プロローグ9-2【運命の女神2】



◇運命の女神2◇


 ミオの産まれた村に訪れた新たなる女神……エリアルレーネ。

 掴みどころのないそんな彼女を、ミオはアイズの家の地下へと案内する。

 現在村人の八割が避難している、アイズが作った地下空間……そしてその中に存在する、神秘的な教会へとだ。


「あらら、随分と深く掘りましたねー……あ、位置は昔から同じかしら?それにしてもこの規模だと……予測通り神力を使いまくったのねーまったく、どうしようもない子なんだか、もー」


 アイズのズボラ具合にぷんすかして階段を下りるエリアルレーネ。


(う~ん、アイズの知り合いってのは確実なんだろうけど……、ってのがどうもな。姉妹……姉妹ねぇ)


 率直に、まず似ていない。

 それがミオの第一印象だった。

 エリアルレーネはどう見ても見目麗しい……それが先行してしまう。

 一方でアイズレーンは、確かに美しくはあるのだろうが……どうしてもポンコツ具合が前に出てしまい、神秘的なオーラを放つこのエリアルレーネと同じ存在だとは思えなかったのだ。


「そういえば。ミオ……でしたね、君の名前は」


「え?あ、はいそうです」


 地下に下りる道すがら、ミオはエリアルレーネに自己紹介をした。

 するとエリアルレーネは呼び捨てをし、簡単に人見知りの壁を越えて来たのだ。


「アイズは面倒臭めんどうくさいでしょう」


「はい――あっ、いえ!すみません」


 つい本音が出てしまったミオ。

 反射的に振り向いて頭を下げる。

 しかしエリアルレーネは笑いながら。


「うふふっ、いいのですよミオ。本当の事です。昔から……あの子は面倒臭めんどうくさいのですよ、不器用と言った方が適切ですかね……根回しは下手、説明は中途半端、立案した作戦は穴だらけ……どう?」


「……えっと」

(思い当たる事しかないんだが)


 前世で面識のない少女に刺されて死んで、転生し、今世でアイズと再会するまでの事を思い出して苦笑いを浮かべるミオ。

 それ以降も、アイズの突飛な言動やイラつかせるような行動……思い当たるふししかなかった――でも。


「まぁ、あいつのおかげで俺がここにいるのは変わらないんです。それだけでいいですよ。どんだけポンコツで、どんだけ汚い部屋に住んでいても、あいつは俺の女神です」


 再度向き直し、背中で語り、思う本心をエリアルレーネにぶつけた。

 少し気恥ずかしく……薄っすらと顔を赤らめながらも、ミオはそれでも女神に言葉を並べたのだ。

 それをどうとってくれるか、どう感じてくれるかを賭けて。


「……」


 その返事を貰えないまま、地下を下りる。


「着きました。扉は……――あ、開いてる?」


 まるで歓迎しますと、そう言わんばかりに。


「うふふ、殊勝しゅしょうな心掛けですね、我が妹。帝国を二分する女神、そうこなくてはっ」


 なんだか一人で気分をあげて、エリアルレーネはずかずかと進んで行く。


「あ、ちょっと!待ってっ」


 先に進めばすぐに教会だ。

 そこにはアイズとアイシアがいる。


(あれ、父さんたちがいない……どこだ?)


 教会の外には、避難民である村の住人たちが多く居たはずだが。

 一人の影も見当たらない。


「気配は更に下ですね……この感覚は、祭壇でしょうか」


「さ、祭壇!?……なんでそんな、物騒な!」


 まさか生贄いけにえではないだろうかと、ミオは一瞬だけ焦るも。


「クスクス、そうではないですね。我々女神は祈りをささげられる……延いては信仰される事で力を得ます。だから、アイズが村人に認知されることは力の回復になりますから、そのためでしょうね。地下に作ったのは……まぁあの女神にバレない為でしょうけど」


「あの女神?……認知で回復?」


 分からない要素が増えて混乱しそうになるミオは、頭上にクエスチョンマークを浮かばせる。

 新しい女神は、どんどん新情報をもたらしてくれるらしい。

 しかしそれは吉か凶か、ミオは不安になりながらも、エリアルレーネを連れて教会に入るのであった。

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