7-101【VSエルフの守護者1】



◇VSエルフの守護者ガーディアン1◇


 エルフの里の地下空洞、【リヨール響窟きょうくつ】。

 その終着点である最奥さいおうにて、ミーティアとジルリーネは対峙たいじする事となった。

 【精霊エルミナ】……長年に渡りエルフを守護してきた、原初の精霊の一体だ。

 その精霊の力が凝縮された、幻晶げんしょう――それを守護する為に作られた、エルフの守護者と。


【シンニュウシャカクニン。キドウ……エルフヲシュゴセヨ……ガーディアン……エルヴンドラゴン】


「な、なに!?どこからっ!」


「はははっ!これが、エルフを守護してきた者の声か……!まるで人間味がないなっ!」


 ミーティアとジルリーネは、それぞれ困惑、そして喜々としてその言葉を聞いた。

 訳も分からない状況に困惑するミーティアはともかく、この状況で喜べるジルリーネは流石なのだろう。


『――録音データです、魔力の反応は地下。先ほどの安置台の下から来ます!!』


「下からって、これ以上の地下から!?」


 それと同時に、ゆっくりと姿を現す何か。

 下から上昇してくるように、頭部、長い首、強固そうな身体が。

 何より特徴的なものは、その大きな翼と、異常な長さの尻尾だ。


 この世界では存在すら未確認。

 【竜人ドラグニア】の祖とされる生物――ドラゴン。


「う、噓でしょう……?」


 首が折れ曲がりそうなほどに大きいその巨体は、二人の侵入者を見る。

 そこらの魔物など比ではないほどに強大で、なによりも威圧的だ。


「こ、これが守護者か。流石にわたしも現物は初めて目にしたな……ドラゴン。古より伝わりし、魔物ではない、人類以外の生命……!」


「戦うの?このドラゴンと」


「でしょうね、奴はやる気ですよ。それに、この幻晶げんしょうが台から離れた事が原因なら、余計に戦わねばなりませんっ!」


 持ち帰らねば話にならない。

 それに、元に戻そうにも安置台は消えてしまったのだから。


「……正直嫌だけど、それしかないなら……っ!!」

「――!!」


『――来ます!!』


 動いたのは同時だった。

 ドラゴンの首の動作と、二人が跳躍ちょうやくしたのは。


 エルヴンドラゴンは腹が膨れる程に息を吸いこむと、思い切り吐いた。

 予測されたのはブレスだったが……それが出たのは鼻だった。


 ブオォォォォォォォ!!


「うぅっ……は、鼻息!?凄い風っっ!」


 着地したミーティアは、ドラゴンのまさかの行動に驚愕する。

 たかが鼻息で、辺りの樹木が消し飛んだからだ。


「ははは……これは困りましたね、お嬢様」


「ふぅ……そうね。骨が折れるかも、物理的に」


 態勢を整え、二人はドラゴン……エルフの守護者と向き合う。

 心の片隅で、どうすればいいのか、勝機は何処にあるのかを模索もさくしながら。

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