6-103【武邑澪3】



武邑たけむらみお3◇


 その日……俺は自分への誕生日プレゼントを買いに外に出た。

 今の俺からすればらしくないけど、ルンルンだったかもしれない。

 さっきも言ったように、趣味はネトゲでさ……何タイトルものネトゲをプレイしてきてたから、こう言う異世界とか転生とか、直ぐに受け入れられたんだよな、思えば。


 アニメとか漫画とかは……たまに見る程度だったかも。

 高一の時さ、積極的に友達作ろうとして、自分からオタだって言ったら、「オタク舐めんな」ってキレられた事あってさ……それでもう高校生活あきらめたよね。

 なんか運動部系の部活からばっか声かけられるのに……仲間は声かけてくれねぇんだもん……へこむっての。


 え?部活……?いや、帰宅部だよ。

 別に文芸部とかでもよかったのかも知んないけど、俺には文才も絵心も無かったからな。

 それがなに?


 なんでもない……?そっか、ならいいけど。


 それでだ……俺は死んだ。

 あっけなく刺されて、死んだんだ……一瞬だったよ。

 アキバの電気屋の目の前で、女の子に刺されたんだ……って、姉さん?


 大丈夫って……そうは見えないけど。

 え、続けろって?わ、分かった……って言っても、俺の人生もう終わりだけどさ。


 おわっ……なんでいきなり怒んだよっ!

 え?自分の事だろって……ちょ、ちょっと姉さん……な、泣いてんの!?


 いや、泣いてるじゃんどう見ても――って痛い!痛いって!

 分かった。分かったから、話すって。


 刺してきた女の子……名前も知らないその子は、別の男を殺そうとしたらしいんだ。これはアイズに聞いた事で、目的は多分……痴情のもつれって奴じゃないのかな……詳しいことは知らないけど。


 痛みとか、恐怖とか……一切感じるまでも無く、俺は息絶えた。

 気付けばアイズの声がして、転生させてくれるってさ。

 普通は……寿命を迎えた老人とかが、そのほとんどを占める転生者。

 でも、例外はある……奇跡って奴かな。


 俺の前に死にそうになった誰かさんが……奇跡的に一命を取り留めたんだってさ。

 それ自体は喜ばしい事だけど、そんなんでいいのかとは思ったな。

 でもそうか……あれからもう十五年経ってんだな、早いよ。


 アイズは、何を間違えたのかさ……転生者に贈る能力ギフト、俺に全乗せしたらしいんだ……うん。クラウ姉さんのその顔、それが正しいよ。

 だから、今の俺は多分……いや、確実に……イエシアスが探してる、“チート能力全持ちの転生者”……だ。


 頭抱えたくなる気持ち、マジで分かるよ。

 でも、言ってしまったからな……もう逃げられないよ、姉さんも。

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