8-85【罪を断つ者2】



◇罪を断つ者2◇


 戦闘が再開される。ミオ・スクルーズと言う強力過ぎる戦力を加えて。


「おらぁぁぁぁぁっ!!」


 ドッ――!!ドガァァァァ……パンッ――!


「うっひゃぁ……すっげぇ威力だなミオっち」


「そうか?」


 手をプラプラさせて、ミオはユキナリの言葉に首をかしげる。

 ミオが殴った相手は死なない兵士だったが……吹き飛び岩肌にぶつかって、粉微塵こなみじんになっていた。


「倒せないなら消してしまえばいい。まるでそう言っているような戦い方ですね……」


「ははっ、真理だろ?」


「うっ……そ、そうです……ね」


 ミオから顔をらすライネ。

 そんなライネにユキナリが近付き、耳もとに。


「やめとけって」


「な、なにが!?」


 何か図星のような、そんなリアクションでユキナリから距離をとり、【アロンダイト】を構える。赤い顔で。


「か、数は減ったわ!ユキナリも戦いなさいよっ!ミオくんに負けるわよ!?」


「そいつはやだね!!」


 そう短く叫んでユキナリも構える。

 そろそろ第四陣が来るのだ。


「ミオ!少しお願いっ!疲れたっ」


「オッケー。お疲れっ!」


 パンッ――とハイタッチ。


「……【極光きょっこう】。【電極でんきょく】!」


 両の拳をぶつけると、そこから電撃が発生する。

 バリバリバリっと、【極光きょっこう】のオーロラに纏わって。


 今まで最前線で戦っていたクラウと交代し、今度はミオが前線へ。

 交代したクラウが、ミオの討ち漏らしを撃退する形だ。


「敵の統率力とうそつりょくが一気に減ったな。残りは弓兵と魔術師、騎士は半分もいない……か?」


「そうですね、私たちがゾンビを多く倒しているので、数が一番多いのはあいつらでしたし」


「ははっ、ゾンビか。そりゃあいい、よく映画見に行ったよ」

(一人で……)


「……やっぱミオっちも転生者だったんじゃねぇかよ~!」


 ミオとライネの会話に割って入り、そのワードで確信をするユキナリ。

 ユキナリは当然、映画など知らないが、【帝国精鋭部隊・カルマ】内での話でよく聞いていた。


「悪いな。あん時は噓ついて」


「別にいいけどさ、俺も見抜けなかったのはミオっちだけだぜ!」


 「「自慢げに言わない!!」」と後ろから二人に言われる。

 ユキナリには、転生者の胸元に光る力のみなもとが見える。

 それで転生者を判断していたが、ミオの場合は見えなかった。

 それは……ウィズが隠蔽いんぺいしていたからだが、今更と言うものだ。


「ライネさんも転生者って事は、お前んとこは何人転生者がいるんだよっ――と!!らぁぁぁ!!」


 ミオは両手を広げ、そこから電撃が扇状に放たれた。

 その雷が、迫ってきた矢を落とす。


「えっと~……八人!!」


「――そんなにいないわよ!五人ですミオくん!」


 数も数えられないのかと、ライネは赤面しながら訂正。

 本当はそこまで真面目に聞いたつもりではないので、ミオとしてはどちらでも構わないのだが。

 そして正確には、不明……だ。

 【帝国精鋭部隊・カルマ】では五人と言う構成だが、ユキナリ・フドウの母を含めてはいない。

 彼女も転生者だが、戦闘員ではないからだ。


「それでも多いね!いい戦力になりそうだっと!」


 再び扇状に雷。

 放射される矢を次々と落とす。

 これ以上の炎上はさせるつもりはない。


「その技いいな!ミオっち、名前は!?」


 魔物の腕で兵士を潰しながら、ユキナリが言う。


「え!?名前!?そ、そーだな……」

(やべぇ、全然考えてなかった!)


 ミオはネーミングセンスがない。

 正直言って、能力に名前負けしている物ばかりだ。

 【電撃デンゲキック】とか【極光弾オーラショット】とか。


 そんなミオに、救世主。

 技や魔法に自力で名付けている、自慢の姉が。


「【雷光放電斉射ライトニングブラスター】でよくない?」


「――それだ!!それにする!!」


 この中二的な発想。

 どうしてファンタジーを知らないクラウの口からこのようなネーミングセンスになるのか、不思議になるミオだった。

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