ってるけど、あの娘たちはシュウが引き取らなかったら、どこの誰かも解らない男たちの慰み者になるのが普通だったんだよ。時間も経つとどんどん値が下げられて、娼館の経営者が買ってったりするのさ。


 それに対してシュウは、おいしいご飯、暖かい寝床、自分の道に選択肢を与えてくれて、さらにはお風呂も毎日入れて、キレイな洋服も着させてくれてるんだよ」


 俺の様子を見ながら更に言葉を続ける。


「両親が共働きで自分も働いていても、ここまでの贅沢はできないよ。やりたいことやらせてくれて衣食住の保証があるんだから、シュウのために頑張ろうと思うのも無理ないと思うわ」


「そういうもんなのかな? 俺にはよく分からんわ。まぁ今日は、娘たちにとっては初めての休日だからな楽しんでくれるといいな」


「あ! それだけど、どこかのお店の下働きでも、本来休日なんてものはないのが当たり前だからね。普通に生活してたら自由になる時間なんて、夜暗くなってからだし。次の日も朝早いからは速く寝ないといけないしね。一人金貨一枚十万フランは多すぎじゃない。一家四人家族で月金貨三枚もあれば贅沢できるわよ」


「それだけど、あげすぎたとは思ってるけど、残ったら自分で管理するように言ってあるし、勉強のためにもいいかなって思ってる。みんな可愛いからついつい甘くなっちゃうんだよね」


「可愛いのはわかるけど、甘やかしすぎは駄目よ。それに私は甘やかしてくれないじゃない? いつもベッドで……痛いってば!」


 また不穏なことを口走ったのでアイアンクローをして強制的に話を止めた。


「カエデには、希望した素材出してるだろ、それで今はよくないか。それともカエデも街をフラフラするか? 金ならあるぞ」


「冗談よ、街をフラフラするより家でのんびりしている方が落ち着くからいいわ。くつろぎたくなったら、お風呂に入りに行くしね」


「あのお風呂はいいもんだろ? サウナの良さももっと分かればカエデも玄人だ」


「何の玄人なんだか」


 この後は他愛のない話をしながら拠点へと戻っていく。


「スカーレット帰ったぞ~」


 奥からふよふよとスカーレットが飛んできた。


「お帰りなさいませ、ご主人様」


「帰ってきた時に迎えてくれる人がいるっていいな。言ってた通り他の娘たちは、お昼外で食べてくるはずだから俺たちの分だけでお願い。リクエストとしてはカレーか焼きそばが食べたいけどどっちかできる?」


「DPで材料を出せますので、どっちでも作る事ができます」


「ん~焼きそばでお願い! あと、キュウリとタコとかの酢の物がほしいな。もやしのナムルとかも食べたいな」


「お安い御用です。今日はご主人様の注文ですから張り切って作りましょうか、麵の方はDPで出しますが、研究して自作できるようにします。楽しみにしててくださいな」


「わがまま言ってすまんな、楽しみにしてるよ」


「いえいえ。そういえば、ご主人様に頼まれていた携帯食ができましたので、試食してもらっていいですか?」


「早いな、どんだけ研究に熱心になってるんだか。ちなみに何作ったの?」


「そうですね、ご主人様の好きだったと言っていたあれのチーズ味と、後は試作したS○YJ○Y(伏字になってねえ!)を作ってみました。食感は苦手な娘が多かったので、変えていますが味は近くできたと思います」


「カエデ一緒に食べよう、これで完成なら色んな味を作ってくれると嬉しいな」


「もちろん他の味も作りますが、まずはご主人様にOKをだしていただかないと、次のステップにはいけません。食堂の方でお願いします。アマレロ、試作品持ってきて」


 食堂につくと、2列に5皿並んでいた。どうやら手前がカロ○ーメ○トをベースにしたもの、奥がS○YJ○Yをベースにしたものらしい。見た目もだいぶ変わっていて俺には違和感しかない。少しずつ試食する。


 手前の一から三は少しパサッとしてて本物に近い味わいだが、四と五は少ししっとりとしていて口の中にパサパサ感が残らない。保存の観点を考えると前者がいいのだが、食べやすさを考えると後者を推したくなってくる。


 収納系の道具に中に入ってる時は時間が止まる、みたいな機能があれば後者が携帯食になるんだけどな~。


 前回確認したときは、そんな機能なかったがレベルを上げてから見てなかったので収納系のアイテム欄をポチっとな!


【機能拡張NEW!! 時間停止・時間加速・収納量UP・使用者登録】


 うむ、イージーモードバンザイ! ここでも運三セットが頑張ってるんじゃないだろうかと思うほど都合のいい流れだ!


「スカーレット、手前のやつは全部おいしかったよ。保存を考えると前の三つなんだけど、食べやすさを考えると残りの二ついいね。今召喚リストで確認したら、収納系のアイテムに時間停止の機能拡張が増えてたから、食べやすい後者の二つにしたいんだけど、娘たちの評価はどうだった?」


「ご主人様の評価とほとんど変わらないですね。食べやすさを考えると保存性が犠牲になってしまい、苦労したのですが時間停止があるのでしたら四と五にしましょう」


 スカーレットと話をしてるとカエデから、


「時間停止があるなら、温かい作りたてのやつ入れとけばいいんじゃない?」


「その気持ちは解るけど、冒険者やってたんだから分かるだろ? 歩きながら食べられる栄養価の高い食事も、お腹にたまり過ぎない食事も大切だろ? いつも止まって食べれる状況とは限らないし、何よりシュリの間食用が発端だからな。シュリが食べてるときに、毎回止まるなんてこともできないからな」


「そういえば、そんな趣旨で作ってたの忘れてたわ。最近は食事に困ることがなかったから、すっかり忘れてた。シュウに助けてもらったのも、お腹空いて捕まったところだったわ」


 続いて奥のS○YJ○Yをベースに作った携帯食は、なぜか美味くなかった。見た目はそこそこイケてたのに駄目だった。初めのが美味しかっただけに残念ではあるが、カロ○ーメ○トをベースにした方を携帯食に採用した。


 この後、シルキーたちが食感を少しずつ変えながら何種類もの味を作り出すまでにさほど時間はかからなかった。

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