7-104【VSエルフの守護者4】



◇VSエルフの守護者4◇


 走り出したミーティアはまず、凍結の矢でドラゴンの翼を狙った。

 ジルリーネが何度も攻撃している事は音で気付いていたし、自分が立て直すのを補助してくれていたとも気付いた。

 だから強襲に近い一撃で、ドラゴンにダメージを与えようと思った。


 ドドド――!


「お待たせっ!」


 半解した氷の壁に登り、ミーティアは叫ぶ。

 ジルリーネは安堵あんどしながらも「遅い!!」と少し厳しめだった。


「ごめんなさい!大丈夫だからっ――ふっ!!」


 続けざまにる。

 魔力の矢は全て命中、流石の図体のドラゴンに対して、外すわけにはいかない。


「コイツ、どこまでもお嬢様が狙いかっ!!」


 もう何度火球をぶち当てただろう。

 それでもドラゴンは意に返さず、ジルリーネを無視と決め込んでいた。


『――ジルリーネ・ランドグリーズはエルフです。おそらくですが、彼女は守る対象なのでしょう』


「そうか……そうなのね!」


 ウィズの言葉に納得するミーティア。

 何度ジルリーネがドラゴンを攻撃しようと、ドラゴンは意に返さない。

 それは何とも単純な理由で、ジルリーネがエルフ……守護する対象だからだ。


「だから私を狙い続けるの――っと!あぶっ!」


 右翼による打ち付けを、ドラゴンは行った。

 ミーティアが立っていた氷の壁の残りに向かって、ノールックで。

 ギリギリで避けたミーティアは、そのいきおいでもう一度地面に氷の道を敷き、スケートのように滑り出す。

 目的はジルリーネのいる場所だ。


 狙いはこうだ。

 ジルリーネの隣、つまりはエルフの隣に居る事が出来れば、ドラゴンの攻撃も来ないのではと。


 しかし、ドラゴンは。


 グオォォォォォォォォン!!


「!!」


 目視もせずに、ドラゴンは長い尾を振り回す。

 障害物は薙ぎ払われ、隠れて移動しようとしたミーティアもろとも。


「きゃあああああ!――あ、あぶっ……なっ!」


 柔らかい身体で仰け反り、胸元すれすれで回避。

 そのまま滑りながら尻をついた。


「こんな、無差別!」


「こっちだドラゴン!!こっちを見ろっ!」


 濡れた尻を擦り、立ち上がって直ぐに走り出す。

 当然のようにジルリーネの攻撃を無視するドラゴンは、立ち上がったミーティアを目視した。


 グオォォォォォ……!


「――お嬢様っ!」


「走るっ!走って私っ!!」


 自分を𠮟咤しったして、何とかジルリーネと合流しようとドラゴンの動きを見た。


「……!?」


 少し、違和感を感じる。

 ジルリーネを守ろうとしている事は分かった、合流を阻止しようとしているのも、その行動理由から推測できる。

 しかし、動きがぎこちない気がしたのだ。


「くらえっ……!――【魔炎弾マ・フレーマ】!!」


 ドンッ――!と、ジルリーネの魔法がドラゴンの頭部、目の付近に直撃した。

 それをチャンスと踏んで、ミーティアは本気の本気で走り出した。

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