8-74【王国を敵に回す一撃8】



◇王国を敵に回す一撃8◇


 ミオがこの世界に転生して、もう直ぐ十六年。

 その年月で、ミオの初めての転生者同士の戦いだった。


『ご主人様。もう気付いているとお思いですが……あの男も転生者よ!』


「分かってるって。あんな高らかに【転移てんい】をぉぉ!なんて言ってたら、嫌でも能力だわ……って思うだろ、せめてしれッと言えよ、こんな感じでな――【紫電しでん】」


 ギュン――と加速して、再びリディオルフの真下に移動する。

 しかし今度は。


「――おっと……って避けられたわ……【転移てんい】って便利だなおい」


 腹部を狙った正拳突きが空振からぶった。

 そして後方に。


「おらぁぁぁ!!」


「――馬鹿の一つ覚えかよっ!!」


『どうして!魔力の反応は東に!!』


 消えたら後方……先程と同じだった。

 だが、ウィズが言うように確かに、リディオルフの魔力反応は東……リアが向かった方角にあった。


 しかしミオはリディオルフが出現する反応を直感で気付き、裏拳で対応する。

 ガッ――と、リディオルフは両腕で防御するが、基本的な身体能力が違いすぎて。


「うっ……あぁぁぁ!!」


「あれま。吹っ飛ぶねぇ……」


 バチバチ……と、ミオの腕が電撃を放つ。


『【電極エレクトロード】の調子は良さそうね』


「ああ。【紫電しでん】で耐性が出来てたからかな……新しく発現したこれが役立つのはいいよな。クラウ姉さんのおかげだ」


 ミオが持っていたチート能力ではない、この世界にある元からの能力。

 【電極でんきょく】。両手の第三関節を起点とした、電撃発生と操作を可能にする能力だ。


「い、痛いぃ……し、びれて……ああ!」


 そう言いながらも、リディオルフは再度消える。

 反応は上。しかしやはり。


「学べよ少しは!」


 背後に。今度はミオは手刀で薙ぎ払った。

 背後と言っても少し後方……逃げるつもりだったのかと、ミオは少し強めに。


 その手刀による衝撃波は電撃を纏い。

 雷の刃となってリディオルフに迫った。


「――ひっ!!ああああああああああああ!」


 胸に直撃。感電するリディオルフ。


「やっぱり【紫電しでん】ほどの威力はないな」


『発現したばかりの能力ですので、レベルは1です。当然でしょ』


 それでも、天上人のステータスによる威力の向上で、ダメージは充分与えられていた。


「あ、が」


 ガクリと膝を着き、リディオルフは睨み付けるようにミオに視線を送る。


「き、さまぁ!!僕は、【王国騎士団・セル】の団長だぞ!僕が痛めつけられれば、聖女も王女も、いや、女王も黙ってないぞ!!王国に牙をくつもりかぁ!!僕を敵にすれば……王国を敵に回すんだぞ!!」


 まるで凄みのない、下衆げすな脅しだった。


「――それがどうした?」


「……な、なにぃ??」


 声が裏返る。

 尻餅をつき、ズリリと後方へ。


「それがどうしたって言ったんだよ。聖女?会った事もない女のことなんて知らねぇよ、どうせ転生者だろ、それに今回の騒動だってそいつの差し金だろ。あと女王?あの時の王女か……確かにヤバい奴だってのは、昔から知ってるよ。それを知ってて、無意識に避けてた……だけどな、村を、家族を巻き込んだことは許さねぇ!!」


 一歩一歩静かに、焼けていく村を背にしながら。ミオは詰め寄っていく。


「……ま、待て!!僕は、イエシアスの――」


「やっぱりかよ」

『やっぱりね』


 その名が出るのは予測出来ていた。

 イエシアスの名が出る事それ事態、ミオにとっては逃れられない運命なのだから。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る