7-71【大きな樹の中で2】



◇大きな樹の中で2◇


 転生者。この世界で生きる、地球という世界で生きていた人間たちだ。

 元の世界で死に、女神の慈悲じひと言う名の……転生によって、この世界に生まれ変わった。

 数多くの転生者が存在し、それぞれ別の国で生活しているであろう。俺のようにな。

 でもって転生の際に女神から、転生の特典ギフトと言う名のプレゼントを貰う。何も知らないこの世界で生きていくすべとしての力になるんだ。


 それは、俺が地面を操作するような異能の力……能力であり。

 それは、神話に活躍した……武具である――そう、その刀だよ。


 それぞれの能力や武具には、レベルとランクが存在し、その刀……【天叢雲剣あめのむらくものつるぎ】はおそらく、チート級だ。





 と、言う感じで……俺はルーファウスに転生者関係の事を説明した。


「それじゃあ、師匠せんせいも……ミオくんと同じ、転生者ということですか?」


 一通り話を聞いたルーファウスは、大事そうに抱える自分の刀を見ながらそう言う。


「ああ。それは確実……俺の意志を持った能力、【叡智えいち】がそう言ってる。ルーファウスのお師匠さんが転生者なのは、間違いないよ。お師匠さんが俺に似てるって言うのはさ、多分……元の世界の知識とか言動とか、そういうのがポロッと出ちゃうような時があるからじゃないかな」


 大樹の中で、俺とルーファウスは向かい合って話をしている。

 暗くなり始めている外では、女性陣二人が夕食の準備だ。

 とは言っても、雨で火が使えない上に、樹の中で火を起こすわけにもいかず、多分食事は生野菜と燻製肉ジャーキーだろうけどさ。


「……正直言って、中々に信じられる話じゃないですけど」


「まぁそうだよな。別に信じなくてもいいよ、軽く覚えていてくれれば――っと!【ブロードソード】っ!」


 そう言った後、俺は立ち上がり……【ブロードソード】を取り出す。

 何もない空間から。


「……その剣、あの時持ってた奴ですね。道中持って来ていないから、戦うつもりが無いのかと思ってました……」


「そんな訳ねぇだろ!荷物になるのが分かってるのに、そんな考えで旅なんてしねぇよ……」


「す、すみません」


 俺が帯剣しないのは、魔力によって生み出すからだ。

 それこそ【カラドボルグ】や【ミストルティン】のようなチート級の武器を持っていたら、俺は転生者です!と振り撒いているようなものだろ。


「ルーファウスのそれも、【ブロードソードこれ】と同じで転生者のものだから……だけどさ、本来の転生の特典ギフトは、専用装備って感じで、その個人にしか使えない筈なんだよ」


「僕が師匠せんせいの剣を使えているのは……イレギュラーということでしょうか」


 俺は剣を樹の壁に掛けて、その言葉にうなずく。


「だな。魔力に還らない、消えない……異常だよ、その刀。そもそも、使用者以外のルーファウスが使えている時点で、かなりの予想外の出来事だと思うよ、神からすれば」


「神様……ですか」


 ルーファウスにも、きっと知っている神はいるんだろう。

 俺たちの村が【女神アイズレーン】によって庇護ひごされていたように、この国……【テスラアルモニア公国】にもいるんだろう、俺の知らない神様が。

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