妻が心配で成仏できません

麻木香豆

プロローグ

 俺は覚えている。だんだん意識が薄れていく中で愛する人が泣いているのを。こんなに泣いているのを見るのは初めて、いや……プロポーズした時以来か? それ以上に泣いている。プロポーズしたときは抱きしめてやれたのに、いまは腕に力が入らない。

 なんでなんだ? 意識はあるのに。


 あぁ、愛しき人よ。人生の中で最愛なる人よ。


 そんな君を残してはいけない……。


 でもそれが運命なら受け止めなくてはならない。

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