第13話 とりあえず方針が決まった
カエデの部屋をとるためにおばちゃんに声をかける。
「おばちゃん、この子を宿に泊めてやりたいんだけど部屋空いてる?」
「あらあら、美人さんを連れ込んじゃって、おませさんね。二人部屋が空いてるわよ」
「そうじゃなくて、一人部屋が空いてないかってことだよ。今日たまたま助けてしばらくパーティーを組むことになったんですよ」
「そうだったの、えっと、隣の部屋が空いてるわね。そこでいい?」
「部屋が違うから問題ないね。カエデはお金もってるか? 落としたりしてない?」
「問題ない、腕輪に入ってるから大丈夫。シュウと同じだけ泊る予定ですけど、いくらかかります?」
「シュウ君は、後五泊だから朝食と夕食込みで15000フランになります」
「思ったより安いね。15000フランね、今日からよろしく」
「助けた後に食ったサンドイッチは、ここの宿特製だったんだぞ」
「っ!! あれは確かに美味しかった。また食べたいと思ったくらいね」
横を見ると涎を垂らさないか心配になるくらい緩い顔になっていた。
「そういってもらえると、丹精込めて作ったかいがあるってもんだね」
「しばらく泊ってれば、また食べられるから期待しとけ。他の料理も美味いんだぞ。部屋で今後の方針を決めようか。おばちゃん、また飯の時によろしく」
「他のご飯も美味いのね、楽しみにさせてもらおう」
今後の話し合いをする為に俺の部屋で話をすることにする。
部屋に入るとカエデの第一声が
「シュウもなんだかんだ言って男の子なのね、いきなり部屋に連れ込むなんて……」
少し照れながら含み笑いをしているカエデの頭をはたき椅子へ座らせる。
「痛いな~、話に乗ってくれてもいいのに、もちろん押し倒してもOKよ?」
再度、頭をはたき話を進める。
「今後の方針としては、お金を貯めながら経験値を稼いでいく予定だな」
「お金? コロニーでもそんなこと言ってたわね。いくらくらい貯めたいの?」
「そだな~、400万は最低でも必要だけど、色々考えると500万は貯めておかないと後々大変になるかなって考えてる」
「ふ~ん、そんなものなのね。助けてもらった礼もしていないし、そのくらいなら私がだそう」
「は?」
「だから、500万位なら何とかなるよ」
「Bランクってそんな大金ポンと出せるもんなのか?」
「それは無いだろうね、私は冒険者の稼ぎはほとんどないからね。刀匠と呼ばれているのは聞いたよね、特注武器を作った代金で生活しているわね」
「そういうものか、でも俺が勝手に助けただけだからそれは受け取れないな」
「そんなこと言わずに受け取ればいいのに~」
「強要するならパーティーを解散しよう」
「わかったわ。お金稼げる依頼受ければいいよね」
「見事な変わり身だな。俺のペースでやっていきたいからあまりせかさないでほしいな。ここの街を中心に活動していく予定だからよろしく。後、依頼の報酬やアイテムの買取のお金の配分どうするか? 半々にするにしても実力が釣り合ってないしな、どうしたもんだかな」
「ん? 全部シュウのものでいいんじゃない? 私お金に困ってないし武器や防具も自分で手入れできるし、シュウのも見てあげれるよ?」
「さすがに全部俺に入るのは、悪い気がするんだ」
「う~ん、じゃぁこうしようか。シュウは明らかにドロップ運がいい気がするから、武器や防具に使えそうなアイテムが出たら譲ってほしい。私のカンが、お金で得られないような貴重なアイテムが出るってささやいているのよ」
「しばらくはその方針でいこう。ただ、一つだけ条件を飲んでもらう。基本的に生活する上での必要経費は俺が払う」
「宿代や食事代? それでいいなら私はかまわないよ」
「お金が貯まるまでは依頼を受けてこなすか、森やダンジョンに入ってドロップ狙いで稼ぐ!」
強引に方向を示しこの計画で進んで行く事とした。
カエデの事を聞いたり俺の過去(作り話)を話したりして過ごした。
カエデの特技は、ドワーフらしく鍛冶がかなりの高ランクだそうだ。他にも極東の血が流れているため、物作り全般が得意であるとのこと。自分の武器防具は自分で作り、使いながら調整をしていき自分が一番使いやすい状態に持っていくらしい。
その一つの完成系として俺が取り返した刀の『迷刀・霞』だったようだ。戻ってきたことを本当に喜んでおり、思い出したカエデがすごい勢いで俺に抱き着き頬にキスをしようとしたので、全力で頭を押しのける。
好みの子にそういうことをしてもらうのは嬉しいんだけど、今のタイミングではちょっと受け取れない好意である。
俺の過去(作り話)の話は、名前もない村から出てきて冒険者に登録したのがここ最近であることを話した。村にいた時に憧れていた、自分の家を持つという夢に全力で向かっていることを話した。
聞いていたカエデは「私たちの愛の巣をもうほしがるなんて、大胆なんだから!」と口をはさんでくるのでスルーしておいた。今日知り合ったばかりの好みの女の子を、1日に何回たたいているのだろう……
地球だったら絶対あり得なかっただろうな。こんなに話しやすい女の子が近くにいなかったしな、それに好みのタイプなのに緊張せずに話せるんだから貴重だ。
本当に信用できる子だったらダンマスであることを教えて俺の手伝いをしてもらってもいいかな? 今はいいかもしれないけど、ダンジョンにこもるわけじゃないならずっと一人でいるわけにもいかないだろう。後は、ペットポジションのもふもふもほしいよな~。
いろんな話をしていると、
「みなさんご飯の時間ですよ~」
と、おばちゃんの声が聞こえる。
「よし、飯食いに行くか。今日は何かな、お昼軽くしか食べてないから、お代わりもらえるといいな」
「うぅ……すいません。私が食べてしまったばっかりに、申し訳ない」
「ごめん、そういう意味じゃないんだ。気にしないでくれ」
「おばちゃん! 食べにきたよ。今日はお腹空いてるから大盛にしてほしい。いくら払えばいいかな?」
「シュウ君早いわね、この前の新作の件もあるから気にしないでいいわよ」
「ほんとですか? 今日もいっぱい食べさせてもらいます」
今日は、ここの宿に泊まって初めての食べた物が出てきた。出てきたのはシチューだった。料理の名前を聞いてもシチューと言っていたので、過去に呼び出された地球人がもたらしたものじゃないかと考えている。
日本で食べていたシチューとは違うが、これはこれでとても美味かった。何を使ったらこんなに美味くなるのだろう?
「おばちゃん、今日のシチューってミルクか何か使ってる?」
「物知りね、今日のシチューにはビッグホーンのミルクを使っているよ。気性の荒いモンスターの牛だけど、そいつからとれるミルクでシチューを作ると濃厚な味になっておいしいんだよ。パンにも合うだろ、たんと食べな」
カエデも口にあったらしく、お代わりもして俺と同じくらい食べていた。
「カエデは、料理作れるのか?」
ふと思い聞いてみると、顔をそらしながら
「作れることは作れるけど、食べれるか保証はできない」
ダークマターを作ってしまうタイプの人らしい。物作りが得意でも、料理は駄目なようだった。お腹を空かして倒れるくらいだから期待はしていなかったが。
自分の家を持っても自分で料理作るしかないのかな? 料理の得意な魔物とかいるかな?
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