10−91【解決策7】



◇解決策7◇


 帝国皇女セリスフィア。

 公国公子ルーファウス。


 俺は――この二人と同じ立場に立とうとしている。

 大勢の民の命を背負い、守り、育むいしずえとなる覚悟。

 改めてその立場の重さを知って、俺の覚悟は中途半端だったのだと理解した。


「ミオくん、是非お話しましょう!!ミオくんがそんなふうの考えてくれているなんて、僕感動しました!!」


「ル、ルー落ち着きなって……まだミオくんは何も言ってないよ」


 ルーファウスは前屈みだ。自分と考えが同じに至った事が、嬉しいのかな。

 セリスは優しげに笑みを浮かべていた。


「いい傾向けいこうだと思うわよ、私は」


「そう……なのかな?」


 フッと笑い、セリスは椅子から立ち上がった。

 カタンと鳴る椅子に脛をぶつけて、少し恥ずかしそうにしながら俺のところまで歩いてくる。


「……握手をしましょう、ミオ・スクルーズ」


「……は?握手?」


「そう握手。四ヶ月ぶりにね」


 自信満々。そんなふうな笑顔で俺に手を差し出す。

 そう言えば、前も別れ際に握手したな……でもこれは、スキンシップが激しいとかそんなんじゃないよな、きっと。

 だけど、この手を掴んだら……俺はもう戻れないんじゃ。


「ミオ」


「……ティア?」


 ミーティアは俺の手に自分の手を重ねる。

 優しく、思いやりや温もりを感じる。


「最近、ウィズの声……聞いてないでしょ?」


 寝耳に水だった。

 自分では、毎日会話をしているつもりだった。

 実際さっきも、普段通り話したと思ってた。

 だけど実際は違う……明らかに、俺からウィズに話しかけることが少なくなっていた。


「……あ、そういえば、そうかも……」


「私は、ミオの代わりにずっと聞いてたから」


 そうなのか……ウィズ。


『――はい。ミオは考えすぎると、自分の殻に閉じこもります。ご自身からは発しますが、レスポンスを受け取らなくなります』


 スマン……


『ですので提案です』


 提案?


『ミーティアからの打診です。【オリジン・オーブ】を持つ……アイシアとセリスフィアに、ウィズの声を聞けるように調整して下さい』


「……マジで言ってるのか?」


 俺はミーティアとウィズに。


「ええ、それがいいと思う。流石にリアちゃんは、まだ早いかと思うから。セリスさんなら、信頼も出来るし実力も、充分すぎるくらいあるから」


「……私?」


「えっと……俺の能力、【叡智えいち】の声を、アイシアとセリスにも聞こえるようにしろって」


「ほっほ〜う!」


 セリスは目を輝かせて俺に迫る。

 いや近い近い……

 しかし同じ事を聞いたアイシアは、特に驚く事もなく。


「ミオがいいなら、それでいいと思うよ。ウィズさんの意見を聞ける人が増えるのはいい事だと思うし、ミオの意見だけだと偏るのも分かるもん」


『――【オリジン・オーブ】に魔力を注ぐだけです。以前ミーティアを救った時のように、思いを込めて。因みにアイシアの【オリジン・オーブ】は体内に吸収されてしまっているので……【女神アイズレーン】を頼りましょう。以前よりは神力も回復したでしょう』


「……でも、いいのか?」


 負担になったり、しないだろうか。


「いいもなにも!私は……前から興味があったわ!それに共有できる情報がある方が、絶対に国作りには必要よ!」


「あちょっと!近いってば!」


 セリスは興奮気味に俺の手を取る。

 その手に……更に乗せられる二人の手。


「……ふふっ」


「決定ね」


 ミーティア、アイシア、セリス。

 【オリジン・オーブ】を持つ三人に……俺は救われた。

 そして、問題解決への協議は……なんと一発でケリが着くんだ。

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