第11話
翌日、ユイの初仕事の時間が近づいた。
「ユイ、佐藤さんの言うことを聞いて、失礼の無いように振る舞うんだよ?」
僕は不安だった。ユイは常識が無い。
「何かあったら、僕の携帯に連絡してね」
僕が言うと、ユイは事前に渡されていた作業着を着てニッと笑った。
「ああ、分かった。心配性だな、晴人は」
そして、ユイは手を振って家を出て行った。
僕は心配でユイが引っ越し屋の方角に進むまで、後をついて行った。
「こんにちは、伊口ユイです! よろしく!!」
ユイは佐藤引っ越し店に着くと、大きな声で挨拶をした。
すると中から、佐藤さんが出てきた。
「よかった。ユイちゃん、時間通りに来てくれたね。それじゃ、他の仲間達を紹介するよ」
佐藤さんは事務所に戻って、中に居たアルバイトさん達に声をかけた。
「小林君、加藤君、中村君、新しいバイトさんが今日から入るから自己紹介よろしくね」
「はい!」
「僕も挨拶し直します」
中から吉田さんも合わせて、四人の男性が出てくるとユイの前に並んだ。
吉田さんが、最初に挨拶をした。
「おはようユイちゃん、昨日会ったよね? 吉田です。この会社で、社長以外の唯一の正社員です。改めてよろしくね」
「おう、よろしく頼む!」
佐藤さんが笑顔でユイに注意した。
「こういうときは、よろしくお願いしますっていうんだよ?」
「分かった。……よろしくお願いします」
ユイは素直に言い直し、頭を下げた。
佐藤さんがユイに言った。
「まず、ユイちゃんから自己紹介してね」
ユイは頷いてから大きな声で言った。
「了解した! 私は伊口ユイと言う! 色々分からないことが多いが、よろしくお願いします!」
ユイなりに丁寧に自己紹介をすると、バイト達は拍手をした。
「俺は小林陸(こばやし りく)です。大学で物理学やってます。なのであんまり会うことは多くないかな? よろしく、ユイちゃん」
「よろしくお願いします」
ユイは小林さんに頭を下げた。
「僕は加藤翼(かとう つばさ)です。高校で陸上部に入ってます」
「そうか、了解した」
「俺は中村貴史(なかむら たかし)だ。アメフトをやってる。力には自信があるぞ!」
「私と同じだな! 私も力には自信がある!!」
ユイが胸を張ってそう言うと、バイト達は吹き出して笑った。
「まあ、お手並み拝見と行きましょう」
吉田が言ったところで、自己紹介の時間が終わった。
「今日は、都内の引っ越しですが、大学教授ということで本が非常に多いと連絡を受けています。四人で力を合わせて頑張りましょう」
「うえー! 本が多いのか……いきなりキツいしごとでユイちゃん大丈夫かな?」
加藤さんがユイの方を見ると、ユイは胸を張って答えた。
「任せておけ!!」
「頼もしいね、ユイちゃん」
加藤さんは、困ったような表情で笑っていた。
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