7-65【森の中は危険がいっぱい3】



◇森の中は危険がいっぱい3◇


「だぁぁぁぁぁぁっ!!走れ!走れルーファウスぅぅぅぅ!!」

「きゃあああああああああ!」


「必死にやってますよっ!!サーベラス!」


 ルーファウスが騎乗する馬、サーベラスに鞭を入れ、荷台をく速度を速める。


「はははっ、数が多いな!」


「笑ってる場合かぁ!!」


 先行して馬を走らせるジルさんだけは、謎に笑顔だった。

 俺はあせった顔でツッコむが、マジで余裕なんてない……なぜならば、俺たちの背後には。


「――ミオ見てっ!ま、また増えたわっ!!」


「なんだってぇ!?」


 せわしなく揺れる荷台の上で、俺はジルさんへのツッコミを中断してミーティアの言葉に振り向く。

 そこには、俺たちを激睨みする……魔物の大群がいた。


「ぅげっ……!!なんでそこまでして追いかけて来るんだよ!俺たち何もしてないだろ!!」


 そう、文字通り、俺たちは本当に何もしてないんだよ。

 普通にエルフの里に向けて進んでいただけで、この魔物の大群には手出しはしていない。挑発するようなことも、蜂の巣をつついたような真似もしていない。


「――ねぇ、も、もしかして……」


 ミーティアは、荷台に乗せられている複数の荷物を見る。

 その袋のほとんどは……食料だ。


「まさか、これか!?」


「そうかも、だって……魔物の口元見たら、よだれがすごい……」


 俺たちを餌と見ている可能性もあるのでは?

 しかし、食料か……その可能性は大いにあるな。

 食糧難はこの森では深刻、ましてや動物たちも食料を求めて町に出て来る……それは地球でも同じだった。

 でも魔物じゃん、人間襲うとか共食いとかさ、そっち方面なら納得もするが、人並みに野菜を摂取しようとしてんのかよ。 


「――もう直ぐ今日のキャンプ地だ、そこまで駆けるぞ!はっはっは!」


「なぁんでジルさんはそんなに楽しそうなんだよ!!い、急げぇ!ルーファウスぅぅぅ!!」


「やってますってば!!」


 ジルさん以外、こんな感じで必死になって冒険していた。

 戦えって?俺だってそうしたいけどさ……俺もミーティアも戦えないし、逃げの一手を言い出したのは笑顔のジルさんだし……もうさ、分かんねぇや。





「つ、疲れた……何もしてねぇのに」


 暗くなりつつある空を見ながら、荷台を停車させてそろりと降りる。

 周りを見渡すと、野生動物たちのするどい視線を感じた。


「……こ、怖いわね、少し」


「まぁなぁ……でも、ここでいいんですよね?」


「――うん?ああ、そうだ……ここを今日のキャンプ地とする!」


 なんで生き生きとしてんのよ、この人は。


「はっはっは!ルーファウス、サーベラスとファルに水をやるぞ!近くに水源があるはずだ……さぁ!ついてこい!!」


「――え、あ!はい!」


 「じゃあ行くね」と、ルーファウスは俺とミーティアに合図をして駆け出す。

 ジルさんはもう行っちまったよ。


「なんか変だよな、ジルさん」


「そうね……もしかして」


「ん?」


 ミーティアには心当たりが?


「……ジルリーネったら、無理矢理元気出さないとやってられないんじゃないかしら」


「……えぇ……」


 おいおい、そこまでしないと帰れないの?

 エルフの里って、いったいどんな所なんだよ……魔鏡なんじゃないだろうなぁ。

 ああ……もしくはお母さん、エルフの女王様……なのかなぁ??

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