9-25【村以外の町へ1】



◇村以外の町へ1◇


 朝からストレスを抱えさせられて、俺もアイシアもひどく疲れた気がする。

 いや、確実に疲れてる。下手すりゃ昨日よりも疲れたぞ。


「ん……ん~~~~~。太陽がまぶしいなっ」


「そーね、鬱陶うっとうしいくらいに」


 俺の隣の小さい人は不機嫌だ。

 寝起きだし、その寝起きがすこぶる悪いしな。


「姉さんは今日どうすんの?」


「……寝たい」


 今起きた人が言うか。まぁ分からん訳でもないが……我慢してもらうとして。


「それは落ち着いたら、ゆっくり寝てくれ」


「分かってるわよ……ミオはどうするの?」


 俺の予定、言ってないっけ?


「西の町に買い物。村人全員分の食料とか、野菜の種とか買いに行くよ」


 今思うと結構な重量かも知れん。


「へぇ。大変ね」


 他人事かよ。

 まぁ買い出しだしな、嫌な人はマジで嫌がるらしいから。

 パシリ精神を刺激されるとかな。


「そゆこと。姉さんは出来る事なら……ユキナリを見といてくれる?」


「……」


 うわぁ……あからさま。

 嫌そうに眉寄せやがった。


「それと皇女様もな」


「……なんで?」


「なんでって……要注意人物だからだよ。悪い意味じゃなくて、いい意味で」


「いい意味の要注意ってなによ。まぁいいけど……私も少し話して見て、思慮しりょ深い人なのは分かったし」


 だからそれを俺は見てないんだって。ってツッコミ皇女様にも入れたな。


「それじゃあ俺はこのまま行くから」


「おっけ、頑張って」


 バシッ!と俺の背中を叩いて、クラウ姉さんは教会に戻っていく。

 さて、俺も行くかね。

 目指すは村の西にある、一番近隣の町……【トリラテッサ】だ。





 俺が西門に着くと、後を追うようにして駆けて来る小さな人影があった。

 いや、チビ姉じゃねぇよ。


「――ミオにいちゃん!」


「ん?リア?」


 元気よく駆けて来て……そのまま。


 ドォォォォーーーーン!!


「――ぐぉっほぉ!!」


 笑顔の突撃に、身体がくの字に曲がる。

 常人だったら折れてるぞ、リアァァァ!


「リアも行くっ!」


「は、はは。は……そうか、じゃあ一緒に行くか」


 拒否したらヤバそうだと本能で察した俺は、断る選択肢を持たないで許可する。

 威力がすげぇ。暴走の時よりも絶対に強くなってるだろ……


 だけどまぁ、それも【オリジン・オーブ】が安定している証拠か。


「えへへっ」


 【竜人ドラグニア】の少女リアは、記憶を取り戻した。

 本名はリ・アイリス。EYE’Sアイズの一人であり、赤色の【オリジン・オーブ】の所持者だ。

 安定した【オリジン・オーブ】のおかげか、暴走もする事なく力を発揮でき、更には記憶も戻るとか、オーブ様様だね。


「それじゃあ手伝って貰うかな。荷馬車に乗ってくれるか?」


 村人全員分の食料の買い出しだ、相当な量を見積もっている。

 それに日用品や、農業を再開するための種や苗も買いたい。


「リアがひっぱるー!」


 いやいやそれは流石に。

 男の沽券こけんに関わるんで。

 しかしまぁ……そんなこんなで、俺とリアの短い旅が始まった。

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