7-70【大きな樹の中で1】



◇大きな樹の中で1◇


 少し移動して、俺たちは大樹が生んだうろに入った。

 しかしうろとは言っても、腐って出来たものではなく、成長過程でうねり、何層も重なって空間が出来たような、そんな感じの場所だ。


「お!中は結構広いなぁ。まるでウッドハウスだ、住めるかもっ」


「おいこら、神聖な大樹に何という事を言うんだ……まったく、住める訳がないだろうがっ!」


 眉根を寄せて、ジルさんは困ったように言う。

 怒っては無いけど、釘をさす感じだな。

 確かに、エルフ族にとっては神聖な場所だもんな、それを家扱いしちゃいかんか。


「あはは、すいません。転生者絡みだと思ったら、ついね」


 てへ。


「……サーベラスとファルは、外でも大丈夫そうですね。繋いできますけど……この御神木に掛けてもいいのでしょうか」


「うむ、構わないだろう」


 ルーファウスがそう言うと、ジルさんが許可を出す。

 いいのかそれで。俺のウッドハウスが駄目で、どうして直接触れるのは良いのさ。


「ふぅ、それでも結構濡れたわね……」


 タオルで身体を拭くミーティア。


「……お~」


「も、もう……見ないのっ!」


「あ、ごめん」


 急いだけど、少しは雨に濡れたもんな。

 ミーティアの服が肌に張り付いて、少し煽情的せんじょうてきに見える。

 改めて思うけど……ミーティアって、すげぇスタイル良いな。


「はっはっは!」


 笑うジルさんは濡れてませんね。

 もしかして、一人だけ魔法使って雨凌いだな?


「――終わりました……それで、話なんですけど」


 戻って来たルーファウスが、俺を見ながら言う。

 少しだけ急いている感じだな……気持ちは分かるけどさ。


「分かってるって、お師匠さんの話……だろ?」


「……はい」


 俺、転生者の事……これについてもだし、俺がルーファウスの持つ刀を知っていると、それらしい事は言ってある。だからルーファウスも気付いてるんだ、刀を持っていた所持者……お師匠さんが俺と同じだと。転生者だと。


「まずは座ろうぜ?どうせ今日はここで寝泊まりするんだしさ、食事をしながらでもよくないか?」


「……ですが」


 あれ、乗り気じゃない?そこまで知りたいのか?

 それとも、他に何か……


「うむ、そうだな。わたしとお嬢様で食事を用意しておくから、二人は話せばいい」


 結局話させるのかよ……いいけども。


「お願いします、ミオくん」


「……ふっ、分かったよ」


 どうせ話すつもりではいたんだ。信頼を勝ち取る為にさ。

 流れで一緒に居てくれても、心のどこかで思っている事は絶対にあるはずだから。

 特にルーファウスも、森に入ってから少しだけ……余裕が無い気がするからさ。

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