兄の想い

バブみ道日丿宮組

お題:彼の美術館 制限時間:15分

兄の想い

 さぁ、美術館に足を踏み入れるのです。

 さすれば、あなたは美術品の1つになれます。

 美術館は街です。

 この街ば美術館なのです。あなたはその絵画、銅像、木像、生きるアートになることができるのです。

 とても素晴らしいこととは思いませんか?

 世界でただ一つ、世界遺産と言われた街がこの美術館なのです。

 全ては1つ。

 もうはじまってることです。


 そうしてある街は静止した世界となった。

 彼が作ったコンピュータシステムのエラーによる報復だった。

 生きるものの時間は停止し、そのままの状態で固まる。しかしながら死んではいない。生きてもいない。文字通り作品になった。


 このニュースは大きく取り上げられた。

 救出隊も乗り込んだが、メッセージを受け取り停止する。

 地下から、空から侵入しても同じ。

 ある時点から停止する。

 ミサイルであれば、オイルを燃やし煙を吐き出した状態。ドリルであれば、土を掘り吹き飛ばした状態で停止する。

 全てがメッセージ通りの作品となる。


「……」

 私は生前の彼を知ってる。

 生と死の哀しみを知ってる。

 いなくならなくてはいけない人もいるし、そうでもない人もいる。

 生きたくない人も、死にたい人も。

 どうすれば彼らを救えるのか。

 彼は考えた。

 考えて、コンピュータにエラーを起こさせた。

 人間への報復。


 その答えがこれだった。


「……いつ目が醒めるのだろうか」

 彼である兄は美術館の監視塔の中の保管室で眠り続けてる。

 私はここで唯一動ける人間として彼にナノマシンを埋め込まれた。

 同時に人間という枠から外れ、歳が12歳から進むことがない。

 食べることも、寝ることも必要なくなった。

 監視塔に近づく人間が停止するのを見るだけの毎日だ。

 

 ーー美術館。


 静止した世界にいろいろなアクションが加えられたこの場所はまさにその通りだと思う。

 原子爆弾でさえ、停止してるせいもあってか普通の人はよっぽどのことがない限り近づかない。

 万が一に備えてというやつだ。

 だとはいえ、毎日何十人として街の一部に変化してる。

「兄さんは本当は何を望んでたのだろうか」

 これではただの拷問でしかない。


 考えることをやめた世界。


 確かに何かがあってるのかもしれない。

 けれど、世界はそれを認めない。

 兄の最適化まで、あと数百年。

 

 一体世界はどうなってしまうのだろうか。

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兄の想い バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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