第12話 ランクが上がった

 しばらく見つめ合った後、声をかける。


「なぁ、普通のパーティーって男女で一緒の部屋には泊らないだろ? どうして『えっ?』なんて言っているんだ?」


「私はいつでも受け入れる覚悟はできてるんだし、一緒に泊れば夜這いもできるし、反対に襲ってくれてもかまわないわよ?」


「かまわないわよ? ってかまうわバカ! 俺だって男なんだから少しは気を使ってほしいんだが」


「それはたまっちゃうってこと? 気にしなくても私で解消できるわよ?」


「何言っても無駄そうだな。お前さん、ちょっとずつ性格変わってないか? 何か時間が経つ毎にグイグイ来る気がするんだが」


「私も意外に思ってるわ。シュウに尽くせるなら何でもできる気がするわね。私も知らなかったけど、これが本当の私なのかもしれないわ」


「色々とおかしいだろ。とりあえず、パーティーは組むけど部屋は別々だぞ。俺は冒険者になって間もないし、田舎から出てきたばかりで常識に疎いところが多いから、色々勉強しながらお金や経験値を稼いでるところさ」


「え? 冒険者なり立てなのにあんなに強いの? てっきり私と同じで中級者位だと思ってたのに……冒険者になる前から強かっただけかな」


 カエデが不思議なことを言っている。俺のレベルは今回のコロニー殲滅で26まで上がってるが、お前さんのレベル64だろ? どこに同じくらいの実力があるんだ。


「実力的には初心者ではないけど、強さなんてDランクいくかいかないかくらいだって聞いたぞ。冒険者ギルドの人にそのくらいだと思うって言われたし、そんなもんじゃないのか?」


「あの練度で付与を使える人間がEランクでも詐欺だと思うわ。付与自体使える人が少ないのに雷魔法をあの練度で付与したんだから、少なくともCランクはあるじゃないの?」


「ま、まぁ、付与術は俺の得意技みたいなもんだしな。それにあれを使わなければ、Dランクの実力もないから、詐欺はいいすぎだろ」


「あの付与は、本当にすごかったわね。普通なら武器のみとか体の一部とかにしか付与できないのに、シュウは全身に付与してゴブリンを蹂躙してたよね。私のために怒ってくれたシュウはカッコよかったわ」


 ゴブリンたちのドロップを拾い、街へと帰る。その間にカエデといろんな話をして分かったことがあった。


 やはり俺のドロップ運は異常らしい。ゴブリンの睾丸は、100匹に1セット位の確率でしかでないらしい。ちなみに今回倒したゴブリン、ジェネラル4匹・強化種22匹・通常種138匹の合計164匹を討伐した。


 ゴブリンの睾丸だがジェネラルが1、強化種が4、通常種が18だった。それに加え、ジェネラルがDランク魔石を2つ・強化種がFランク魔石を7つドロップしていた。カエデ曰くおかしいとのこと。


 レベルが上がるとステータスが高くなるが、それが絶対的な強さにつながるわけではない。鍛錬をしてステータスの値をすべて活かすことができるようになって一流、戦闘経験を積んでステータス以上の力を引き出せて超一流と呼ばれる。


 この世界には、レベルだけ高いボンボンの貴族がレベル差にものを言わせて、弱い者いじめをすることも少なくないらしい。どこの世界でもゲスはゲスなんだろう。


 色々話をしていると、いつの間にかフレデリクの街についていた。俺はカエデと一緒に冒険者ギルドに向かう。換金のために行く予定だったが、コロニーの殲滅は報告した方がいいと言われたので、一緒にすることにした。


 ちなみに、ドロップアイテムはカエデの持っていた収納の腕輪という、亜空間に収納できるマジックアイテムに入れてもらっている。


「ミリーさん、戻りました。ちょっと報告があるんですがいいですか?」


「シュウ君、今日は早いのね。報告はどんな内容かしら? 後ろの女性はどちら様?」


 最後の言葉には、強い感情のようなものが込められていた気がした。


「えっと、亜人の森でゴブリンのコロニーを見つけました。森の入り口から2キロメートル位の位置だったと思いまs『それは大変、結構街道に近い位置じゃないの早く討伐隊を編制しないと』」


「ちょっと落ち着いてください。そのコロニーにジェネラルが4匹、強化種22匹、通常種138匹いました」


「中規模クラスのコロニーね、危険がないようにするには、Dランク以上で15人以上はほしいわね。どうやってゴブリンの数確認したのかしら?」


「最後まで聞いてくださいよ。とりあえずコロニーは潰しましたので討伐隊はいらないです。後ろの女性ですが、連れ帰られているところを助けました」


「シュウには危ないところを助けてもらった。空腹だったところに50匹ほどのゴブリンに襲われて途中で力尽きてしまって、本当に危ないところだった。恩義を感じてシュウに尽くすといったのになかなか受け入れてもらえなくて、一緒にパーティーを組んでから色々知ってもらおうと思っています」


「あなたの気持ちは解らなくもないわね。私もゴブリンに連れて帰られるところをシュウ君に助けられたなら、一生尽くすって考えてもおかしくないわね。あなた、将来有望なシュウ君を手玉に取ろうとしていないわよね」


 ミリー眼光が急に鋭くなりカエデを見据えていた。


「将来有望なのは認めるわ、でも打算はない。それに私、一応Bランク冒険者だからね。もし打算があるなら、ランクの高い殿方を狙うわよ。シュウへの気持ちは、助けてもらったところからきている偽りのない物。精霊の血に誓って嘘は言っていない」


「え? Bランクで精霊に誓うってことは、刀匠のカエデさんですか?」


「名乗ってなかったね、私の名前はカエデであっている」


「失礼しました。シュウ君は世間知らずで悪い女性に騙されないか心配していたのでつい熱くなってしまいました」


「気にしておらん、それにかしこまる必要もない。私はただの冒険者だ」


 なんでカエデってわかったんだろう? ハーフドワーフって見た目がドワーフに似ているのかな? どう見ても、人族にしか見えないしな。精霊の血に誓うって言葉で、精霊の血が流れてるか分かるだろうけど、嘘を言っていないとどうやって判断したんだ? 何か理由があるのだろうか?


 カエデとミリーが何かを話しているときに俺はそんなことを考えていた。


 ミリーに換金を依頼して、ドロップアイテムをカエデに出してもらう。


「シュウ君、これ本当に160匹位のコロニーでドロップしたものなの? どう見ても1000匹以上倒したんじゃないかって思うほどの量よ」


 ミリーは、ドロップアイテムの数を確認して絶句していた。


「私も驚いたよ。Bになるまでに色々討伐もしてきたけど、ここまでレアドロップが出たことなんて見たことも聞いたこともなかったわ」


 ミリーは絶句しながらも、しっかりと鑑定してくれた。コロニーの件でマスターに相談してくるとのことでしばらく時間が空いた。隣に併設されてる酒場で簡単な食事を食べた。昼をカエデにあげたのでかなりお腹が減っていたのだ。


「シュウ君お待たせ、買取とコロニー殲滅の報酬を合わせて60万フランになります。買取が40万弱で、今回のコロニー殲滅に20万の報酬で合わせて60万弱だったので、繰り上げて60万をお支払いすることになりました。合わせて、Eランクへの昇格が決まりました」


「おぉ~かなりの大金だな、腰が引ける。それに、2ランクアップってやりすぎじゃないですか? 1つくらい上がるかもとは思ってたけど、2つも上がるとね」


「本来ならそうあることではないのですが、今回のコロニーに関してはジェネラル4匹、強化種22匹で規模に対して上位のゴブリンが多かったこともあり、依頼として出すのであればBランク相当の依頼になる上に、ほぼ単独で壊滅したことを考慮して、特例でEに上がってもらうことになりました」


「Eになったことで受けられる依頼が増える以外はなんもないし別にいいのかな?」


 買取のお金と報酬を受け取り、満腹亭に戻っていく。一応今後のことについて少しは話しておかないといけないよな。ダンマスの事は話せないしどうしたものだかな、俺の癒し空間作成が遠のいていく気がする。

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