11−4【成人のクラウたち4】



◇成人のクラウたち4◇


 村長宅、まぁ自宅に入ると、コハクが食事の準備をしていた。


「あれ、コハク?」


「あ!お兄ちゃん!元気〜?」


「お、おう。元気だよ……コハクも元気そうでなによりだ」


 スクルーズ家の末妹、コハク・スクルーズ。

 クラウ姉さんと同じ四月生まれで、十三歳になった。

 残念ながら、クラウ姉さんは背丈も胸のサイズも越されてしまい、将来は完全に母さんやレイン姉さんコースの美人さんになるだろう。

 いや、クラウ姉さんも美人ではあるんだけどさ、まぁ見た目が幼女じゃん?


「なぁにそれ。コハクは元気だよ、年少組のリーダーだもん。お兄ちゃんの妹だからねっ」


「コハク……」


 成長してから、またお兄ちゃんって呼んでくれるようになった妹。

 前は小悪魔だなんて言ってしまったが……これは天使、流石天族だ。


「ふふっ、変なお兄ちゃんっ。所で、今日は食べていくの?」


「あ……いや、父さんに話があるだけなんだ。食事はその……」


 俺が気まずそうに言いよどむと、少し寂しそうにしながらも、気を利かせてくれる。


「あー、ミーティアさんね。仲いいんだから」


 コハクはミーティアをどう思っているんだろう。

 そんな事を考える余裕もなかった一年だったが、俺も十七、ミーティアは二十歳。

 この世界での結婚適齢期……らしいよ、二十歳って。


 その理由は……長女レイン姉さんにもあってだな……


「――あれ?ミオじゃない」


「……はっ!レ、レイン姉さん……」


 考えたら登場した。

 出来れば会いたくなかった……って、これじゃあジェイルと同じじゃないか。

 駄目だな俺も。人に言うくらいなら、自分もそれ相応の実行力を持たないと。


「おかえり、なんだか久しぶりに家に戻ったね」


「うん、まぁね。父さんに話があってさ……クラウ姉さんの成人式の事で」


「あー成人の義ね、クラウもミーティアもだったわね」


 レイン姉さんは結った髪を肩にかけながら作業をする。

 荷物をまとめているんだ、自分の荷物を……この家から運ぶ為に。


「……」


 何も言えない俺。

 その代わりに、コハクが口にしてしまう。

 今年の春に俺がそれを聞いて……気絶した案件を。


「――新居はどう?レインお姉ちゃん、。旦那アドルさんも動けるようになって、自分の畑も始めたんだよねっ」


 クラァ……と、また倒れそうになった。

 そう……スクルーズ家の長女レインは……結婚したんだ。

 俺以外のやつと……


「え、うん。順調に出来てきてるわよ?」


 そうか、俺に遠慮をしてお願いにも来なかった愛の巣……完成したんだな。

 レイン姉さんは何も相談してくれなかった。

 クラウ姉さんは知っていたらしいが、俺は全くの蚊帳の外、寝耳に水、驚天動地。


 だけど、俺は受け入れた。

 自分がミーティアと恋人になって好き勝手して……他にそれを咎めるような事は……出来ないからな。したら最低だろ?


「それは良かったね。俺も今度……様子見に行くよ」


「う、うん。ごめんね」


 いいのさ。

 レイン姉さんが幸せなら、それでいい。

 あの日、命がけで好きな女を守った男だ。

 信じるさ、アドル・クレジオがレイン姉さんを幸せにしてくれることを。

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