10−40【呆気ない結末1】



呆気あっけない結末1◇


 戦闘が開始されてものの数分、国境村の初の防衛戦は、あっという間に制圧された。公国組であるルーファウスを始めとした、【ルーガーディアン】の実力を見るいい機会だと思っていた俺だが……なんだこの呆気あっけない結末は。


 馬鹿みたいに突撃してくる敵大将、統率の意味もない戦略、こちらの戦力を把握もしていない展開に……俺もルーファウスも、愕然がくぜんとした。割とマジで。


 しかし、この展開を先に把握し、敵大将よりも行動を早くした人物がいた。

 名を……ネイル・スパタと言うらしい。

 その人物は敵陣地のテントから魔法鳩を飛ばし、早々に投降の旨を伝えてきた。

 ご丁寧に、公国貴族の証明となる印……スパタ家の紋章が記された短刀を添えて。


 その短刀は本物だと、ルーファウスが証明してくれた。

 だから信じられたし、俺も進言できた……「この子を味方にすればいいんじゃね?」と。


 反対意見も出た。【ルーガーディアン】の……女性たちだ。

 どうやらネイル・スパタという女性はやり手、と言うか実力者らしく、自分たちの敵(ルー様取られるぴえん)という認識だったようだ。

 しかしそこは鶴の一声、ルーファウスの賛同で決定……ほどなくして俺は別行動、【ルーガーディアン】の一人、ソフィレット・ディルタソさん……通称ディルたそを連れて【紫電しでん】で移動をする。


 敵陣地では、魔法鳩で返答を確認したネイル・スパタと数人の部下が、武装を解除して待機していた。

 それと同時に、ルーファウスたちによるスパタ伯爵迎撃が始まった。





「――貴殿がネイル・スパタ嬢ですね」


 ディルたそが言う。


「はい、そちらは確か……ルーファウス殿に協力していた」


「ソフィレット・ディルタソと申します。公国貴族、ハルバート家につらなる家系です」


 へぇ、でも貴族ではないと……分家とかかな。


「お噂は聞き及んでいます。して……そちらのお方は?」


「彼はルーさ……ルーファウス様のご友人です、では――」


 ディルたそは手を差し出して俺を紹介。

 俺は一歩前に出て。


「投降のむね、俺がルーファウスに代わって受け入れることになった。俺はミオ・スクルーズ、向こうに見える……あの塔の所有者だよ」


「!……そうですか、あの摩訶不思議な塔は、貴方が建造したのですか」


 少し驚きつつも、ネイル・スパタは納得した。

 別に転生者特有の圧は出してないけどな……あと建造というか、誕生?


「そういう事だ。ルーファウスもあの塔の有用性を理解したからこそ、この場所に陣地を構えたんだよ」


「なるほど、流石ルーファウス殿です」


 それにしても、公国の人たちは出会う度にルーファウスの信頼度が高いな。

 いや逆に――親父であるコルセルカ公爵の信頼度が低すぎるだけなのか……


『――双方だと思われ』


 だよなぁ。


「それではネイル・スパタ嬢、ミオ殿のお手をお取りください……」


「え?」


 不審な顔をするネイル・スパタ。当たり前だ。

 まぁ説明不要の移動術、行ってしまえば答えも出る。とりあえず部下の人たちは置いておくとして、この味方にできそうなお嬢さんだけでも、【転移てんい】で連れて行くとしようか。

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