第13話
俺は悔しくてこの後もう2回ほどかくれんぼをしたのだが2回とも欺かれ、この家の持ち主である俺は落ち込む。だが来た時よりもニコニコしている美守。
「面白いね。いつもママとはかくれんぼ出来ないからさ」
「そうか、君のママはお仕事忙しいからね。家に一緒にいてもあまりお話ししないのかな」
「するけど寝る前かな。必ず読み聞かせはしてくれるんだ。一時間」
「一時間!?」
そうか、そうだった。美帆子は大手進学塾の講師で国語教師でもある。司書資格もあるから本の選定や読み聞かせは得意分野であろう。仕事ぶりも真面目だし、何度か彼女の講義映像を見たがとてもわかりやすい授業をしている。
確かに美守自体、4歳児にしてははっきり喋る方だ。きっと美帆子の子であるからであろう。
「おじさん、じゃあ教えてあげるね。なんでみえるか」
「う、うん……」
負けたのに教えてくれるのか、この太っ腹。俺は冷蔵庫からジュースと奥の方にあったプリンを彼に渡すと嬉しそうな顔をしている。(多分三葉のものだろう、すまん!)
「……実はね、おばあちゃんにはあまりいうなよって言われてるんだけどさ」
おばあちゃん……美帆子の母親のことか。彼女の両親も早くに亡くなっているはずだが、確か。
「僕は死んだ人がみえるんっだって」
まさかだが……。
「おばあちゃんっていう人も……」
美守は頷いた。だろうな。亡くなっていて幽霊だ。
「ずっと僕たちのそばにいたんだよ。おうちにね。ママにそれ言ったら驚かれちゃって。そしたら僕のみえるおばあちゃんが『ママや周りの人にはみえることは言っちゃダメ』って言われてさ」
そうだろうなあ、その時の美帆子も驚いただろうに。
「でもおばちゃんがいうにはママも子供の頃みえていたんだって」
うぉおおおおっ、三葉の体の中にいたのに鳥肌が。ゾクゾクってでてきた。そういう家系なのか。
「ママがいない時もおばあちゃんやおじいちゃんやたくさんの人がそばにいたから寂しくないんだよ」
いいのやらなんなのか。肌を擦り少し鳥肌が引っ込んだところで、さてどうしようか。それよりも今日美守がきた理由はなんだろうか。それがわからないのだ。
「おじさんはずっとあの仏壇にいたんだね」
「そうなんだよ。いきなり一年経ってからスケキヨに乗り移ったり、三葉に乗り移ったりすることができたんだが、倫典……あの、三葉の知り合いなんだがそいつには乗り移れなかったんだ」
「不思議だね。あ、スケキヨ……おいで」
美守が手招きするとスケキヨはスタスタやってくる。そして美守に懐いているのかクウンクウンと啼く。こんなに人懐っこかったっけ。
ん? スケキヨの首輪に何かついている。どこかで見たような。俺はそれを手に取る。少し大きな鈴ではない何か入れ物。表面には「K」と。スケキヨだから『s』じゃないのか。
すると美守が指をさす。
「おじさん、三葉さんも同じやつ付けている」
えっ、俺は気づかなかった。三葉の首にぶら下がってるネックレス、そしてスケキヨの首にぶら下がっている何か。そして『K』と書かれている。裏面を見た。
『Kazuki Ohshima』
……俺の名前だ!!!
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