9-32【トリラテッサ5】
◇トリラテッサ5◇
俺が一番武器に出来る交渉材料、それは【スクロッサアボカド】だ。
アイシアが見つけてくれた生き残りの種。
それを【
時間、環境、肥料に関係なく育ち、味は抜群。
更には【
現在は【リードンセルク王国】の商業街、【ステラダ】にある【クロスヴァーデン商会】でしか取引を
していなかった……つまりはこれからすればいいと、そういう事だ。
「大将、これなんですけど……食べてみてくれません?」
「ん?……それは」
俺は【スクロッサアボカド】を店の大将に渡す。
自分で割って確かめてくれ。俺、刃物怖えし。
「もう
「う、うむ……それじゃあ」
切るのではなく、沈んでいくようにナイフが刺さる。
見てないけど分かる。そう説明されたから、クラウ姉さんに。
「おお、中は緑なのか……
「それが一番良好な状態です、
俺の言葉に、大将は目を開いて
「おお!これが噂の……王国の有名な野菜か」
王国で有名になっちまってる。
少しの失敗だなこれは、【クロスヴァーデン商会】が専属で販売をしているから、王国では有名になっても国内では見ない貴重な存在になっていたんだ。
「この町から東にある、【豊穣の村アイズレーン】の特産ですよ」
「……あの炎は?」
やっぱり知ってる、ペルさんの言った通りだな。
「畑はほぼ全滅です。でも幸いなことに、村人に被害はありません……
「そうか、大変だったな。食糧が不足なのも納得だよ……ウチのでよかったら買って行ってくれ、多少はまけよう」
簡単に「王国軍に攻め込まれた」とは言ってはいけない。
戦争の火種になるし、広める訳にもいかないし……まぁ、この国の皇女様に知られてるんだけどな。
「おい、お前も食え」
「え、ええ……」
同情でも善意は善意だ。
ありがたく受け取るし、【スクロッサアボカド】が再び生産可能な状況になれば、その恩も返すさ、絶対に。
「感謝します」
露店夫婦は揃って口に運ぶ。
初めから、信頼がおけると思った店にはこうして売り込む予定だったんだからな。
そうして、俺とリアは買い物を終える。
村人全員分の食料二日分……合計金額二十万【ルービス】と、予想よりも安く、更にはオマケも色々つけてもらって、村に帰る。
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