第36話 シュウの思い

 夕食も終わり、再び自由行動になる前に明日の予定を娘たちに伝えておく。


「じゃぁ、明日からは基本的な戦闘訓練をしてもらうから無理のない様に頑張って。それと明日、俺のペットを紹介するからみんな可愛がってあげてくれ。じゃぁ自由行動開始、寝る前までにもっかいお風呂入ってから寝るように!」


 全員が声をそろえて返事をした。


「そうだカエデ、ちょっと頼みたいことがあるんだけどいいか?」


「ん? 頼みたいことって、夜伽ならお風呂入ってくるk……イタイイタイ、耳からなんか出ちゃうからやめて!」


 このやり取りも何か日常って感じがするな。


「冗談だったのに」


「その冗談に乗ったら、もちろん本当にするつもりだったんだろ?」


「え? あたりまえでしょ」


「胸張っていうことじゃねえ! それにそれは冗談とは言わん。頼み聞いてくれないのか?」


「そんなこと言ってたわね、できると踏んでるから頼むと思うんだけどどんな内容?」


「明日から娘たちが戦闘訓練するだろ? 一ヶ月くらいを目途に鍛えるというか訓練するんだけど、その期間で問題が無ければ皆には本格的に冒険者の活動へ移行しようと思ってるわけだ。卒業? のプレゼントとしてお揃いの防具を準備してほしいと思ってるんだ」


「ん~~、プレゼントは分かったけど、前衛・中衛・後衛に同じ装備準備するの?」


「それなんだけど、付与? エンチャント? で前衛・中衛・後衛の特色にあったものをつけられないか?」


「はぁ? 確かに触媒があれば、見た目が同じでも職業にあったエンチャントつけれるけど、触媒も無しにエンチャントなんてできるわけないじゃん。そこまで高い物じゃないけど、ここらへんじゃ手に入らないものが多すぎてできないんだよ」


「あぁ、触媒なら準備できるからエンチャントを頼んでいるわけだけど、お願いしていいか?」


「え? 準備できるの? 触媒があったら、あんなことや、こんなことも……ジュル」


「おぃ、心の声まで漏れてるし涎もたれてるぞ」


「おっと、いけない。どんな防具で統一するつもり?」


「ここは俺の趣味を全開にさせてもらう予定で、戦闘用のメイド服を仕立ててほしい」


「メイド服? そんなので戦闘させるのか?」


「まてまて、例えばタンクのものには裏地にプレートを仕込んで軽量化のエンチャントとかを考えてるんだがどうかな?」


「そういう事ね、確かにタンクに適した防御力中心のプレート仕込みと重量軽減、アタッカーには防御力とスピードを確保するために魔物の革などで補強と敏捷性に影響のあるエンチャントを、魔法使い用に負担軽減や魔力向上エンチャント、弓には命中力補正とかなら奴隷の娘達の戦力アップが見込めるかな。そこまでポンポン使ってたら触媒足らなくならない?」


「そこは安心していいよ、俺のレベルが上がって召喚できるアイテムや魔物が増えてその中に、エンチャントの触媒になるアイテムが追加になってたから、DPさえあればいくらでも出せるよ。って言っても高価な触媒はDPの桁が違うから安価なものでお願いしたいけどね。


 一応ひな型になるメイド服をデザインしてもらって、明日からの戦闘訓練の様子を見ながら補強の素材とエンチャントの種類を検討していこうと思ってるんだ」


「どうしてそこまで奴隷の娘たちに、いい装備を与えるの?」


「なぁカエデ、あの娘たちは確かに奴隷だけど、奴隷だからとか言うのをやめてくれないか? カエデの事はそれなりに好きだけど、嫌いになりたくないからお願いだ」


「ちょっとシュウ、何でそんなに殺気をたぎらせてるの? 奴隷のことを奴隷って「カエデ!」」


「確かにあの娘たちの立場は奴隷だけど、所有者の俺があの娘たちを奴隷扱いしてないのに、何でカエデがあの娘たちを奴隷扱いしてるんだ? 立場を明確にするって意味で大部屋にしてはいるけど、個人的には個室を与えたいと今でも思ってるよ。


 あの娘たちが望むかは別としてね。あの娘たちはこれから俺の仲間になる予定だぞ、見下すのは辞めてくれるよな?」


「分かったから、その殺気とめてくれないかな。装備を含めれば私の方が強いはずなのに、その黒い殺気みたいなのにあてられると、何か存在が削られるような気がするからお願いだからやめて」


「分かった、あの娘たち研修期間みたいなものだから、一ヶ月後までには仲間だと思えるように、見下すことがないようにしてね」


「忠義の儀式を行った相手の不利不快になるようなことはできないからね。問題はないけどあの娘たちにそこまで肩入れする理由だけ聞いてもいい?」


「ん? 俺の住んでた国には奴隷っていう制度は無いんだ。奴隷がこの世界でどういう扱いか知らないけど、仲間として活動していく相手を下に見ることはしたくない。


 この世界に奴隷がいる事は否定しない。あの娘たちがご飯を食べてたときに思ったことがあるんだ……この話はこれで終わり。俺は望んでいないってことだけだ」


 少し悩んで、


「俺の身を守ってくれる親衛隊っていうと変だけど、一緒に活動する仲間だから可能な限り傷付いてほしくないんだ。だからいい装備を渡す。おかしなことじゃないよな?


 工房も必要だと思うから、DP溜まったらすぐ増設する。それまでは間に合わせでお願い。今日は、DPの召喚リストでもみて服のデザイン考えてもらっていいか?」


「分かったわ、最高に可愛くて性能のいいものを作るわ。戦闘メイド服? っていえばいいのかな、それはシュウといるときに着せる物? それとも普段から着せるつもり?」


「あっ! 普通の冒険者の装備や服もないと駄目だよな。そこらへん何とかできる?」


「エンチャントしないなら、普通にタンクはプレート系、アタッカーや中衛は革系、魔法やヒーラーは布系にすれば、補正はつけやすいわね。さすがに23人分となると時間かかるから大体一週間はほしいかな。戦闘メイド服は、一ヶ月は難しいかもしれないけどできる限り早く作っておくわ」


「自動修復とか汚染防止のエンチャントはつけると他が厳しくなるか? 可能なら、サイズ自動調整とかも着けれたら嬉しいんだけどな」


「ん~普段使いするのには今言った中の2個までかな? 3個全部つけると予定している素材の関係上、攻撃やステータスに影響するエンチャントが、つけれなくなっちゃうからね。戦闘メイド服の方なら、素材もいいの使う予定だから、ギリギリだけど全部エンチャント入れれるはずね」


「そっか、普段使いはいつまで使うかわからないし、仕立て直しか戦闘メイド服で対応するか……そこらへんはどっちにしても後かな。もちろん見た目が可愛いやつでお願いな。可愛いは正義! だからな。カエデもたまには可愛い格好したら?」


「もちろん可愛く作る予定だよ。私も可愛い格好したらおそってくれる?」


 カエデにチョップをくらわせてから


「私もってなんだよ、誰もおそってねえし! 可愛い娘は見てるだけで癒されるから、それでいいんだよ」


「ちぇっ……っと、シュウに鷲掴みされる前に退散します」


 不穏な空気を嗅ぎつけたカエデは、驚くような速さで自分の鍛冶場へ逃げて行った。

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