6-116【一つの未来の一欠けら3】



◇一つの未来の一欠けら3◇


 ミーティアがジルさんの説得に失敗した場合、俺が助け舟を出すと決めていた。

 俺の中でも、ミーティアの未来にはジルさんが必要不可欠だと思ってたし、何より頼りになる。

 エルフの長きに渡る知識も経験も、未来を切り開く為には重要なファクターだ。


「ジルさん。村で会ったアイズの事、覚えてます?」


「ん?……ああ、アイズ殿か。勿論もちろん覚えている……なにせ【女神アイズレーン】の生まれ変わりを自称していたからな」


 で、ですよねー。

 ジルさんがアイズの事を信用したのは、【拡張探索エクステンションサーチ】とか言うアイズの魔法を見たからだ。

 だけど、それが本物とは思うまい?


「あのアイズって、実は本物なんですよね」


「本物?いったい何がだ?」


 そりゃそうだ。


「あいつ……ジルさんに、自分は女神の生まれ変わりだって言ったんですよね?」


「ああ」


 あ~不審な目してるぅ……あ、あざっす。


「それ……生まれ変わりじゃなくて、マジもんです。あいつ……【女神アイズレーン】、本人ですから」


「――は?」


 俺は極力、真剣な表情で語っているが。

 我慢できているだろうか、笑いを。

 自分で言ってて、“何言ってんだこいつ”ってなってるから。


「そうですよね。それが普通です……なんでそんな事をお前が知ってる。そうなりますよね……ごもっとも」


 俺は自分の中で、もう答えが出ていた。

 ジルさんが信じるか信じないかは別として、これは俺の中での決定事項。


「俺は、女神によってこの世界に産まれた。そう言う巫山戯ふざけた存在です……あ、両親は本物ですよ?なんていうか、そうだな……神の御業みわざ?」


 神の遊戯とも言うかな。


「……」


 絶句……二度目だ。

 な、何かごめんねジルさん。今日おどろかせっぱなしだ。


証拠しょうこもあります。俺の戦い……って言うか、強さ。それに知恵と能力……この世界には無いようなレベルのオーバーテクノロジーを、俺は知ってる」


「……信じろと?それがわたしを説得させる手立てなのか?」


 これで信じてもらえるほど単純じゃないのは分かってるよ。

 それに、神を信仰しているらしいエルフ族には、神を馬鹿にしていると取られる可能性だってあるからな。

 ジルさんも、言いたい事はありそうだ。


「そうですね……あ、じゃあこれを」


 俺はそう言いながら、腰に付けた小さなポシェットに手を伸ばす。

 薬とか小道具とか、財布とかを入れてる奴だ。


「あ~っと、あれ……あ、あったあった。これと、これと、これもだな。これは違うからっと、あはは」


 中身をあさる俺の手際の悪い動きに、ジルさんは疑問符を浮かべている。

 ま、まぁね……見せられないよ案件があるから。

 俺は取り出すもの以外の……球体二つ・・・・をチョンと触って。


「??」


 ごそごそと、ごめんね戸惑とまどって。

 用意しとけって?ごめんって!


「っと。これです、はい」


 手に持ったその小さな粒を、ジルさんに見せる。


「……種……か?これは」


 そう。種だ……この世界にはない、別の世界に存在する種。

 村に戻った俺にアイズがくれた、地球からのお土産みやげさ。

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