俺と小説
白川津 中々
人間失格
純文学デビューは太宰だった。
ここでいうデビューとは興味を持ち能動的に読んだものという意味である。それは、諸兄であれば理解していただけるだろう。
手にした作品は人間失格。いかにもなチョイス。自分は特別だと思う人間が手に取りがちなタイトル。目で追うだけで肥大化した自尊心が満たされる素晴らしい題名だ。
読後、主人公は馬鹿だと思った。子供ながらに「こいつはおかしい」と薄ら笑いつつ、「素晴らしい作品でした」と喧伝して回っていたような気がする。内容など理解していないが、こうした作品を読んでいる自分は凄いでしょうと、暗に言っていたのだ。とんでもなく軽薄なクソガキである。死んだ方がいい。なぜあの時死ななかったのだ。死ね、過去の俺。
時が経ち、何やかんやで大学に進学した俺は適当な作家の全集を借りて講義中の時間潰しに読んでいた。その中に太宰もあり、人間失格が収録されていた。
再度読み直し俺は思った。主人公は馬鹿だと。
しかし、弱さや女々しさが流れるような文体で表現され、儚く破滅的な美を作り上げている事に気がつく。それは三島の美とは違う、女の匂いがするものだった。
抽象的で適当に書いているが、学のない俺は感覚で表現するしかない。許してほしい。結局はなにがいいたいかと太宰は凄いぞ面白いぞって事だ。まぁ文豪の書いた作品なんざどれも凄いし面白いに決まってんだけどね。
正直、太宰を馬鹿にしていた時期もある。
あんな大衆に迎合したような作家クソだよと何も知らないクセにさも通のような態度で貶していた。やはり俺は馬鹿なのだ。仕様がない。
けれど、やはり太宰は面白い。あの文章は太宰にしか書けん。オンリーワンでナンバーワンだ。人間性はともかくとして素敵だと思う。
俺も、自分にしか書けない文章で金を得たいもんだ。
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