一目惚れ同士

バブみ道日丿宮組

お題:遠いしきたり 制限時間:15分

一目惚れ同士

 彼女との距離が近づいたのは、しきたりの影響がでかい。

 幼稚園、小学校と同じクラスで一緒にいたことはあってもまともに会話なんてしたことなかった。

 本家と分家の違いといえば、そういうことなのだろう。

 会合があっても、僕らは隣同士でもただひたすら大人たちの話を聞くだけで何かを話すという感じじゃ決してなかった。

 話したくないわけじゃない。

 僕は彼女に一目惚れして何を話せばいいのかわからなかった。

 ただの弱虫だった。

 そして彼女は高校はしきたり通り、名門女子校に通うことになった。

 そこまでは僕も聞いてた話。

 これっきりでもう二度と会うこともないだろうと思って、友人に頼んで彼女が写り込んだ写真をもらったんだ。

 でも、それはすぐに捨てられることになった。

「どうして……」

「これもしきたりだからいいじゃない」

 僕も女子校に通うことになった。

 しかも付き人というか、ルームメイト役として。

「やっと話してくれるようになってくれて私は凄く嬉しいのよ?」

「それは僕だって嬉しいよ」

 しかも好きだって言ってくれた。

 一緒に行ってくれないかと言う前に、彼女は僕を一目惚れしてるからずっと一緒にいたいって……そういうこともあって新しいしきたりが生まれた。

 遠いような近い存在にするしきたり。

 いわゆる許嫁の関係に僕らはなった。

「もう学校中で百合カップルとして有名なのだから頑張って」

「何を頑張ればいいのか……」

 作法は分家でも学んでた。本家に遅れをとらないようにいずれは超えるようにと指導されてきた。その教訓は着実に現れた。

「可愛いわよ。もっとあなたのことが好きになるくらい」

「うわっ、ちょ、チョ……と!?」

 思いっきりほっぺたに唇がくっついた。

「ふふふ、まだ慣れないの? 早くしないと私がずっとリード持っちゃうんだから」

「えぇ、でも……なんか野獣みたいな感じがして僕は嫌だな」

「そんなんだから可愛いって言われるのよ?」

 そうなのかな……姿見で見る自分は違和感しかでない。

 気持ち悪いというほうがこの場合は正しいかな。

「何ため息してるの? 私がせっかく整えてあげたんだから、ほらちゃんと指見せて」

 はいと言われたとおりに手を差し出す。

「うん、ちゃんとしてるね」

 彼女も同じように手を見せてくるーー指輪をしてるということを。

「代々伝わる指輪みたいだから、効果抜群よきっと」

「何の効果かは聞かないでおくよ」

 学校で騒がれるのは入学式限りでもう勘弁して欲しい。

 新入生代表として登壇させられたのは、なぜか僕で彼女は後ろにいるだけだった。

 もちろん分家ですが、お嬢様が機会を与えてくれたってプレゼンをしたんだけど、それがまずかったみたいで教室にいったら、人が凄く押し寄せてきた。

 彼女の方みたら、すごく笑ってた。幸せそうに。


 その夜は他の女の子にとられないように罰を受けたんだけどさ。


「さぁほら今日も学業に励むわよ」

「わかってる。ぼちぼち僕も生活には慣れてきたし……」

 そうよかったわねと、彼女は嬉しそうに部屋の外へと足を向かわせた。

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一目惚れ同士 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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