7-66【森の中は危険がいっぱい4】+世界設定1



◇森の中には危険がいっぱい4◇


 パチパチと焚火が鳴る。

 完全に日が沈み、森の中は暗黒に近い。

 この焚火が無ければ、匂いに当てられて魔物が寄ってきているだろう。


「おお……燃えよる燃えよる、しかしくっさいな……」


「そ、そうね……」


 独特な匂いを放つのは、この焚火に使われた材木が、魔法の道具としての機能を持っているからだ。


「魔物除けを染みこませた、【魔除香まじょこう】だっけ」


「そうね……【ステラダ】で買った物の残りだけど、さっき魔物に追われてる時に火を付ければよかったんじゃ……」


「……そうじゃん」


 俺はその言葉に、焚火で野菜を焼くエルフを見詰めた。


「勿体無いだろう。これしかなかったんだぞ?今日このまま眠るが……それでいいのか?」


「「そ、それは」」


 二人で、一筋汗を流しながら口ごもる。

 そう言われれば、それはそうなんだが……結構しんどかったのも事実だし。


「なら、つべこべ言うものではないぞ?」


 ジルさんは木に刺した焼きキノコを齧りながら、したり顔で言う。

 それなら……今日の終わり、寝る時はどうするんすか。


「それじゃあ、寝床はどうすんです?」


「地面で寝るだろう?」


 知ってた。ミーティア以外は……って言うんだろ?


「寝袋はありますから、俺が【無限むげん】でテントでも……」


「――魔力は?」


「た、多少は」


 正直、朝に使った分がまだ回復してない。

 だけど俺やルーファウスの野郎はともかく、ミーティアを荷台で寝せたくはない。


「平気なのか?」


「まぁ……なんとか。折り畳み式の、簡易の物でいいなら」


 俺はミーティア見る。

 ミーティアは俺を見返して。


「別に平気よ?荷台で寝られるわ」


 駄目だって。ミーティアはリハビリの真っ最中だ、負担は掛けたくない。

 俺自身に盛大なブーメランだが、今の俺にはこれくらいしか出来ないからな。


「却下。やるわ……」


「え!」


「え!じゃない、そんな健気な顔されたら、荷台に寝せるだなんて出来るかっ」


 俺は焚火から離れて、荷物を管理しているルーファウスののもとへ。

 荷台に乗っている布を、テントに仕立てる……魔力は極力抑えて、前世の情報をウィズに読み込みロードしてもらって、一発で作り上げてやる。


「これでいいな」


「ちょ、ちょっとミオ!そんな意地にならなくても……」


 追って来たミーティアが隣で言うが、聞きませんよ。


「ウィズ、出来るな?」


『――出来ます』


 ほらね、ウィズが出来るって言うなら……俺は魔力を絞り出すだけだ!

 俺は適当に布切れを選んで広げる。ミーティアとジルさん二人が寝られる分でいい、俺とルーファウスは荷台で寝たらぁぁ!!




――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【澪から始まる】世界設定その1。

 ・転生の特典ギフトの隠れステータス。

 転生者が所持する能力や武器には、隠れたステータスが存在します。

 それは現地民の能力には存在しない、パッシブスキルになります。

 【無限むげん】や【叡智えいち】、【クラウソラス】や【カラドボルグ】と言った、いわゆる当たり能力は、特に強いスキルが備わっており、成長を促進してくれています。

 例えば、【無限むげん】には【魔力操作上昇】や、【魔力成長+】が。

 【叡智えいち】には【魔力消費軽減】や【瞬間記憶】と言った隠れステータスがあります。能力のレベルによって解放される、キーロック式です。RPGによくあるやつですね。

 ミオの能力は、全てが解放されたレベル99状態なので、成長は異常です。

 このパッシブスキルの数々が、「なんだ?知らない内に能力の使い方が分かる!!」的な状態にしてくれています。

 因みにミオのパッシブスキルの管理はウィズがしてます、現在は【破壊はかい】の影響で、パッシブスキルがぐちゃぐちゃになってしまっていて台無しですが。

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